AIとは、人間の知能や知覚をコンピュータで再現する技術で、人工知能を指します。少子高齢化の影響で生産年齢人口が減少するなか、業務効率・生産性向上を目指し、AIの活用を考えている企業も多いでしょう。
AIを導入する際は、事例を踏まえて自社に合った活用方法の検討が大切です。
本記事では、AIの概要と機能、業種別・身近な利用例を紹介します。事例を参考に、AIの導入イメージを膨らませてみてください。
AIとは
AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、次の3つの要素を通じて、人間の知能や知覚をコンピュータで再現する技術です。
要素 |
役割 |
センサー |
音声・テキスト・画像を通じて情報を受け取る |
システム |
センサーで受け取った情報を分析・学習する |
アクチュエータ(※) |
システムからの命令を受けて機器をコントロールする |
※データ分析のみを行うAIの場合、アクチュータは存在せず、システムからデータが出力されます
AIは、人間の脳のように機能する一方、人間には不可能な速度で処理を行うことが可能です。一度に大量のデータを学習・分析できるため、ビジネスや業務に活用すると、効率や生産性の向上が期待できます。
以下のページには、AIや機械学習についてより詳しく解説し、音声掲載しているので、ぜひ作業のお供にお聴きください。
機械学習・深層学習との関係
AIのなかに機械学習という分析手法があり、機械学習のなかに深層学習という手法が組み込まれています。
機械学習とは、AIのなかに組み込まれているデータ分析手法のひとつで、膨大なデータのなかから規則性を見つけ出し、学習した規則性をもとに、予測や判断を行うことです。
これに対し深層学習(ディープラーニング)は、規則の構造を多層化することで、機械学習が正しい規則を見つけられるようサポートします。
以下の記事では、混同されがちなAIと機械学習の違いを解説しているので、あわせてご覧ください。
生成AIとは
生成AI(ジェネレーティブAI)はAIの種類のひとつで、学習・分析した情報をもとに、AI自身が新たな情報やデータ、コンテンツを生成する技術です。
AIは現在、以下のように生成系と識別系に大別されており、できることが異なります。
AIの分類 |
特徴 |
生成系 |
データの学習・分析によって、新たな情報やデータ、コンテンツを生成する |
識別系 |
データの学習・分析によって、既存情報の分類や内容の判断を行う |
たとえば、アメリカのOpenAI社が提供するChatGPT(Generative Pre-trained Transformer)は、Web上のデータを学習したうえでユーザーの質問に回答してくれる対話型生成AIです。指示を出すと自動で文章や表を生成するため、日頃の業務効率化に活用できるでしょう。
ただし、生成AIが生み出すコンテンツの精度やデータの正確性はサービスによって異なるため、吟味が必要です。
学習させるデータの取り扱いにも気をつけなければなりません。内閣府によると、日本では生成AIによって生成した画像やイラストが既存の著作物と類似性があると認められた場合、著作権侵害と同様に扱われます。画像や動画を生成し営利目的で活用する際は、他人・他社が権利をもつデータを学習させるとトラブルにつながるため注意が必要です。
活用事例からわかるAIができる6つのこと
AIができることには、大きく次の6つがあります。
- 画像・動画認識
- 音声認識
- 自然言語処理
- データの分析・予測
- 異常検知
- 行動最適化
それぞれの概要と活用事例を紹介するので、AIをどのように活用するか検討する際の参考にしてみてください。
画像・動画認識
AIは、画像・動画認識機能によって、写っているものの特徴を読み取ったうえでデータを分析し、識別可能です。
株式会社みずほフィナンシャルグループは、AIの画像認識機能を活用した「The AOR™」という業務効率化ソリューションの実証実験を行いました。「The AOR™」は、AIが手書きや非定型の帳票から文字情報を認識しデジタル化することで、入力作業を効率化します。
実証実験の結果、従来必要だった手入力作業を8割削減することに成功しています。
音声認識
AIは、音声認識機能によって、人の声を認識したうえで言語情報に変換し、データ化できます。
