データ戦略フレームワーク: 成功に向けた実装および拡張方法
基盤のない構造や、ビジネスプランのない会社を作るとどうなるでしょうか。同じことがデータ戦略にも言えます。データドリブンな組織になることを望むだけでは必ずしも成果を手に入れることはできないということを、多くのビジネスリーダーが認識し始めています。実際、NewVantage Partners が最近実施した調査によると、99% 近くのエグゼクティブは自社がデータドリブンな組織となるよう取り組んでいると回答しているものの、その目標を達成していると回答しているのは 32% のみです。明確なフレームワークがなければ成功を収めることはできません。このフレームワークにより、従業員はデータを使用して意思決定をサポートするとともに情報を提供する方法を知ることができます。
データ戦略を構築および維持するには、組織全体による戦略的および財務的な取り組みの両方が必要です。したがって、データ戦略を構築する前に、リーダーシップと IT 部門からのサポートを確保する必要があります。これらの人々が、エンタープライズ全体にフレームワークを拡張するための重要な変更を提唱し、その調整を支援する存在となるからです。具体的に、IT の最優先事項は次のとおりです。
- リーダーと連携してビジネスチームのデータ使用方法を理解する
- 組織全体にモダン分析のビジョンを伝えて売り込むのを支援する
- オーディエンスの規模とニーズによってデータソースの優先順位付けを行う
- 管理されたモダン分析ソリューションをインストール、構成、維持する
- データアクセス、コンテンツの監査、およびコンプライアンスに関するプロセス、ポリシー、ガイドライン、責任に影響を与える
データ戦略フレームワークに関する考慮事項
データドリブンな組織は、ビジネス戦略と IT 戦略の間に線を引くことはしません。包括的なデータ戦略を策定し、それを中心に据えます。つまり、主要なイニシアチブとデータを結び付け、ビジネスの目標、目的、企業のミッションに対処します。そして、データを副産物として扱うことはしません。データ戦略は強固なものでなければなりませんが、ビジネスニーズやオペレーションの変化に十分に適応できるよう柔軟であるべきです。
効果的なエンタープライズデータ戦略は、どのようにして実装すればよいのでしょうか。
優れたデータ戦略の実装を開始する際には、次の重要なステップに従うことで変革的な影響を与えることができます。
ステップ 1
ビジネス目標を明確に定義する:
このステップでは、組織のエグゼクティブおよびダウンストリームの目標を理解することが必要です。明確なビジネス目標は最終的に、データに基づいた意思決定に影響を与える主要業績評価指標 (KPI) およびメトリクスの特定に役立ちます。それらにより、どのデータソースを整理して分析を行うかも把握できます。
ステップ 2
目的をサポートする適切なデータを把握する
会社がすでにデータを収集している場合、それらのソースはクリーニングされ、認証されているでしょうか。されていない場合は、干し草から針を探すようなことになってしまいます。つまり、さまざまなユースケースをサポートし、ビジネス目標を推し進めるデータを見つけるのは困難です。Harvard Business Review によると、高い成果を上げている企業は「攻め」のデータ戦略と「守り」のデータ戦略を採用しており、これによって「顧客重視のビジネス機能」と「法規制、財務、コンプライアンス、IT 上の懸念」の両方に対応しています。結果として、社内または社外で参照および共有されるレポートが、信頼される正確なデータソースを反映し、標準に従い、一貫した管理プロセスを通じて作成されていると誰もが感じられるようになります。
ステップ 3
データアーキテクチャを最新化する:
1 つのデータソースだけでは、ビジネスに関するすべての質問の回答を得ることはできません。データが存在する場所に接続する必要があります。また、ソースが組み合わされている場合にデータを強化できるすべての方法を考慮する必要があります。つまり、従来のエンタープライズデータウェアハウスの一次元的なマインドセットから、スピード、アジリティ、データボリュームを実現する多元的なマインドセットへとシフトすることです。
データ管理はエンタープライズのデータ戦略の拡張をサポート
