スマートファクトリーの膨大な情報を Tableau で可視化|キオクシア岩手株式会社
意思決定の精度・スピードの向上
データドリブン文化の醸成
導入の背景
不測の事態への迅速な対応が半導体製造の真髄
1987年に世界で初めて NAND 型フラッシュメモリを発明、その後も2007年に世界初の3次元フラッシュメモリ技術を確立し、半導体メモリ業界を牽引し続けているキオクシアグループ。その中でも最大規模の製造棟と最先端設備が導入され、「3次元フラッシュメモリ BiCS FLASH™」の生産を担っているのが、キオクシア岩手株式会社(以下、キオクシア岩手)です。
「半導体の開発・製造は物理限界に挑戦しているため、他の製造業とは異なり、農業に近い側面を持っています」と語るのは、キオクシア岩手で代表取締役社長を務める柴山 耕一郎 氏。物理的な限界領域では不測の事態が起きやすく、人が決めた計画通りには進まないことが少なくないのだと説明します。「この不測の事態への対処こそがこの業界の真髄であり、だからこそ他社の参入も難しいのです」。
これを可能にするには、工場で発生する膨大なデータをいち早く収集し、日々変化する状況に対して迅速に経営判断を下すことが欠かせません。そのためにキオクシア岩手では工場のスマート化を推進していますが、そこから生み出される情報は1日あたり数十億件にも上るのだと言います。
「例えば製造装置が故障した場合、どういう作業員を呼んでどのパーツを交換するのかを、素早く判断しなければなりません。この判断が遅れれば、すでに逼迫している半導体の供給が遅れてしまうことになります。当然ながら集まってくるデータを人手で加工しているようでは間に合いません。1クリックで把握でき、それを即座に意思決定に繋げられる仕組みが必要です」。
Tableau の導入・運用環境について
Tableau 導入からわずか1年余で半数の社員がユーザーに
このニーズに対応するにはどうすべきなのか。この問いに対してキオクシア岩手が導き出した答えが、Tableau の導入でした。
「情報をシェアする場を作ろうという構想は 2020年5月に着手しましたが、当初は特定のツールには拘っていませんでした」と言うのは、キオクシア岩手 IT 推進部で部長を務める安藤 直之氏。まずは社外からコンサルタントに参加してもらい、世の中の状況やツールを教えてもらうことからスタートしたと振り返ります。「その上で 3種類の製品を提案していただき、2020年7月に Tableau の採用を決定しました」。
IT 推進部では Tableau の利用経験がなかったため、まずは Tableau 社が提供するトレーニングで使い方をマスター。データ収集などの環境構築も Tableau 社に依頼し、2020年夏から秋にかけて実装が進められていきました。その後、製造系データの可視化に着手。日々の生産の予実管理や装置のトラブル情報の共有などが進められていったのです。
2021年4月には、歩留まりなどの品質管理に関するダッシュボードや、生産計画システムからのデータなどを取り込んだ生産管理関連のダッシュボードの運用を開始。さらに2021年8月には、製造関連ダッシュボードの拡充も行われています。
「当初は10名程度の規模から利用を開始しましたが、現在では全社員の半数にあたる約500ユーザーが Tableau を活用しています」と言うのは、キオクシア岩手 IT 推進部で IT 推進担当 主務を務める広内 翔 氏 。「最終的には現場作業員を除く全社員に、Tableau を展開したいと考えています」。
現在では全社員の半数にあたる約500ユーザーが Tableau を活用しています。最終的には全社員に、Tableau を展開したいです。
Tableau 選定の理由について
直感的な操作、サポート、開発が容易なことを評価
それではなぜ提案された3つの製品の中から、Tableau を選んだのでしょうか。大きく3つの理由があると広内氏は説明します。
第1は画面を直感的に操作でき、多様なデータソースとの連携も Prep で柔軟に行えることです。「扱うデータ量が多いため、フィルタリングの容易さは特に高く評価しています。またドリルダウンなどの操作も、他の BI 製品に比べて柔軟に行なえます」。