たとえば、アメリカのApple Inc.が提供する音声応答アプリケーション「Siri(シリ)」には、AIの音声認識機能が活用されています。AIの音声認識機能が、iPhoneやiPadに話しかけた内容を認識し、音声やテキストで応答してくれるのです。質問に答えるだけでなく、Webページや各種サービスへの誘導やアプリの起動もできます。
自然言語処理(NLP)
AIの自然言語処理(NLP)とは、コンピュータが人間と同じように文章や話し言葉を理解できるようにする機能です。日本語から他言語への翻訳や文章の要約など、言語に関するさまざまな処理を行います。ChatGPTをはじめとする生成AIにも活用されています。
自然言語処理機能を活用した事例が、ChatGPTを活用した日清食品ホールディングス株式会社のNISSIN AI-chatです。
NISSIN AI-chatは、従業員が入力した情報を学習させないようにしており、社内の情報漏洩リスクに対処しているため、安心して利用できます。NISSIN AI-chatと対話しながら、マーケティング施策のアイデア出しをはじめさまざまな業務を効率化できます。
以下の記事では、自然言語処理機能の活用事例を8つ紹介しているので、あわせてご覧ください。
▶ 自然言語処理(NLP)とは?コミュニケーションへの影響の例 8 選
データの分析・予測
AIは、人間では扱いきれない膨大な量のデータを分析したうえで、予測することが可能です。
製本関連機器製品を開発・製造する株式会社ホリゾンは、AIによる需要予測を検証しました。工場のIoT化の一環として、在庫の最適化を目指すためAIによる需要予測の可能性を探るためです。
検証では、機器のアフターパーツに対する需要予測AIモデルを構築しました。AIは、既存の受注管理システムと在庫管理システムから過去の実績データを学習し、需要予測を行います。検証の結果、従来の需要予測よりも欠品を抑えながら在庫量を低減でき、在庫の最適化につながったことがわかりました。
AIによるデータ分析の活用事例は、以下の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。
▶ AI によるデータ分析とは?メリットや活用例について解説
また、AIによるデータ分析を導入したい場合は、以下のページからガイドを入手してください。
異常検知
AIには、設備や製品の正常時のデータを学習させることで、異常を検知できる機能があります。人の目視による検査では検知できなかった異常を、データにもとづき高い精度で検出可能です。
三菱ケミカル株式会社は、異常検知にAIを活用しています。プラントの液面計の異常を検知できるよう、各種計器のデータを学習させ、変動予測を行います。AIによって提示された予測と実際の数値を、リアルタイムで比較することで、動作の正常性を監視可能です。
従来は機器の運転中にできなかった計器の動作チェックができるようになり、異常の早期発見によるトラブル回避につながっています。
行動最適化
行動最適化とは、AIが学習した目標や制約を踏まえながら、最適な選択肢を見つける機能です。
たとえば、アメリカのAeolus Robotics Corporationが開発したアイオロス・ロボットは、行動最適化を活用しています。作業をしながらさまざまなデータを学習し、自分で判断したうえで最適な行動を選択できるのです。介護施設での業務支援の実証実験を行っており、実用化が進めば人手不足を解消する手立てになるでしょう。
分野別のAI活用事例5選
分野別のAI活用事例を5つ紹介します。
- 医療
- 製造業(工場)
- 営業
- 介護
- 教育
自社でAIを活用する際の参考にしてみてください。
医療
国立研究開発法人国立がん研究センターでは、AIを活用した医用画像検索システムを開発しました。
医用画像とは、CTやMRIによって生成される画像です。従来の方法だと、蓄積された膨大な医用画像のなかから、画像を検索する際に類似画像をあらかじめ用意しておかなければならない手間がありました。
この課題を解消するために開発された医用画像検索システムは、医療者によるスケッチをもとに画像を検索できます。類似画像がなくても検索できるようになったことで、過去の症例を参考にする際に発生していた手間がなくなるとともに、より精度の高い診断をサポートできる可能性があります。
製造業(工場)
