データのリアルタイムな可視化・活用で留学生募集業務を高度化|立命館アジア太平洋大学
入学から卒業後まで学生を一貫支援するエンロールマネジメントを実現
導入の背景
データを可視化・連携できず、留学生募集の効率化・高度化が課題に
大分県の別府湾を一望できる高台に広大なキャンパスを構える立命館アジア太平洋大学(APU)は、2000 年に設立された、日本初といわれる本格的な国際大学です。その位置づけにふさわしく、2022 年度、同大学に在籍する学生約 5,700 名の約半数は、世界 102 の国・地域からの国際学生です。また、教員の半数近くが外国籍で、日本語・英語の二言語教育システムを展開するという、世界的にもユニークな多文化・多言語環境を確立しています。
当然、同大学の運営において、募集活動をはじめとする留学生関連の業務とシステムは重要な位置を占めています。国・地域・学校別の受験者・入学者の数や推移、入試・入学後の成績などのデータを踏まえ、募集活動や入試・審査をどう改善するか。世界中どこからでも受験・入学の手続きを円滑に行えるプラットフォームをいかに整備するか。それらは大学経営の根幹に関わるテーマです。
同時にその領域は、同大学にとって長年の課題でもあった、と副学長の淺野昭人氏は話します。
「本学では毎年、どの国・地域・学校から何名が出願して、入試において何点で合格し、その後どんな成績を収めたか、という数千名分のデータが蓄積されていきます。しかし、各データはそれぞれ異なる部局やシステムで Excel 等を使って管理され、データの収集・整備・分析は個々のスキルに依存していました。結果として、各データを連携・分析してすぐに留学生募集や大学 IR に活用する、というレベルにはまったく達していませんでした。
また、大学というのは基本的に 1 年間単位で物事が進む仕組みのため、データを踏まえてなにかを改善しようと思っても早くて再来年度、ということになりがちです。そうなると、判断基準はどうしても感覚的なものになり、そのときどきのデータを見て迅速に意思決定するという意識は総じて低かったと思います」
Tableau の導入・運用環境について
各種データの可視化・連携で募集活動等の業務を改善
そうした課題の克服に向け、同大学は 2018年、各種データを可視化・分析し、留学生関連の業務を効率化・高度化するツールとして、アドミッションズ・オフィス(国際)への Tableau の導入を決定。パートナー企業による構築支援とトレーニングを受け、約1年で職員約 100 名が利用できる状態にまでこぎつけました。
Tableau によってまず大きく変わったのは、留学生の募集活動における職員の取り組み状況や出願状況の実績・推移がリアルタイムに可視化され、関係教職員に自動配信されるようになったことです。
「毎日更新される出願者のデータや各国・地域・学校別の職員の活動状況、前年度・目標値との差異などをひと目で把握できるようになり、たとえば出願数の伸び悩んでいる国・地域に対するマーケティング施策を強化するなど、格段にマネジメントしやすくなりました」
また、募集・入試関連のデータを Salesforce や基幹システムのデータと接続することで、これまでできなかった多様な分析を瞬時に試行できるようになりました。
「たとえば、出願時に書かれた小論文の内容に剽窃等の不正がないか、過去の小論文との類似度を調べるなどの分析を簡単に実行できます。中でも大きく進歩したのは、入試時の得点のデータと入学後の成績のデータをかけ合わせた分析を行えるようになったこと。入試時とその後の成績を比較して奨学金の配分を決める、国・地域・学校・年度別の成績の傾向から入試の選抜が適切かを判断するなど、さまざまな施策が可能となっています」
国際学生志願者数および手続状況(日次)
Tableau 選定の理由について
圧倒的な見やすさと使いやすさ、二言語対応が決め手
パートナー企業とのミーティングにおいてTableau の活用についての話題で盛り上がり、その場でアドミッションズ・オフィス(国際)への導入を決めたという同大学。決め手となったのはビジュアルの見やすさと使いやすさだったそうです。
