EBPM の基盤に Tableau を活用し全職員のデータ閲覧環境を整備|神戸市
膨大なデータを短時間で可視化
多面的な分析をスピーディに展開
Viz を自ら作成するユーザーが一気に拡大
導入の背景
導入製品:
Tableau Desktop、Tableau Server, Tableau Reader, Tableau Public, Tableau Creator
財政難から始まった業務改革で情報のデジタル化が進展
政府の「骨太方針 2017」において、積極的に推進することが明記された EBPM(Evidence Based Policy Making)。これは政策を支える理論を明確にすると共に、その根拠となるデータ等のエビデンスを可能な限り集めることで、限られた資源の有効活用と国民に信頼される行政を実現していこうという取り組みです。EBPM は自治体でも推進されていますが、その中でも高い評価を受けているのが神戸市です。2022 年に「DataStaRt Award ~第 7 回 地方公共団体における統計データ利活用表彰~」において、「総務大臣賞」を受賞しているのです。
神戸市は EBPM への取り組みで先行していると言えますが、その背景について「阪神・淡路大震災で財政的に厳しくなり、職員1人あたりの負担が増えた結果、業務改革に取り組まざるを得なくなったからです」と語るのは、企画調整局政策課で係長を務める松尾 康弘 氏です。2017 年には働き方改革への取り組みも本格化し、ペーパーレス化も推進。新型コロナウイルス感染症拡大が始まる頃には、すでに働き方改革がかなり進んでおり、2020 年 2 月の電子決裁率は 95.5 %で、市会や幹部レクも PC 持ち込みが当たり前になっていたと言います。
「このように庁内の情報がデジタル化された結果、そこから得られるデータを有効活用していこうという機運も高まっていきました」と松尾氏。そのための基盤として重要な役割を果たしているのが Tableau なのです。
Tableau の導入・運用環境について
Tableau 活用開始から 6 年で「神戸データラウンジ」を立ち上げ
神戸市におけるデータ利活用への取り組みが始まったのは 2015 年。2016 年には神戸市職員と市民のデータ利活用リテラシー向上を目的とした「神戸市データアカデミー」が開催されています。これと並行して、当時オープンデータ担当となり、現在は企画調整局政策課で係長を務める中川 雅也 氏が、Tableau によるオープンデータ公開に着手。ここから Tableau 活用が本格化していきます。
「それまでデータ分析と言えば Excel でしたが、事前にデータを絞り込む必要があるたため、客観的なデータ分析は難しいと感じていました」と中川氏。この問題を解決するため、データ全件を取り込んで様々な視点から可視化できる Tableau を使うことにしたのだと説明します。
2017 年度には「神戸市データアカデミー」で、救急搬送に関するデータの可視化分析を試行。2019 年度には神戸の人口統計を Tableau で可視化し、Tableau Reader によるダッシュボードの庁内共有も開始しています。さらに2020年度には、新型コロナウイルス関連情報を、Tableau Public によって市のホームページに公開。これら一連の取り組みによって、庁内での Tableau の認知度も向上していきました。
2022 年度には Tableau Server も導入し、同年 6 月から庁内ポータルサイト「神戸データラウンジ」にて、政策立案に必要なダッシュボードの庁内共有を開始。冒頭で紹介した「総務大臣賞」の受賞は、まさにこの「神戸データラウンジ」の活動が評価されたものなのです。
Tableau は短期間で使いこなせるので、ユーザーの評判がかなり良いです。
Tableau 選定の理由について
機能性の高さと軽快さ、学習コストの低さが大きなメリット
「神戸データラウンジ」の基盤として Tableau が採用された理由は、大きく 3 点あります。
第 1 は機能面での優位性です。
「スマートフォンによるアクセスに対応しており、地図上でデータを可視化できる機能もあり、自治体にとって利便性が高いと感じています」と言うのは、企画調整局デジタル戦略部で Tableau Server の運用や Viz 作成を担当する石田 真智 氏。また膨大なデータを軽快に扱えることも、高く評価していると語ります。
第 2 は、すでに庁内でパブリッククラウド(AWS)を活用して LGWAN 環境にデータ連携基盤を構築しており、Tableau Server を AWS 上に構築することができたことです。これは庁内のデータを安全な環境で扱うことができる点で大きなメリットになっています。
そして第 3 が、学習コストの低さです。
「Tableau は短期間で使いこなせるので、ユーザーの評判がかなり良いです」と松尾氏。その採用は多くの職員に喜ばれており、「どんどんやろう」という雰囲気ができていると言います。「Tableau で公開された Viz への信頼度も高く、最近では企画調整局以外の部署からも分析の相談が来るようになっています」。
Tableau の導入効果について
Tableau の導入効果について
膨大なデータをスピーディに分析、ユーザーも積極的に活用
「神戸データラウンジ」の基盤として Tableau が採用したことで、次のような効果がもたらされています。
膨大なデータを短時間で可視化
「神戸市の人口は 150 万人を超えており、その分析を行うには 150 万件を超えるデータを扱う必要があります」と中川氏。Excel では 100 万行の壁があるため事前に集計や絞り込みを行う必要がありますが、Tableau ならその必要はないと言います。「そのため最新データを反映したVizも、1~2 時間もあれば公開可能です」。
多面的な分析をスピーディに展開
「膨大なデータを取り込んでも軽快に動作するため、一つの事象を多面的に分析し、そこから派生した新たな仮説をその場で検証する、といったことも容易になりました」と言うのは石田氏です。「異なるデータの掛け合わせも容易です。Tableau による可視化で初めてわかったことも少なくありません」。
Viz を自ら作成するユーザーが一気に拡大
基礎的なことを学び始めてから、1 週間もあれば簡単な Viz を作ることができると言うのは松尾氏です。そのため Viz を自ら作成するユーザーも、短期間で増えていると指摘します。「神戸データラウンジを公開してからわずか4か月間で、すでに 9 部門以上、30 人以上が Creator を使いこなしています。ユーザーの裾野を広げるため Explorer の配布も開始していますが、そのユーザー研修には局長・副局長も参加しており、トップ主導での活用が広がりつつあります」。
膨大なデータを取り込んでも軽快に動作するため、一つの事象を多面的に分析し、そこから派生した新たな仮説をその場で検証する、といったことも容易になりました。
今後の展開について
データを共通言語として意思疎通できる世界に
2022 年 10 月現在、「神戸データラウンジ」で庁内公開されている Viz は 80 を突破。さらに、Tableau の活用範囲は庁内業務だけに留まらず、市民に直結するオープンデータの取組にも広がっています。公共データや各種統計情報をマップやグラフ等でわかりやすくビジュアル化し、Tableau Public を通じて市民に届けているのです。
「この基盤を活用して、常にデータで話ができるようにしていきたいと考えています」と中川氏。データを共通言語にしていくことで、勘や印象ではなく「事実」をもとに、意思疎通できる世界を目指したいと言います。
この目標に関して松尾氏は「データ分析文化を醸成していくには、データ利活用人材の育成が重要になります」とも指摘。各種研修活動もさらに活発化していくと語ります。「このような人材によってデータ分析を DIY することは、EBPM 推進の大きな原動力になるはずです」。
この基盤を活用して、常にデータで話ができるようにしていきたいと考えています。
※ 本事例は2022年10月時点の情報です
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