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「信託の力」を存分に発揮するためのデータサイエンス|三井住友信託銀行株式会社
Excel での作業時間を削減。データドリブン文化の醸成にも成功
導入の背景
これからの事業展開に不可欠なデータの利活用
データサイエンスは重要な経営インフラ
国内最大の信託銀行であり、多くの事業においてトップクラスの実力を持つ三井住友信託銀行。経済的価値だけでなく、カーボンニュートラルや人生 100 年時代の安心といった社会的価値の創出も経営の根幹に据え、多彩な事業や機能を横断・融合した「信託の力」で、資金・資産・資本の好循環を促す社会インフラを目指しています。
同社は中核施策としてデジタル戦略を掲げており、デジタル戦略子会社として設立した Trust Base や他社との協業により、既存の枠組みにとらわれない変革を積極的に進めています。その中で「重要な経営インフラ」であると明示しているのが、データサイエンスです。三井住友信託銀行は多様な事業領域で数多くの商品・サービスを提供しているからこそ、その取引から蓄積される多岐にわたるデータを分析・利活用することが、これからの事業展開に欠かせません。その一環として、DXを推進する経営企画部デジタル企画部内にデータサイエンスチームを立ち上げ、業務部門におけるデータ活用の支援やデータドリブン文化の醸成に取り組んでいます。
以前からデータにもとづく意思決定は各部門で行われていたものの、Excel による定型フォーマットでの可視化・分析にとどまっていました。この方法では視点と粒度が限定され、新たな示唆を得ることが難しく、またデータの更新や組織変更にともなうメンテナンスに手間がかかります。さらにデータサイエンスチームの鈴木みゆき氏は、意思決定のスピードに課題があったと振り返ります。
「社内の報告時に数字の根拠など詳細な説明を求められても、その場で回答できず、持ち帰って分析し直し、再報告しなければなりませんでした。また、営業でお客様を訪問した際も同様に持ち帰りが必要で、他社との比較をその場で提示することもできませんでした。タブレットと BI 製品を使って、その場で深掘りできる仕組みが求められていたのです」(鈴木氏)
Tableau の導入・展開
「伴走支援形式」でユーザー中心のデータ活用を根付かせる
そこで同社は 2021 年、ユーザー中心のデータ活用を可能にするために、データサイエンスチームの主導でデータサイエンス基盤を構築。その際に、アウトプットを担う BI 製品として Tableau を導入しました。
あわせて同チームでは、データドリブンを組織にどう根付かせるかに心を砕きました。その手法をデータサイエンスチームの竹山嗣男氏はこう解説します。
「我々のような推進部門がデータベースのビューを作り切ってしまったのでは、ユーザー中心のデータ活用につながらないと考えました。そこで、ユーザーの実現したいことをヒアリングしてサンプルを作成するまでは担当しつつも、そこから先の加工や運用はユーザー自らが行い、我々はユーザーが困ったときにサポートする“ 伴走支援形式”を採用しました。いきなりゼロから作るのは難しいですが、サンプルを基にして完成形へと仕上げる経験を積めば、次からはユーザー主導でゼロから作れるようになるだろうと考えたのです」(竹山氏)
ただし、「作り込み過ぎ」は控えるように促しているのだと、データサイエンスチームの川田真也氏は話します。
「 環境が変われば分析軸も変わり、それにあわせてレポートやダッシュボードも継続的に変えていく必要があります。銀行である弊社は異動が多いため、担当者が変わって埋もれてしまわないように引き継ぎを意識することが大切です。クリエイターであるユーザーには『誰が見てもトレースできるようにしましょう』と話しています。複雑に作ってしまったからシンプルな構造に変えるのをサポートしてほしい、という要望が寄せられることも珍しくありません。Tableau での作り込み過ぎを防ぐために、前段のデータを加工する支援も行っています」(川田氏)
ワークショップを開催してデータドリブンを体感してもらう
業務ユーザーが主体という難易度の高い進め方はリテラシーが高い社員が多いから決断できた、と思われる方もいらっしゃるでしょう。実際に鈴木氏が他社の方と話をすると「うちの会社はリテラシーが低いから、そんな方法は取れませんよ」とよく言われるそうです。しかし、三井住友信託銀行は決してそのような特殊な環境ではなく、リテラシーの度合いは他の企業と変わりないと鈴木氏は語ります。
「伴走支援形式に決めたのは、私が元外資系ベンダーで、BI の導入を何度も実践してきた経験があったからです。小売業から製造業まで業種を問わず、どの業務ユーザーも BI 製品を使ってデータを活用できていました。そのために重要なのは、ハードルをいきなり高く設定しないことです。データベースから直接データを取り出すような高度な使い方ができる人は一握りなので、いつも使っている Excel 上のデータを扱うことから始めてもらうなど、入り口のハードルを低くすることを弊社でも意識しました」(鈴木氏)