「BI ツールについては業務に関わる人すべてに使ってもらいたいと考えていました。Tableau なら、圧倒的に見やすいビジュアルでユーザーの関心を惹きますし、自分なりにカスタマイズしてデータ分析するプロセスもわかりやすいので、大丈夫だろうと思ったのです」
加えてもうひとつ、同大学ならではの選定ポイントとなったのが、日本語と英語どちらでも利用できることです。
「本学には留学生が多いため、二言語教育だけでなく、受験・入学のプラットフォームなどもすべて日本語・英語の両方で使えるようにしています。国産の BI ツールの多くは日本語ベースなので、英語版を作るときの使い勝手が悪そうでしたが、Tableau は日本語・英語のどちらにも対応しているので、その点でも本学には最適だと思いました」
授業料減免率別入学後GPA 分布
Tableau の導入効果について
学生の学びの実態を把握し支援するエンロールマネジメントが可能に
同大学では、データ分析の結果を学内の業務改善や意志決定につなげる大学IR の領域においても、Tableau の利用を進めています。もともと学長室では、アドミッションズ・オフィス(国際)より早い 2013 年に Tableau を導入していたものの、思うように活用できていなかったそうです。その背景には、前述の通り各種データが部局ごとに管理され、連携されていないという状況がありました。
「今回の Tableau 導入を機にデータウェアハウスを整備してデータを一元化したことによって、大学 IR においても Tableau をさまざまなことに利用できるようになりました。中でも特にやりたいと考えていたのが、エンロールマネジメント。学生一人ひとりにいて、入学前の成績から入試、入学後の成績、課外活動、卒業後の進路までの全データをつなげて見ることで、学びの実態を把握して学生支援や授業設計に結びつける、というマネジメント手法です。大学という教育機関の目的に照らすと非常に大事な施策である一方、実現のハードルは高いのですが、本学では可能になりつつあります。コロナ禍になる前にそういうステージへ進むことができてよかったと思っています」
淺野氏は、大学運営全般においても Tableau 導入の効果を実感している、と話します。
「意思決定の際、データによる評価という要素が必ず加わるようになりました。それによって説得力が増し、最終的な意思決定や施策実行までの時間が短縮される、会議の回数が減る、という効果は確実に出始めています。大学という組織ではとにかくたくさんの会議が行われるので、Tableau の影響は非常に大きいと思います」
出願書類(エッセイ)の類似度調査
大学という組織ではとにかくたくさんの会議が行われるので、Tableau の影響は非常に大きいと思います
今後の展開について
活用拡大のカギは、データを行動につなげる“思考 ”を持つ人材の育成
同大学における Tableau の活用は日々拡大、進化しています。世界各地で開かれる留学生募集の説明会における活用もそのひとつです。
「2019 年までに職員が約 40 か国へ出張し、世界中の大学が集う説明会に参加していました。その際、海外の大学の多くが、まさに Tableau のようなツールの画面を使って説明するのに対し、われわれが見せるのは大量に持参したパンフレットなどの印刷物。そうなるともう説得力がまるで違って、レベルの差を痛感していました。近年はコロナ禍のためオンライン開催ですが、次回こそ Tableau を使って他大学に引けを取らないプレゼンを行える、逆に差をつけるチャンスだと楽しみにしています」
ただ、Tableau の今後の活用は、データドリブン思考を持つ人材をどれだけ育てられるかにかかっている、と淺野氏はいいます。
「データを駆使するスキル以上に、データから具体的なアクションを起こそうとする思考を身につけることが大切だと感じています。現在、Tableau の利用は職員業務がメインですが、今後、授業などにも領域を拡大したいと考えています。教員・学生にも利用が広がれば、データから得られる気づきはその分だけ多くなります。それを皆で持ち寄ることで、よりよい施策や改善につなげられるようになる、と期待しています」
高校・授業料減免率別入学後GPA 調査
※ 本事例は2022年10月時点の情報です
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