ニューノーマルへの対応: データを使って顧客を知る

カスタマージャーニーの再マッピングと再構築、より正確な予測モデルの作成など、あらゆる企業がデータと分析の戦略を必要としています。この戦略により、組織の誰もが、顧客のニーズをリアルタイムで調べてシナリオを作成し、ギャップを明らかにし、アイデアに対してストレステストを実施し、実践的なインサイトで結果を改善できるようになります。

顧客のことをどれだけ理解していますか? B2B でも B2C でも、顧客はシームレスなオムニチャネル体験を求めています。特に COVID-19 の危機下では、顧客はブランドが価値、今日的な製品、サービスを提供し、顧客のニーズの変化に合わせてブランドも成長していくことを期待しています。

企業がパンデミックから学んだのは、危機下でも今日的であり続けるために、顧客を深く総合的に理解し、ビジネスの新しい手法を積極的に受け入れなければならないということです。このような急激な変化に後れを取らないようにするには、顧客インテリジェンスと顧客データがこれまで以上に重要となります。カスタマージャーニーの再マッピングと再構築、より正確な予測モデルの作成など、あらゆる企業がデータと分析の戦略を必要としています。この戦略により、組織の誰もが、顧客のニーズをリアルタイムで調べてシナリオを作成し、ギャップを明らかにし、アイデアに対してストレステストを実施し、実践的なインサイトで結果を改善できるようになります。

顧客は企業が先導することを期待しており、そのためブランドにとっては顧客が抱える問題点に対応し、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することがかつてないほど重要になっています。

顧客がいる場所で対応する

パンデミックによる経済面、社会面の長期的な影響はまだ十分にはわかっていませんが、顧客の態度と行動はすでに根底から変化しており、中には将来にわたって続くと予測されている変化もあります。先ごろの消費者調査では、行動の変化の速さが明らかになっています。

  • 回答者の 68% (英語) は、重要だと考えている製品やサービスがパンデミックにより変化したと回答
  • デジタルチャネルを初めて利用した回答者の 75% (英語) は、今後もデジタルチャネルを利用し続ける
  • 米国の小売企業は、駐車場受け取りサービスの利用が 1 年前と比べて 208% 増加 (英語) したと回答
  • イタリアでは、消費財の e コマース売上高が 1 週間で 81% 増加 (英語)
  • イギリスでは回答者の 20% (英語) が、今後は店舗でファッションを購入しないと回答

小売業界では、オンライン購入と消費者直販への移行が、裁量的経費の減少と純新製品の売上横ばいと相まって、企業は突如としてビジネスモデルの変更を強いられました。金融サービス組織など従来の B2B 企業も大差はなく、既存の販売モデルとサービスモデルを補強して、リモートによる顧客へのサービス提供を改善できるようにしています。医療業界を見ると、患者は対面診療の一般的な代替手段として遠隔医療を選択できるようになり、急速に普及しました。たとえば、ヨーロッパ最大級の遠隔医療提供者である Kry International では、登録数が 200% 増加 (英語) しています。また、行政機関や教育機関も、仮想世界でサービスを提供する手段を見出しつつあります。

一方、「顧客がいる場所」での対応はスマートなビジネスだというだけではなく、生き残りに絶対不可欠なことです。自社のデジタル変革を加速して顧客の変わりゆく好みに対応しようとはしないビジネス業界は、これから取り残されていくでしょう。そして、デジタル変革の中核的な要素のひとつが顧客分析の重視です。

企業が提供できる価値とは

顧客はまた、社会的意識がさらに高い一連の価値を形にするように、ブランドに働きかけています。現に Edelman 社によると、世界の消費者の 3 分の 2 (英語) は自身を「ビリーフドリブンな」 (信念に基づく) 購買者であると考えており、消費者の 3 分の 1 は実際に、「COVID-19 によるロックダウンという最悪の時期に、ほかとは一線を画す」製品に切り替えました。消費者はまた、たとえその企業の財政にマイナスの影響があるとしても、意義のある製品、コミュニケーションの透明性、慈善活動、ビジネス上の優先事項の変更も求めています (英語)。今日の先行きが不透明で競争の激しい市場環境で強みを得るには、顧客の心に響くものは何かを理解する必要があります。企業が選ぶ対応は、今そしてこれからも購入の意思決定に影響を及ぼすでしょう。