六甲バター株式会社は、新工場を設立する際、生産性向上のために手作業を削減する目的で最新のAIを導入しました。
その結果、従来熟練作業者が目視によって行っていた検査の自動化に成功。1分間に500個ものチーズを検品できるようになりました。検品作業の省人化に成功し、生産性向上を実現したのです。
営業
厚生労働省が紹介している生命保険関連会社の事例では、営業職の育成にAIを活用しています。
生命保険の営業は、商品の特徴を理解していなければならず、経験が浅い人材に十分な研修を行う必要があります。そこで、AIを活用して顧客モデルを作成し、商品説明をシミュレーションできるソフトを開発しました。このソフトには、採点機能が搭載されており、営業人材の知識量や説明スキルを定量的に測定できます。各人材の弱点が可視化されることで、研修を効率化できるのです。
介護
介護業界では、AIによる業務の効率化が進んでいます。
たとえば、エコナビスタ株式会社が提供する「ライフリズムナビ+Dr.」は、介護現場の見守り業務をサポート可能です。利用者の心拍や呼吸の状態、寝ているか・起きているかといった状況を判断し、教えてくれます。また、ドアの開閉があった場合は、リアルタイムに通知があるため、利用者の安全確保に役立つでしょう。
「ライフリズムナビ+Dr.」を活用した現場では、夜間巡回回数が削減され、利用者の状態に応じた適切なケアができるといった効果が確認されています。
教育
株式会社アクティブブレインズは、「AIAIモンキー」というAI学習支援ツールを提供しています。
「AIAIモンキー」は、AIによって児童生徒がタブレットに入力した意見を分析し、自動で可視化することが可能です。活用することで、対話的で深い学びを得られる協働学習をサポートできます。
生活のなかの身近なAI活用事例5選
生活のなかにある身近なAIの活用事例を5つ紹介します。
- スマートスピーカー
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- ロボット掃除機
- エアコン
いかにAIがわたしたちの生活をより便利に、豊かにしてくれているかわかるはずです。AIを活用したサービスや商品の開発をお考えの場合は、参考にしてみてください。
スマートスピーカー
スマートスピーカーは、米Apple社の「Siri」や米Amazon社の「Alexa(アレクサ)」のように、自動音声対話ができる音声応答アプリケーションを搭載したスピーカーです。
この技術は、AI技術の中核である次の3つから成り立っています。
- マシンラーニング(機械学習)
- 自然言語処理(NLP、Natural Language Processingの略)
- 自然言語生成(NLG、Natural Language Generationの略)
人間がスマートスピーカーに質問や指示をすると、指示内容を理解しようとします。これがNLPです。そして、人間のわかる言葉で応答します。これがNLGです。スマートスピーカーは、機械学習によって莫大なデータから学習し、質疑応答を行うのです。
人々がスマートスピーカーを使うごとに指示内容を学習し、より便利なAI家電へと成長していきます。
冷蔵庫
パナソニックのAIエコナビ搭載冷蔵庫は、スマホアプリを通じてGPSの位置情報と連携し、「お留守番モード」による節電や、「お買い物準備モード」でまとめ買いした食材を効率よく冷やすための運転を自動で行います。冷蔵庫に搭載されたセンサーによってAIがドアの開閉や収容量を学習し、自動で曜日ごとに最適な節電運転を行ってくれるのです。
洗濯機
シャープの「COCORO WASH」と呼ばれるAIoT洗濯機は、クラウドAIを用いてユーザーの洗濯利用データを分析します。ユーザーの洗濯の好みや頻度を学習し、最適な洗濯運転パターンで洗濯を行うことが可能です。また、Amazonで設定をしておくことで、洗剤の量が少なくなったとき自動で再注文する機能も搭載されています。
ロボット掃除機
ロボット掃除機であるアイロボットの「ルンバ」には、「iRobot Genius ホームインテリジェンス」というAIが搭載されています。
iRobot Genius ホームインテリジェンスは、AIの機械学習機能によって、部屋の間取りや特定の家具の場所を記憶し、適切なルートで掃除を行います。掃除をするたびに配線コードが絡まる場所があれば記録し、自動で掃除機の「進入禁止エリア」を提案することも可能です。花粉やアレルギーが多くなる季節を判断し、清掃頻度の提案もします。
