コンテンツの全領域のデータをつなげ、番組づくりでリアルタイムに活用|日本テレビ放送網株式会社
コンテンツ収支算出工数を年間約 1,800 時間削減、データドリブン文化を醸成
導入の背景
視聴率のデータに加え、様々なデータを活用すべく DX を推進
日本テレビ放送網は 2023 年 6 月、DX による改革を加速させ、社内に「IT エンジニアの文化」を醸成するため、新たに DX 推進局を発足させました。データマネジメント室を前身とし、それまで各部門に点在していた IT エンジニアを統合する形で設立された同局は、データドリブンな意思決定を行うための仕組みづくりを全社横断で推し進め、グループ全体のデータ活用において中心的な役割を果たしています。
そもそも同社が、DX 推進局の設立を 1 つのマイルストーンとする本格的なデータ活用に向けて動き始めたのは 2018 年。さまざまな部門からメンバーを集めた検討会でデータ基盤構築の必要性などを議論し、デジタル領域を含めたデータ活用を始める方針を打ち出したことに端を発します。
その取り組みの背景には、一部の例外を除いてデータの活用がなかなか進まない、テレビ局特有の課題がありました。検討会のメンバーの 1 人で、現在は同局データ戦略部 専門副部長を務める川越五郎氏はこう振り返ります。
「テレビ局では昔から、地上波の視聴率というデータを収集・分析し、番組づくりや編成に活かしてきました。ただ、自社の分析部門とシステムによるデータ活用といえばほぼそれだけの状態でした。やはり長年地上波の収入と存在感が非常に大きかっただけに、デジタル領域などのデータについてはほとんど活用できていないのが実情でした」(川越氏)
データ基盤と分析環境を整備することによって、大幅な改善が見込まれたことの 1 つが、「コンテンツ収支」の集計・分析作業です。部門単位で出す事業収支に加え、コンテンツ(番組)単位で収支を算出しています。これは制作費や広告収入などの収支を番組ごとにはじき出し、それにもとづいて各番組に対する意思決定を行うことを目的としています。ただ、その作業には膨大な工数がかかっていました。DX推進局 データ戦略部副主任の辻理奈氏はこう話します。
「コンテンツごとの収支を算出するには、まず各部門での収支を手作業で Excel にまとめ、それらを経理部門が Excel で統合するという“ 多段 Excel 作業” が必要だったため、年 2 回行うので精一杯。つまり、半年に 1 回しか、収支をベースにコンテンツを把握する機会がなかったわけです。そこから脱却しようと、過去に何度かシステム化が検討されたものの、要件定義や開発が難しくて頓挫し、長らく同じ作業を続けてきたと聞いています」(辻氏)
同社は、2018 年に Tableau の導入し、そうした積年の課題を克服して、DX への一歩を少しずつ踏み出してきました。
Tableau の導入・運用環境について
推進側が Tableau の価値を提供し、データ活用の文化が自然に醸成
Tableau 導入後、当時 ICT 戦略本部に所属していた川越氏を含む数名の推進メンバーは、Tableau 社主催のトレーニングやオンライン学習サービスを受講するなどして、Tableau のスキルをひと通り習得。わずか数週間で、見逃し無料配信動画サービス 『TVer』 の動画や広告の再生数など、比較的取得・利用しやすいデータをダッシュボード化できるようになりました。
続いて、SNS のフォロワー数や Web サイトのアクセス数などのデジタル領域のデータを次々に可視化し、各部門の担当者に共有して業務効率化などにつなげていきました。そうした小さな成功を積み重ね、ダッシュボードの数と閲覧できるデータの幅を拡大することで、データ可視化・活用に対する社内の機運は徐々に高まっていきました。
同時に、推進メンバーを講師役とする勉強会の開催や情報ポータルの設置など、各部門が自らダッシュボードを構築できるようにするための施策にも積極的に取り組みました。ただ、実際には川越氏の思い通りに機能せず、普及活動は難航したといいます。
「当初はセルフサービスBI の実現を目指して Tableau の活用促進に努めましたが、やはり社員は日々の業務に忙しく、新たなことに取り組むことがなかなか難しい状況でした。それでやむを得ず、私たち推進側で各部門の求めるダッシュボードなどを作成して提供する“ 集中型” へと方針を転換しました。また、推進側でカスタマーサクセスチームやコミュニティを設立し、各部門のデータ活用に関する疑問や要望に応えるようにしました」(川越氏)
ところがそうした軌道修正は、推進側の予想をいい意味で覆すユーザーの変化を生み出しました。辻氏はこう説明します。「カスタマーサクセスチームが、『ダッシュボードを作って終わり』ではなく、各部門の困りごとを聞きながら一緒にデータ活用を進めたことで、Tableau はユーザーにとって本当に使える、効果を実感できるものになっていきました。そしてその結果、図らずもユーザーのマインド自体が大きく変わっていったのです。たとえば、経理部門が主導して Tableau 勉強会を開き、カスタムビューの使い方などの高度な説明をするのを、私たち推進側はただ感心しながら見ているだけ、というような変化です。推進側が『セルフサービス BI を実現するぞ!』と意気込んだらうまくいかず、逆に断念して集中型で Tableau の価値をしっかり提供したら、自然にセルフサービス BI へ切り替わっていった。Tableau 社のいう“カルチャーの醸成”とはこういうことなんだ、とようやく理解できました」(辻氏)
