Tableau によるデータ可視化で設計業務が進化|株式会社 竹中工務店
データにもとづく人材配置の最適化
データ活用に関する作業の大幅な合理化
導入の背景
IT 利用に積極的に取り組むもデータ管理・活用に多くの課題
竹中工務店は、建設業界の中では早くから、IT 活用による生産性の向上に積極的に取り組んできました。2014 年には「竹中スマートワーク」を開始し、以降営業・設計・生産・施設管理部門を中心に 1 万台以上のモバイル端末を導入。タブレットなどから必要な情報にアクセスして効率的に業務を進められる環境を整備しています。
しかし、現場の実情としては、データの管理・活用面で多くの課題を抱えていました。デジタル室 デジタル企画グループ 課長の松本 深 氏はこう振り返ります。「部門ごとにプロジェクト管理のデータベースを構築し、部門・個人で管理・運用していました。そのように“ サイロ化”した状況だったため、設計・生産などの業務において、限られた時間で必要なデータを探すのが大変でした。それで結局、データを参考にはするものの、いわゆる“KKD(勘・経験・度胸)”による意思決定も多かったと考えられます」
大阪本店 設計部 情報・事務部門 企画管理・情報グループ 課長の水野 佳世 氏は、設計収支などの管理業務においても同様の課題があった、と話します。「データベースには、実績は蓄積されていましたが、予定数値はプロジェクトごとに Excel で管理され、散在していました。そのため、データをかき集めて理解するのに時間がかかり、各プロジェクトの進捗や各人の状況を総合的に見て全体像をつかむのが難しい。人や時期によって業務量に偏りが出るなどの問題が起きても、必要な施策をタイムリーに打つことができませんでした」
Tableau の導入・運用環境について
Tableau の成果が反響を呼び、社内でデータ活用が活発化
そうした状況を踏まえて同社では、プロジェクト業務や人事、経理など、ビジネスに関するあらゆるデータを一元化し、活用するための基盤となる「建設デジタルプラットフォーム※1」の構築プロジェクトが立ち上がります。
2018 年 6 月には Tableau を試験的に導入し、水野氏がユーザー第一号として使い始めました。その成果が社内で注目を集めたことによって、「データドリブンデザインビルド®」「DataDriven Design-Build®(d^3^b)」をキャッチフレーズとした建築の可能性を広げるための部門横断的なデータ活用の推進活動が活発化し、同時に Tableau の利用が広がっていったのです。東京本店 設計部 設備部門課長の上杉 崇 氏も、水野氏の紹介で使い始めた一人。上杉氏は Tableau Creator を駆使し、設計業務を進化させるアイデアを次々に実現していきました。
「弊社では設計の際、過去に建てた同じような規模・用途の建物のプロジェクトを 3 件程度選んで参考にしています。しかし、何万件という過去のプロジェクトの中から最適なものを人力で探すのは難しく、結局身近な物件を適当に選ばざるを得ない状況でした。そこで、Tableau Creator を利用し、創業以来約 300 年間のプロジェクトのデータを一元化・可視化し、その中から自分にとってベストなものを瞬時に抽出できるようにしました。また人事データも組み合せることで、過去の参考プロジェクトの担当者も分かるようにしました」
上杉氏の作成した Viz は、年代・規模・用途・場所などの各条件から、最適なプロジェクトを視覚的に、簡単に把握可能とし、また担当者同士のコミュニケーションを誘発することでノウハウの伝達も意図しています。設計本部 BIM ツール開発室 課長の松下 文 氏は、そのメリットは計り知れない、と語ります。
「以前は、3 件程度の参考プロジェクトの選定と妥当性の検証に半日以上かかっていました。Tableau は、わずか1時間で膨大なプロジェクトを探索的に分析できるのが楽しい。冒険家になったような気分で、自分にぴったりな未知のプロジェクトに出会えることは、設備設計者の視野を一気に広げると思います」
わずか 1 時間で膨大なプロジェクトを探索的に分析でき、冒険家になったような気分で、自分にぴったりな未知のプロジェクトに出会えることは、設備設計者の視野を一気に広げると思います
Tableau 選定の理由について
見た目の美しさと自由に表現できる楽しさが決め手に
水野氏は、Tableau 導入の理由についてこう話します。
「本格導入の前、時間と設計収支のビジュアライゼーションという課題が 1 年近く停滞していたのですが、Tableau はユーザー第一号で初心者しかいない私のチームでたった 3 か月で解決できたのです。その成果は、仕事柄ビジュアルやデザインにこだわりのある設計部長をはじめ、社内で高く評価され、Tableau 導入の決め手となりました」
採用の理由としてもうひとつ、水野氏と松下氏が異口同音に挙げるのが、データを思い通りにビジュアルで表現できる「楽しさ」です。