  • ジュース小売店を展開する Juice Press (英語) は、サービスを拡大してオーガニック食品の配達を始めた結果、新しい収益源になり、パンデミック中も顧客が望むものを提供し続けられています。4 月時点で、その JP Grocery サービスにより 1 日最大 350 件の配達が行われました。さらに、ほとんどの対象地域で配達料を値下げしたほか、最前線の医療従事者を支援する取り組みの FounderGive にも参加しました。
  • シアトルに拠点を置く Outdoor Research 社 (英語) は、その製造の原点に立ち戻って、数十万個の医療用マスクを製造しました。そのために製造施設の大部分を転用して、サージカルマスク、フェイスマスク、N95 マスクを製造しています。6 月前半までに 30 万個のマスクが製造され、同社の小売店舗とスタッフにも 8,000 個のマスクが配付されました。

目標: 顧客の全体像を得る

顧客を理解するために役に立つのは、どのようなカスタマーエクスペリエンス指標 (英語) でしょうか。ベースライン分析を行うには、行動、取引、フィードバックの指標が必要です。ガートナー社 (英語) が指摘しているように、顧客の振る舞いが急速に変化を続けているため、この危機下では顧客指標をより頻繁にリアルタイムでモニタリングすることが欠かせません。役立つ指標には次のものなどが挙げられます。

  • 顧客満足度
  • 顧客努力指標
  • ネットプロモータースコア
  • 顧客からのコール数と問い合わせ種別
  • Web サイト行動
  • POS データ
  • 地理空間データ
  • ソーシャルメディアのセンチメント
  • 従業員のフィードバック

また業界にかかわらず、あらゆる企業は、製品や物流、在庫、サプライチェーン、事業について、顧客からのこれまでになかった質問に回答することも見込んでおく必要があり、そのフィードバックを捉えて対応する準備を調えておかなければなりません。

ダッシュボードで掘り下げる

真のデータドリブンな組織では、全従業員がデータを使って最も重要な質問に答えを出すことを促され、実際にその能力を手にしています。Tableau のような BI プラットフォームを活用すると、組織の各人がさまざまなソースでデータ準備を行えるうえ、意思決定を加速し改善できる顧客インサイトを見出すための、情報豊富なダッシュボードを作成することも可能です。

分析する顧客データの種類は、ユーザーの役割によって異なります。はじめに、アナリストから経営陣まで組織のあらゆるレベルで利用できる、一連のスターターダッシュボードを作成しましょう。以下は、最も一般的な 3 種類の顧客ダッシュボードについて説明するとともに、その例を挙げています。詳しくはリンク先をご覧ください。

戦略ダッシュボード
ユーザー例: 経営幹部、バイスプレジデント、取締役
目的: 全体的なデータストーリーを一目で見る
インサイト例: 企業目標に対して追跡した業績指標と比較指標
: エグゼクティブサマリーダッシュボード

戦術ダッシュボード
ユーザー例: アナリスト、ブランドマネージャー
目的: 粒度の高い掘り下げた分析
インサイト例: トレンドの把握、戦略目標を支えるプロセスのモニタリング、目標と予測の作成
: e コマースマーケティング最適化ダッシュボード

業務ダッシュボード
ユーザー例: CRM サポートチーム、Web サイトマネージャー、マーケティングマネージャー
目的: 全体像のリアルタイムモニタリングと管理
インサイト例: 小売店と顧客満足度の KPI、マーケティングキャンペーンのパフォーマンス、在庫状況
: 店舗レベルの製品在庫ダッシュボード

顧客を知りビジネスを知る

今や物事が確かに変わったように見え、そして実際に変わっています。業務のあらゆる面を検証するときは、会社と顧客に対して適切な意思決定を行うために情報が早急に必要となります。これまでも、競争力を得ようとしている企業にとっては顧客とその期待を理解することが常に優先事項でしたが、パンデミックにより、企業は顧客のニーズをさらにはっきりと見通さなければならないことが明らかになりました。急速に変化する行動と意識に対し、先を見越して対応する用意を調えておく必要があるのです。先ごろの The New York Times 紙の論説 (英語) でも、David Leonhardt 氏は「景気が低迷しているとき、人はどこで出費を抑えるか決めざるを得なくなる」と述べています。新たな現実を理解し適応するためにデータインサイトを使うと、顧客がロイヤルティを保つ理由を見出せるようになるうえ、企業が直面する不確実性のいくばくかを排除できます。

お手元の顧客データには、どのような隠れたインサイトが発見されるのを待っているでしょうか。

未知との対峙は困難ですが、乗り越えられます。E. L. Doctorow 氏も、「見えるのはヘッドライトが届く範囲だけだが、人はその方向に向けてずっと旅を続けることができる」と語っています。先行きが不透明な今の時代にデータを活用して先導するのに役立つ、リソースとインサイトをご覧ください。