積極的な人材育成・推進策で Tableau を全店に展開|東京海上日動火災保険株式会社
データドリブンな営業・マーケティングを実現
ダッシュボードから数クリックでインサイトを確認可能
特約(オプション)付帯率アップ!
導入の背景
データ分析環境を構築するも、スキル・リソース不足で進まぬ活用
東京海上日動火災保険株式会社は、損害保険の国内最大手として、業績面はもとよりデータ活用の領域でも業界をリードしてきました。同社がデータドリブン経営の実現に向けて全社的な取り組みを開始したのは、業界全体として高度なデータ活用がまだまだ進んでいなかった 2017 年。IT 企画部 ビジネスプロセスデザイングループ課長の太田浩輔氏は、その背景となった社内の状況についてこう振り返ります。
「当社では 1990 年代後半より営業成績を一定の切口で抽出・分析できる DWH システムを実装してきました。機械学習等の高度なデータ分析技術を用いることでデータをこれまで以上に活用し、お客様向けのサービス・商品の改善に速やかに繋げていく必要性を感じ、他社に先駆けて AWS を基盤とするデータ分析環境を構築しました」(太田氏)
ただ、営業の現場などで実際にデータを活用するにあたっては、さらに乗り越えなければならない壁がありました。損害保険商品の開発やマーケティングを行う、火災・企業新種業務部 商品支援室 課長代理の南雲宇宙氏はいいます。
「データ基盤が整ったとはいえ、営業社員が自身の担当するマーケットや商品に応じてデータを抽出・分析するには一定のスキルが必要で、それをサポートするツールも社内にほとんどありませんでした。さらに、営業データをチームや代理店さん別の切り口でドリルダウンする場合、その都度データを抽出・突合する必要があり、日々の多様な業務がある中でそれらの作業を行う余裕はないのが実態でした」(南雲氏)そうした状況を受け、同社は 2019 年、データ準備・確認作業の徹底的な効率化とデータ分析ツールの代替によるシステム開発費の削減を目指し、Tableau の導入に踏み切ったのです。
Tableau の導入・運用環境について
研修・相談会・イベント等の推進策で Tableau を全店に展開
Tableau の導入・展開を主導したのはIT 企画部です。同部のメンバーは、Tableau のダッシュボードに実装する項目の検討や、ユーザビリティに関するユーザー部門へのヒアリングなどを綿密に行い、社員がいつでも手軽に、高品質のデータ分析を行える環境を整えていきました。
並行して進めたのが、人材育成や活用推進のためのさまざまな取り組みです。セールスフォース・ジャパン Tableau 事業統括本部の社員を講師とする 4 日間の研修プログラムや、システム開発・保守を担うグループ会社によるオンライン方式の技術相談会、動画教材、Tableau の情報を集約するポータルサイトなどを通じ、ユーザー部門の社員に Tableau の基礎からダッシュボード構築までのスキルを身につけさせました。IT 企画部 ビジネスプロセスデザイングループ 主任の中原茉由氏はいいます。
「Tableau の操作性はシンプルで直感的なので、スキルの習得は想定より早かった印象です。ただ、当初は『Tableau をどういうシーンで使えばいいかわからない』という社員の声が多かったので、普段の業務の中で Tableau をどう活用できるかなど、リテラシーやマインドセットから学べる推進の仕方を心がけました」(中原氏)
「たぶろう会」と呼ばれる Tableau ユーザーのための活動も、そうした推進策の 1 つです。2020年から年2回、セールスフォース・ジャパン Tableau 事業統括本部およびセールスフォース・ジャパンと連携して開催されるこの社内イベントは、毎回 100 名近くのユーザーが参加し、社内の活用事例を見て Tableau をより身近に感じたり、他のユーザーとつながったりする場として機能しています。
そうした取り組みを経て、同社は Tableau の全店展開を完了。約 400 名の社員がダッシュボード作成権限を付与されて Tableau Desktop を利用するようになり、Tableau Viewer のアクティブユーザーは 8,000 名に達しました。
Tableau 選定の理由について
シンプルな操作性、および採用企業の多さが選定の決め手に
初期検討時にあるBIツールと Tableau の2つに候補を絞って比較し、Tableau の採用を決めた理由は大きく2つありました。1つは、シンプルな操作で簡単にデータ提供・確認することが出来ることです。中原氏はいいます。
「Tableau は簡単にビジュアル良く、だれでもライトに作成できると感じます。当社が目指すデータ分析の体制を実現出来る Tableau を導入すべきだと考えました。」(中原氏)
もう1つの選定理由は、国内外の多くの企業で利用されているグローバルスタンダードな製品であることです。
「当時の BI ツールのシェアは Tableau の一強で、信頼できると思いました。その上で、コストや機能を総合的に判断し、Tableau を選定しました」(太田氏)
当時のBIツールのシェアは Tableau の一強で、信頼できると思いました。その上で、コストや機能を総合的に判断し、Tableau を選定しました。
Tableau の導入効果について
データ活用で営業活動が効率化、データに対する社員の意識が向上
