財務諸表やサプライチェーン全体状況をリアルタイムに可視化|住友商事株式会社

事業会社管理に係る業務時間 80% 削減

データ活用に対する組織文化改革も進行

導入の背景

前職場での成功体験を踏まえて Tableau 導入を決断

住友商事株式会社は近年、2021 年発表の中期経営計画にもとづき、事業戦略の明確化・深化と新事業の発掘、またそれにともなう大規模な組織改編を進めてきました。自動車グループは、モビリティサービスや自動車流通販売など 5 つの戦略事業単位「 Strategic Business Unit 」(SBU)にて、100 年に 1 度といわれる自動車産業の激変に対応しながらビジネスを展開しています。

同グループでは、組織改編以前から、各部門・プロジェクトにおいて各種のデータを分析し、意思決定の材料としてきました。ただ、その手法は、主に手作業でデータを集計して Excel のグラフを作成し、PowerPoint の資料に貼りつけるというもの。そのため、データの前処理や修正などの非効率な作業が毎月発生する、データをすぐに見られず改善のスピードが遅い、といった課題がありました。

2022 年、同グループに帰任した梶川大祐氏は、そうした状況を目の当たりにし、すぐさま Tableau の導入を決断しました。実は梶川氏には、同グループへ異動する前、製造業の関連会社を経営する中で Tableau を利用した経験があったのです。

「異動前の職場でも、データ活用に関して同様の課題を抱えていました。たとえば、生産量が計画を下回った原因を究明して改善しようとすると、手作業によるデータ分析に時間を要し、実際の改善までに 3 か月ぐらいかかってしまう。経営者としてどうにかしたいと考えていたとき、Tableau と出会いました」(梶川氏)

梶川氏は、工場の機械の稼働・生産状況などのデータを IoT で Tableau に接続し、ダッシュボードで可視化。各種指標をリアルタイムに確認できるようになった結果、改善までの期間が 3 か月から 1 日に短縮されるなど、圧倒的な成果を挙げたのです。

「そのときとビジネスの内容は違っても課題は同じ。それなら自動車グループにも Tableau を導入し、もう1回やってやろうと考えました」(梶川氏)
 

Tableau の導入・運用環境について

Tableau Bootcamp で 10 名のコア人材を育成

そうした成功体験があるとはいえ、同グループのような大組織において、慣れ親しんだデータ活用の方法を変え、新ツールの利用を定着させるのは簡単ではありません。

「そのため、Tableau を新たに導入するのではなく、すでに一部の部署で使っていた Microsoft Power BI の利用拡大も検討しました。ただ、どちらにしても新しいツールを皆に使ってもらうためには、組織風土から変える必要がある。その改革に一緒に取り組んでくれる手厚いサポート体制がセールスフォース・ジャパンにはあると感じ、Tableau の導入を決めました」(梶川氏)

同グループは手始めに、セールスフォース・ジャパンの協力のもと、導入候補の 10 プロジェクトを選抜し Tableau のハンズオンとトライアルを実施。そこである程度利用のめどが立ったことを踏まえて、各部署で核となる人材を育成するため、4か月間の Tableau Bootcamp を計2回行いました。

Tableau Bootcamp では、計 10 名の受講生が、Tableau を利用してそれぞれの部署の課題の解決に取り組みました。運営に携わった同グループ CFO オフィス MX チーム長の小島誠氏は、その利点と成果についてこう話します。

「与えられたお題で勉強するのではなく、セールスフォース・ジャパンのサポートを受けながら、自身でテーマとデータを持ってきて学習できるのが Tableau Bootcamp のいいところ。実際の業務課題の解決につながるだけでなく、上司・同僚とのコミュニケーションが発生して『このように使えるんだ』ということが周囲に伝わるからです。受講生による自動車グループ向けの最終発表会には、2 回で延べ 220 名が出席し、Tableau の認知度とデータ活用の理解度がさらに高まりました」(小島氏)

Tableau Bootcamp から輩出された10名の人材は、それぞれの部署で部長をはじめとするメンバーに Tableau の利用法を伝授。同グループ 自動車流通販売 SBU チーム長代理の伊藤耀太郎氏は、その様子をこう振り返ります。

「入社 2 年目などの若手が部長陣の講師役を務めるというのは、これまでに決してなかったこと。Tableau によって、データ活用に対する意識を含め、組織文化自体が変わってきたと感じました」(伊藤氏)

 

Dashboard

Tableau 活用について

財務諸表やサプライチェーン全体状況をリアルタイムに可視化

同グループはそうした取り組みを経て、Tableau Bootcamp の修了者10名を中心に Tableau によるデータの可視化・分析を開始しました。まず大きく変わったのが、同社の投資先である事業会社のうち数社を対象とした分析にて財務諸表やKPIをリアルタイムに可視化できるようなったことです。従来は、各事業会社から月次で上がってくる損益計算書や貸借対照表など、バラバラなデータをまとめて前月・前年と見比べ、予算比などの数字を時間をかけて追いかけなければなりませんでした。