ハードルを下げるために開催したのが「データドリブンワークショップ」です。これは Tableau のパートナー企業と共に行うもので、5 人程度のグループで Tableau の画面を見ながら意見を出し合い、考察します。受講者が要望を話すと、担当のエキスパートがその通りに Tableau を駆使して形にして、データドリブンの可能性や価値、そして身近で実現可能なことを体感してもらいます。特に役職者からの評判が良く、開催すると毎回満席になるそうです。
Tableau 選定の理由
PoC で評価された突出したユーザビリティの高さ
BI 製品の選定時は、まず著名な5つの製品をリストアップして、そこから同社の基本方針であるオンプレミスで実装できる3製品を選び PoC を実施しました。
鈴木氏は、特定ユーザーしか使えないものではなく、あらゆるユーザーが活用できる、ユーザビリティの高い BI 製品が必要だと語ります。「 複数部署に協力を依頼し、実際に利用するユーザーの立場で使いやすいものを選定することにしました。アンケート結果を集計すると Tableau Desktop が突出しており、直感的な使いやすさを評価する意見が目立ちました」(鈴木氏)
また、Web 上のノウハウが充実しており、自分で調べながら思い描いているビューが作れることも、Tableau を支持する理由として多く寄せられました。
Tableau の導入の効果
Excel 関連の業務時間を大幅短縮
データに対する社員の意識も変化
2021 年 10 月から使用を開始した Tableau は、2 年後には約 30 部署へ展開するまでに広がりました。利用者数も約 200 人のクリエイターに加え、クリエイターが作ったレポートやダッシュボードを使うビューアーが約 1,000 人います。
まず、Excel による業務については、作業時間が大幅に短縮されました。例えば、これまでは Excel で行っていた還元率など各種情報の共有については、Tableau を導入したことで容易に比較できるようになり、要していた時間を短縮できました。さらに業務計測やリソース管理といった Excel にまつわる各種業務も、現在では従来の 60 分の 1 にまで削減できています。
その上で、さらに次のような効果が現れています。
「データの可視化による認識の共有が可能になりました。例えば営業店では、月々の管理指標や毎日のお客様の声などをスピーディに共有できるようになっています。また、タブレットで見方を変えられるので、質問にもその場で答えることが可能です。ミーティングの資料を Tableau で作ってその場でドリルダウンして見るような使い方は、すでに浸透しつつあります」(鈴木氏)
ダッシュボードによる注目ポイントの明示も良い効果をもたらしています。
「 Excel を使っていた頃は、部店によって異なる観点でデータを捉えてしまっている懸念が常についてまわりました。しかし Tableau のダッシュボードで可視化すれば、本部が見てほしい観点で各部店がデータを見るようになります。また、粒度と切り口をそろえて、他店と比較した現在地を知ることも可能です」(川田氏)
ダッシュボードの様子
そして、大きな狙いであったデータドリブン文化も醸成されています。例えば、ビューアーのユーザーから『見たいデータがあるのでクリエイターになりたい』という問い合わせがデータサイエンスチームに届くことが増えたそうです。
データは自分たちで分析するものだという考えを根付かせるために行った施策の1つが「データドリブンコンテスト」でした。
「幅広い社員が参加しやすいように Tableau を利用し、銀行内横断データを用いて活用を提案するコンテストを開催しました。すると、実際に使えるダッシュボードを作りたいという声が参加者から上がるなど、非常に好評でした」(竹山氏)
データドリブンコンテストの告知ポスター
今後の展開について
コンテストをグループ全体で開催しデータドリブン文化を醸成中
「データドリブンコンテストが銀行内で好評だったことを受け、今年度は銀行だけでなくグループ会社にまで対象者を拡大して実施しました。営業店でのデータドリブン文化の醸成を目的に、グループ会社横断のデータを題材にしました」(竹山氏)
社内でデータドリブンの価値が広く理解されると、データサイエンスチームにはさまざまな要望が集まるようになってきました。
例えば「各事業の状況が一目でわかるダッシュボードの作成」も要望の一つです。同社は各事業がそれぞれ独立しているため、事業部内での数字を見る仕組みはあるものの、それらを連携して見通せるダッシュボードは存在しません。事業や機能の横断・融合は経営計画にも言及されているだけに、重要な取り組みだといえるでしょう。現在はダッシュボードの作成と、それによるデータドリブン文化の全社的な醸成に向けて、CRM Analytics を含め PoC での検討を進めています。
「 Tableau の利用が広がった今は、経営上層部への報告に Tableau を使いたいという声も上がっています。データドリブン文化が醸成されてきたことを実感しています」(鈴木氏)
社内全体を見渡すと、部署や事業部は異なっても同じようなフォーマットのダッシュボードやレポートのニーズがあることが分かってきました。事業や機能の横断・融合、効率化の観点から、横展開のサポート強化に今後取り組んでいきたいです。
※ 本事例は 2023年 12月時点の情報です