データアーキテクチャの最新化が完了したら、次はデータソースから価値を得る方法が必要です。データ戦略に関して、組織にはそれぞれ異なる要件と解決策があるため、柔軟性があり、さまざまな使用事例の選択肢のある最新のセルフサービス分析ソリューションを採用するべきです。そのようなソリューションには、ユーザーが分析でどのデータを使用するべきかが分かるように、データソースを認証する方法もあります。それぞれのユーザーが分析でインサイトを発見したら、組織の誰もが効果的に質問への回答を得て、さらにデータを探索し、ビジネス上のより優れた意思決定を行えるように、そのインサイトを簡単に共有できる方法が必要です。
データソースから整理されたデータセットまで、セルフサービス分析の導入の基盤となるのはガバナンスです。広範なエンタープライズデータへのアクセスに対応し、統一されたデータ戦略を実装する際に、企業がガバナンスとともに活用するのが、データカタログなどのデータ管理ツールです。データの整理には、組織がどのように異種の情報をキャプチャ、クリーニング、定義、および調整するかが含まれます。これは、データと実際のアプリケーションとの間の橋渡しを作成するプロセスでもあります。データカタログは、組織でのデータに関する用語を定義し、提示するものであり、ユーザーのより深い理解をサポートし、ユーザーパーミッション、使用に関する指標、系統を概説します。
データ戦略において、データガバナンスとデータ管理のバランスがうまくとれると、重要な利点が得られます。適切なデータが適切な人の手に渡り、プロセスの透明性が向上し、プロセスが文書化されるとともに理解されます。そして、組織全体でデータドリブンな意思決定を繰り返し行い、成果を上げることができます。
効果的なデータ戦略による成功の形
データ戦略を実装し、拡張した後は、いくつかの重要な機能を確立して、組織がデータカルチャーを促進し、維持できるようにする必要があります。プロセスとテクノロジーにおいて、組織全体のミッション、目標、ニーズが満たされるようにするためには、前述したように、エグゼクティブによる支持、アジリティ、データスキル、そして広範で活発なコミュニティが必要です。世界中の企業はこれらの機能とともにデータ戦略の実装を成功させており、最新のセルフサービス分析プラットフォームを導入することで恩恵を受けています。そのような企業のストーリーをご確認ください。
REI 社: コラボレーションによってインサイト発見までの時間を短縮し、小売エクスペリエンスを改善
REI 社のアナリストはこれまで、時間と労力の 80% をデータ準備タスクに費やしていました。そして、残りの時間は、情報を関係者に伝える適切な方法を見つけるために費やしていました。そこで、データ戦略を実装することを決定し、ビジネスチームと IT チーム間の協力的な関係の向上を優先することにしました。
Domino 社: データドリブンな組織となり、世界でも最先端のピザブランドへと変換
Domino’s Pizza は、世界で最も大手のピザブランドの 1 つです。しかし、同社は 2010 年にかなりの市場シェアを失いました。同社は、より優れた顧客エンゲージメントを実現するために、データからインサイトを導き出すという考え方を導入することでデータドリブンなブランドとなり、市場に対する新しい革新的なアプローチを可能にしました。
Charles Schwab 社: 1 万 6,000 人を超える従業員でデータカルチャーを推進
1970 年代に創設された銀行および証券会社は、「データ企業」の一般的な認識には一致しません。Charles Schwab 社は、最新のセルフサービス分析を採用し、ユーザーがデータに関心を持ってより効果的にデータを分析する方法を学びたいと思う環境を作ることで、そのような一般的な認識に反して、データ企業となりました。
これらの成功事例を見てみると、ますます多くの組織が、ビジネスプロセスの変更、文化的障壁の解消、全従業員に対する分析の価値の伝達を行う最高データ責任者 (CDO) も任命するようになっています。こうした戦略的地位の下で効果的なチーム運営を行っていくために、組織はますます多くの資金やリソースを投入しています。ガートナー社は、来年中に大企業の 80% で、CDO の役職が配置されると予測しています。これが現実となるかどうかについて注目しましょう。そうなれば、IT および最高情報責任者 (CIO) は、データセキュリティなどの他の分野にさらに戦略的に注力できるようになります。