「Tableau なら、単月・累積・前年比など、さまざまな切り口のグラフで各種データを視覚的に、瞬時に把握でき、業績変化の要因が直感的にわかります。データを可視化する作業にではなく、次の打ち手を考える本来の業務に時間と頭を使えるようになりました」(小島氏)

一方、伊藤氏の所属する自動車流通販売 SBU では、在庫やリードタイムなど、サプライチェーン全体の状況を可視化する業務が進化を遂げました。サプライチェーンにおいては、関連する各事業会社がデータをバラバラに蓄積・管理しています。そのため従来、Excel で上がってくるそれらのデータをつなげ、可視化・管理する作業に多大な時間と手間を要していました。Tableau によって、その作業が大幅に効率化されたのです。

「これまでは、各事業会社に Excel のデータをメールで送るよう依頼し、2~3 日待って来なければ督促したり、ようやく揃ったデータを手作業で結合したりする業務に、本当に多くの人員と時間を割いていました。Tableau の導入により、バラバラだった各事業会社のデータを日次で集計・可視化し、本社と各事業会社がそれを“共通言語”として、タイムリーな施策を展開できるようになりました」(伊藤氏)

同グループでは現在、Tableau Bootcamp の修了者10名が中心となり Creator ライセンスで Tableau Desktop を利用し、作成した Viz などを Tableau Cloud にアップしています。そしてそれを、30 ~ 40 名が利用するようになっています。

Tableau は直観的にデータ分析を行えるため、データからのインサイト抽出など、探索型の業務に最適です。また、ダッシュボードが見やすく表現力が多彩で、情報共有に有用なのも魅力の 1 つです。

Tableau の導入効果について

事業会社管理に係る業務時間 80% 削減など “破壊的な効果”、組織文化改革も進行

Tableau の導入による効果は、同グループの各所で現れています。たとえば、ある事業会社の業績管理業務においては、データ前処理や Tableau Desktop への反映を自動化するなどした結果、約 80% という大幅な業務時間削減に成功しました。

ただ、そうした数字は、Tableau による効果のほんの一部に過ぎない、と伊藤氏は指摘します。

「たとえば、各事業会社から膨大なデータを人力で取得して加工し、ビジュアライズするという作業は、日次でやりたくないし、実質的にできないと思います。そのような『従来できなかったことを実現してくれた』というさまざまな変化を定量化したら、おそらくものすごい数字になるはずです」(伊藤氏)

その言葉を受けて、梶川氏はこう続けます。

「Tableau を使うと、前の職場で業務改善までの期間が 3 か月から 1 日に短縮されたような“破壊的な効果”が出ます。ただ、私たちが目指すのは、その程度のものではありません。そのさらに先にある、“見えないものが見えてくる”というのが理想です。それを実現すれば新たなビジネスが生まれ、何十億円という売上効果を期待できるからです」(梶川氏)

そうした革新的な効果を生む土壌となる、データ活用に関する社員の働き方や意識には、すでに大きな変化が出てきている、と小島氏はいいます。

「Tableau Bootcamp に参加した若手などは、『Tableau を使うのがすごく楽しい』と目を輝かせて語っていました。私たちの主管業務は事業会社の管理なので、ともすると手応えのないルーチン作業になりがちです。その中で、データを可視化してビジネスをより深く理解できる、データを活用して会社に貢献できるというのは、特に若手にとってエンゲージメントにつながっている実感があります。また、経営層を含めた上の世代にとっても、これまでと違う切り口で仕事に取り組むきっかけになっているのではないでしょうか」(小島氏)

Excel で共有されていた資料がグラフ化され、業績変化を容易に認識できるようになった結果、今後取るべき対応などの議論が深まりました。また、各拠点に散在していたデータを一元管理することで、各拠点の担当者間での事業環境への認識のギャップが軽減されました。

今後の展開について

皆がデータ活用でビジネスの種を発見する究極形を目指す

「自動車流通販売 SBU では、Tableau を使う人間が増えるにつれて、統計学の用語など、皆の使う言葉が少しずつ変わってきました。データの集計や報告書の作成にあてていた時間を新たな角度からのデータ分析に使う、経営層からデータ活用に関するニーズが出てくるなど、組織文化の改革は確実に進んでいます」(伊藤氏)

若手だけでなく、各組織のマネジメント層も含めて幅広い階層で変化が起きている、と語る伊藤氏。それでも、モビリティサービス SBU を率いる梶川氏は、まだ満足していないようです。

「Tableau Bootcamp のような 5~10 名という単位でなく、一気に 100 名ぐらいをデータ活用のできる人材に育てるような仕掛けをしていきたいと考えています。それを実現すれば、皆がそれぞれにデータを可視化・分析し、ビジネスの種を発見できるようになる。究極的にはそこを目指しています」(梶川氏)

データドリブンな考え方に組織文化が変わり、皆がデータにアクセスできれば、皆が新しい発見を見つけられるようになります。そこから新しいビジネスの種が生まれていくようなそういう大きな循環が回り始めたらいいと思っています。

※ 本事例は2024年4月時点の情報です

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