「なんの制約も受けることなく、直感的な操作でまさにデータを“スケッチ” する感じが本当に楽しく、Tableau ならいろいろな課題を解決できると感じました」(水野氏)
「いくつもの BI 製品を比較検証した中で、Tableau は圧倒的に使いやすく、なにより楽しかった。Excel からグラフ化する絶望的に楽しくない業務が、ワクワク感に変わりました」(松下氏)
なんの制約も受けることなく、直感的な操作でまさにデータを“スケッチ”する感じが本当に楽しく、Tableau ならいろいろな課題を解決できると感じました。1 年近く停滞していた時間と設計収支のビジュアライゼーションという課題はたった 3 か月で解決できました
Tableau の導入効果について
長年の課題を解決し、データ活用の大幅合理化を実現
Tableau の活用による効果について、各氏は次のように語ります。
データにもとづく人材配置の最適化
「『人材配置検討ボード』を作成したことによって、長年の課題だった、各プロジェクトの進捗や各人の業務量などの全体像のリアルタイムな把握が可能になりました。どの人がどんなプロジェクトで忙しく、それがいつまで続くのかが可視化されたことで、マネージャーが従来のように感覚に頼るのではなく、データにもとづいて各プロジェクトに人材を最適に配置できるようになりました」(水野氏)
データ活用に関する作業の大幅な合理化
「ある部門で、Tableau とは別の BI 製品を使ってダッシュボードを作るのに数週間かかった、という話を聞きました。それで私が、2 時間ほどのハンズオン講習で Tableau の使い方を教えたところ、同じものをたった 45 分で作れてしまったそうです」(松下氏)
「従来なら 1 か月以上かかったり、IT ベンダーに発注して何百万円もかけなければできなかったことが、自分の手で短期間、低コストでできるようになるという、大幅な合理化を実現できました」(上杉氏)
ツールとしての機能性はもちろんですが、それ以上に感動したのが、Tableau 社のサポートとコミュニティのすばらしさ。特に、毎年開催される Tableau Conference では、データ活用の大好きな方たちと業界横断的に交流して大いに刺激を受け、それが実際のビジネスに結びついています
今後の展開について
建設業におけるデータ活用の新たな可能性が広がる
同社における Tableau の利用者と活用範囲は拡大し続けています。部門横断でのデータ活用を推進してきた松本氏はいいます。
「部門横断でのワークショップ企画などにより、データ活用を楽しいと感じる人が社内のあちこちに増えたことが、データ環境を整備しようという社内の動きを加速させている。その意味で Tableau は、データに対する会社としてのマインドの向上、データ文化の醸成を強力に後押しするツールとなっています」
その動きの中から、建設業におけるデータ活用の新たな可能性を感じさせる取り組みも生まれています。Tableau を使い、SNS の発信状況と内容を地図上で可視化して地域性を把握※2し、それを設計に活かそうという上杉氏のプロジェクトはその代表例です。
「SNS の『美味しい』『楽しい』『新しい』といった単語や絵文字から、その地域ならではの特徴を定量的に把握できるというのは、設計者が本来一番知りたかったことで、お客様への提案においても説得力を持ちます。設計やまちづくりで特に大切なことは、そこで働いたり、遊んだりする人の気持ちをよりよいものにすることであるはず。そういう観点からこのアイデアを思いつきました。今後も、このように温かみがあって人をワクワクさせる『楽しいデータの使い方』、あるいは 300 年以上の歴史で積み上げてきたデータを 50 年先まで見据えて活用する、いわば『ゆっくりなデータの使い方』を続けていきたいと考えています」
※1 「建設デジタルプラットフォーム」の構築によるデジタル変革の取組み(https://www.takenaka.co.jp/news/2021/12/01/)
※2 竹中工務店技術研究所が開発した位置情報付SNS分析ツール「ソーシャルヒートマップ ®」とTableauを連携。体験版をTableau Public に公開中 (https://public.tableau.com/app/profile/uesugi.takashi/viz/sns_analysis/…)
もともと社内には 『おもしろいことをやってみよう』というクリエイティブな集団と、それを実践できる環境がありました。そこに Tableau を利用した部門横断型ワークショップの企画などを通じて『探索的にデータを可視化する』という意識が浸透したことで、さまざまな立場の人から活用のアイデアがどんどん出てくるようになりました
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