AI搭載のロボット掃除機は、人間が手間をかけずに、部屋を清潔に保つサポートをしてくれるのです。
エアコン
東芝エアコンのAI快適運転では、温冷熱センサーが室内にいる人の体表温度を感知します。体表温度と室温・風量などの情報をもとに、人の快適度を判定し、自動で運転してくれるのです。学習機能も備わっているため、過去の使用履歴からユーザーにとって心地のよい送風をコントロールします。
ビジネスにAIを活用するメリット
ビジネスにAIを活用すると、次の3つのメリットを得られます。
- 業務を効率化できる
- 生産性の向上を狙える
- 人手不足に対応できる
AIによって、業務や職場環境を改善できると、従業員のモチベーションやエンゲージメント向上も狙えるでしょう。
業務を効率化できる
AIは人の手による作業を削減してくれるため、業務効率化を実現できます。
たとえば、AI搭載型のSFA/CRM、BIツールなどを活用すると、データ分析を自動化できます。その結果、従来の事務作業やデータ管理業務の負担が軽減され、コア業務に集中できるようになるのです。
生産性の向上を狙える
AIは、人間には不可能なスピードでさまざまな処理を行えるため、生産性の向上を狙えます。
人間の場合、スキルや経験によって業務の精度にバラつきが生まれますが、AIは一定のクオリティで行える点も魅力です。ただし、生成AIのように発展途上のAIは、生成精度にバラつきがあるため、活用するサービスを選ぶ際は注意しましょう。
人手不足に対応できる
AIは、人間の業務を代わりに行う、あるいは効率化できるため、今後深刻化が予想される人手不足への対応手段になります。
総務省が発表した「令和6年版高齢社会白書」によると、日本は少子高齢化にともなって生産年齢人口が減少傾向にあり、今後もさまざまな業界で人手不足が課題となることが示唆されています。
AIが人間の労働力を補えるようになると、人手不足に対応しながら今後のビジネスを展開していけるでしょう。
AIを活用する際の注意点
AIはまだ発展途上の技術であり、誤った情報の提供や判断を下すこともあるため、リスクマネジメントが必要です。
AIに任せきりにせず、重要な部分は人間の監視や検査を怠らないようにし、AIと共存していくなかで業務効率化・生産性向上を目指しましょう。AIによるトラブルに備えて、事前にフォロー体制や解消手順を構築し、責任の所在を明らかにしておくことも大切です。
さらに、AIは多くの場合インターネットを通じて使用するため、サイバー攻撃を想定したセキュリティ対策も必要です。サイバー攻撃を受けた場合、業務の停止を強いられるだけでなく、機密情報や顧客の個人情報漏洩のリスクが高まります。そのため、セキュリティ対策の専門人材と常に連携できる体制の整備も求められます。
AIでデータ活用を支える「Tableau AI」とは
データ分析・可視化を自動化するBIツール「Tableau」を基盤とした「Tableau Pulse」は、AIを活用した分析が可能です。AIがデータを自動で分析することで、課題発見や施策立案までのスピードを向上させます。
生成AIによって、分析結果をテキストに起こすことも可能です。従来は、可視化されたデータを人間が分析する工程が必要でしたが、今後はプロセスをより効率化できるでしょう。また、AIによる会話アシスタント機能を搭載しているため、ツールの使い方がわからないときは、AIに尋ねることで解決可能です。
まずは、以下のリンクからTableau Pulseの基盤となるTableauを、無料でお試しください。
まとめ:活用事例からAIの導入イメージを膨らませよう
AIは、わたしたちの生活を便利にするだけでなく、ビジネスや業務の効率化にも役立ちます。企業にAIを導入する場合は、本記事で紹介した事例を参考に、イメージを膨らませてみてください。
企業内のビックデータを分析・可視化するなかで、より効率化を求める場合は、AI Tableauを搭載した「Tableau Pulse」をご検討ください。データビジュアライゼーションだけでなく、生成AIによるデータ分析の言語化も可能です。まずは、Tableau Pulseの基盤となるプラットフォーム「Tableau」を無料でお試しください。