第2は情報提供とサポート体制の充実です。わからないことはある程度まではネットで調べることができ、それでも解決しない場合には Tableau 社に問い合わせることで、解決できるのだと言います。このような利点をさらに享受するため、ユーザーが500名に達した2021年11月には、プレミアムサポートも契約しています。
そして第3が、開発が容易なことです。「私は入社1年目の夏から Tableau に触れていますが、プログラム未経験でも2週間位でダッシュボードを作れるようになりました」と言うのは、キオクシア岩手 IT 推進部 IT 推進担当の八重樫 汐南 氏。事前に簡単なトレーニングを受けていれば難しいことはほとんどなく、楽しみながら開発を進められると語ります。
経験の少ない人でも、すぐにダッシュボードを作成できます。データをどう加工して表現すればいいのかがわかりやすいのです。また提供したダッシュボードを使って、ユーザー側で二次的な加工ができるのもいいと思います。
Tableau の導入効果について
資料作成時間が削減され意思決定がスピードアップ
スマートファクトリーで Tableau を活用することで、次のような効果が生まれています。
報告資料作成時間の削減
「すでに製造現場のデータをリアルタイム収集するシステムは存在していましたが、以前はそのデータを Excel で集計して日報を作成していました」と広内氏。そのために毎日2~3時間が費やされていたと振り返ります。「現在ではそのための多くの作業が不要になり、報告資料作成の時間は 78 %削減されています」。
意思決定の精度・スピードの向上
現場で問題が発生した時の意思決定スピードも向上しました。以前は作成された資料を元に数十人の関係者が集まる必要がありましたが、今ではダッシュボードを見て議論ができるため、集まらずに意思決定を行えます。また同じデータを見ているため、議論の精度も向上しました。対応に要する時間はケースバイケースですが、以前に比べて 1/2 ~ 1/3 になっていると言います。
データドリブン文化の醸成
Tableau を日常的に使うことで、社員のマインドも変化しつつあります。「まずはダッシュボードで状況を確認し、そこから日々の業務を始める人が増えています」と安藤氏。ダッシュボードの提供は製造部門以外からも引き合いが来ており、経理部門でも一部の社員が活用を始めていると言います。「他にもファシリティの電力分析などに使いたいといった話が出ています。将来はこのような企業文化を、他のグループ企業にも広げていければと考えています」。
製造現場だけではなく、施設管理や経理など、Tableau の横展開を進めていきたいです。また複数のダッシュボードを束ねたより上位のダッシュボードを作成し、問題の把握と判断をより簡単に行える仕組みも作り上げたいと考えています。
今後の展開について
より広範な情報を取り込み、社員の自立的な成長を支援
現在は工場の中の装置データを可視化していますが、今後は巨大な化学プラントなどのインフラデータや意思決定に必要な情報をもっと Tableau に取り込み、経営判断に役立てていきたいと柴山氏。将来的には、協力会社等の外部企業ともデータに基づく会話をし、外部的な経営判断もできるようにしていきたいと語ります。
その一方で Tableau の存在は、社員が自立して成長できる環境の実現にも、大きな貢献を果たすはずだと言います。「当社には若い従業員が多いのですが、半導体製造は様々な事象が絡み合う複雑で難しい仕事なので、短時間でマスターすることが困難です。もちろん社内教育や先輩から教わることになるのですが、それではスピードが間に合いません。しかし Tableau のような仕組みがあれば、スキルが十分でない人でも、適切な判断を下しやすくなります。このような仕組みがさらに拡充していくことに期待しています」。
工場の中の装置データを可視化だけでなく、今後は巨大な化学プラントなどのインフラデータや意思決定に必要な情報をもっと Tableau に取り込み、経営判断に役立てていきたいです。
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