Tableau 選定の理由について
習得の容易さ、ローカルの膨大なデータを扱える機能性が選定の決め手に
同社は、DX を推進する基盤として 3 つの製品を比較。その中から最終的に Tableau を選んだ理由は2つあった、と川越氏は話します。
「まず、中長期的にデータドリブン組織を実現するためには、各部門がセルフサービスでデータを可視化・分析できるようにならなければなりません。その点において Tableau なら、ドラッグアンドドロップで気軽にグラフを作れるなど、皆で使い方を覚えて活用できそうだと感じました」(川越氏)
もう 1 つの決め手になったのが、他の2製品にはないクライアントソフトの存在でした。
「各部門には、長年の業務を通じて Excel ファイルが蓄積されていました。ローカルに存在するそれらの膨大なデータを分析するには、クライアントソフトのある Tableau が最適だと思いました」(川越氏)
Tableau の導入効果について
コンテンツ収支の算出工数を年間 1,800 時間削減、鮮度の高いデータを用いた意思決定
コンテンツ収支の算出作業は Tableau を利用することによって、劇的に改善されました。従来の“多段 Excel 作業”は不要となり、経理部門が各部門から送られてきた Excel のデータを取り込み、Tableau Prep の実行ボタンを押すだけになりました。これによって経理部門は、年間で約 1,800 時間あまりの工数を削減することができたのです。それに加え、新しい価値として、年 2 回しか算出できなかったコンテンツ収支を毎月可視化し、各番組の意思決定に反映できるようになりました。
同様に、番組の認知度調査の集計・分析作業も大幅に効率化、迅速化されました。これまで同社では、インターネット調査の導入事例 情報・通信業結果を各部門で PDF や PowerPoint にまとめていましたが、データの処理や共有に 1 週間ほどかかり、番組づくりにリアルタイムに活かせないという課題がありました。その作業に Tableau Prep を利用することで、生データを短時間で処理し、調査結果を翌日には Tableau で確認可能になったのです。また、データはすべて蓄積されて全社に公開されるため、以前のように部門ごとにサイロ化することなく、誰でも容易に経年比較などを行えるようになりました。
一方、コンテンツ収支をはじめとするデータ可視化や分析の内容も、ビジネスの実態をより正確に示すものへと最適化されました。従来のように地上波の視聴率だけでなく、AVOD (広告型の動画配信サービス)や SVOD (定額制の動画配信サービス)などのデジタル配信の視聴率や、SNS の動向など、コンテンツにまつわるすべての領域のデータが初めて横断的につながり、それにもとづいてより多角的で的確なコンテンツに関する意思決定を下せるようになったのです。
「当社は『中期経営計画 2022-2024 』 で 『コンテンツ中心主義』 を掲げ、地上波だけでなくデジタルなどのあらゆる領域をフラットに、フェアに見て、番組づくりや編成を行おうとしています。Tableau は、まさにそういうデータドリブンな意思決定の土壌、不可欠なデータ分析基盤となりつつあります」(辻氏)「当社では、コンテンツが会社の大黒柱になる主力商品です。とすれば、それをどのようなプラットフォームでいかに多くの人に届けるかを考えるのは、収益の最大化につながるもっとも重要なこと。当社では、Tableau をそういう商品戦略の根幹の部分で使い始めているわけです」(川越氏)
Tableau は、まさにそういうデータドリブンな意思決定の土壌、不可欠なデータ分析基盤となりつつあります
今後の展開について
「データがいつも隣りにいる」業務全体の DX 実現を目指す
今後 Tableau で実現したいことはまだまだある、と川越氏は話します。
「データ戦略部でよく議論しているテーマは、データが各部門の日常業務にもっと入り込み、シームレスに活用できるような流れを作って、業務全体の DX を実現することです。確かに Tableau によって、データを見たいという要望は叶えられました。ただ、可視化されたデータを次のアクションにつなげ、業務を変えていくところにまで至るのはなかなか難しい。Tableau の機能を業務そのものに埋め込んだり、他のツールと連携させて、『データがいつも隣りにいる』 というような世界観を作り上げたいと考えています」(川越氏)
Tableau の機能を業務そのものに埋め込んだり、他のツールと連携させて、『データがいつも隣りにいる』 というような世界観を作り上げたいと考えています
※ 本事例は 2023 年 9 月時点の情報です
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