Tableau を全店展開した同社では、さまざまな部門や業務において、データがかつてない方法と効率で活用され、成果を生み出すようになりました。商品開発部門における活用は、まさにその好例です。同部では、中小企業向けのパッケージ商品として、さまざまなリスクを1つの保険でまとめて補償できる「超ビジネス保険」の販売に力を入れています。その営業販売においては、顧客のニーズに合わせて必要な補償をカスタマイズできるという同商品の性質上、特約(オプション)の付帯率や契約継続率など、全国の代理店さんや営業チームの販売動向を把握し、戦略に活かすことが重要です。しかし、先述のとおり、多忙な営業部門の社員がそれらのデータを手動で収集・分析するのは困難でした。その状況が Tableau によって一変したのです。
「『超ビジネス保険』の販売動向に関するダッシュボードを作成し、全国の営業部門の社員が直接確認できる形で提供しました。それを利用すれば、たとえば全社的な実績と比べて自身の営業チームの状況はどうなのか、どの代理店さんが新しい補償をお届けしているのかなど、さまざまな切り口から販売動向を分析できます。実績のある営業チームから販売手法を聞き出して横展開したり、世の中のニーズを把握してお客様にご提案する際の材料にしたりするなど、より効率的、効果的な営業活動が可能になりました」(南雲氏)
火災・企業新種業務部 商品支援室長の赤木克之氏は、「各種ツールはあくまで目的達成の手段。リリースして終わりでなく、そこからが始まりだ」、と指摘します。
「現場の活用実態や改善要望を継続的にヒアリングし、真に成果に繋がるツールへと機能改善を重ねることが重要です。机上論だけで自己満足に陥るのは最も NG です。答えは現場にしかなく、ユーザー目線を何より大切にしています。また、現場が担っているミッションは多岐に亘り、やるべきタスクが山積しています。単にツールをリリースしただけでは、まず使って貰えません。われわれ商品部門としては、Tableau ダッシュボードなど各種ツールをリリースする際、ユーザーである営業部門に対して『この指標からはこういうことが読み取れ、こんな戦略立案に活用できる』という具体的なメッセージと合わせて発信することを心がけています」(赤木氏)。
これまで営業部門が 10~30 分要したデータ抽出の時間ゼロ、特約(オプション)の付帯率アップを実現
他の部門でも、Tableau の活用は日々進化しています。たとえばIT 企画部では、社内外のコミュニケーションの改善に Tableau を利用。社内での会議やミーティングに費やされた時間を可視化して、付加価値を生まない業務に時間を取られすぎていないか、コア業務に専念できているかなどを定量的に評価し、改善につなげています。また、各ダッシュボードの閲覧状況を可視化して、どの部門でどういうデータが見られているかを分析し、ダッシュボードの作成・改修に活かしています。
「当初はリリースしてもビュー数の伸びないダッシュボードが多かったのですが、社内のニーズを踏まえて改善を続けています。その結果、会議の場で活用されるような、月間 3,000 ビュー、400 名以上のユーザーに利用されるダッシュボードも出てきました」(中原氏)
Tableau の導入効果は、営業部門の社員が各種データを確認する時間の大幅短縮という形にも現れています。それまで 10 分、ものによっては 30 分以上かかっていた営業部門別の各種販売データの確認が、わずか数クリックで行えるようになったのです。
また、Tableau の導入後、サイバーリスク補償など、中小企業向けのパッケージ商品における新しい特約(オプション)の付帯率もアップしています。もちろんその要因は複合的なものですが、各種販売指標をもとに営業手法のノウハウを横展開する、といった Tableau の活用も一因となっている、と南雲氏は分析しています。
今後の展開について
代理店への展開を念頭に Salesforce との連携を検討
南雲氏は今後の展開について、「将来的には、代理店さんも Tableau を使えるようにしたい」と話します。それを受けて太田氏は次のように述べました。
「当社は代理店システムで Salesforce を使っています。今後は Salesforce との連携による代理店さんとの連携について検討していきたいです。Salesforce 製品と Tableau 製品の連携は引き続き期待していきたいところです。」(太田氏)
Tableau で大きな成果を上げ、活用範囲を拡大し続ける同社。赤木氏は最後に、Tableau の優位性について改めてこう語りました。
「Tableau の一番のよさは、『これまで見えなかったものが見えてくる』こと。各種指標が直感的な操作でグラフィカルに可視化されることで、営業のアプローチが感覚論からファクトに基づく科学的なものへと進化していく。一方、データには無限の切り口があり、それらすべてを単に羅列して提供しても、絵としてただ眺めるだけに陥ってしまう。” Less is more ”。ある先輩上司から教わった言葉ですが、やみくもにデータを提供するのでなく、無数のデータの中から、『営業部門がすぐにでも動きたくなるエッセンス』を見極めて提供することが大事だと考えています」(赤木氏)
ビジュアル的に優れたダッシュボードはできましたが、それを見て具体的な行動にまで移せる社員はまだ少ないと感じます。ダッシュボードのラインナップを増やすことで、営業部門が自らデータを深掘りし、行動につなげられるようなフェーズを目指したいと考えています。
※ 本事例は2023年7月時点の情報です
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