Tableau を活用した金融業界向けデータ活用サービス「D-reel」|野村総合研究所
顧客が腹落ちする BI 提案が可能、利用企業のビジネスにも貢献
導入の背景
金融業界のデータ活用に先手を打った「D-reel」
ホームページの訪問履歴や CRM に記録された接触履歴、保有資産の状況など、顧客やリードに関する膨大な情報を蓄積している金融業界。
これらのデータを有効活用し、顧客への提案や金融商品の開発につなげていくことは、今後のビジネス成長において重要な鍵になると言えます。
このようなニーズに先手を打つ形で「D-reel」というサービスを提供しているのが、株式会社野村総合研究所(以下、NRI )です。D-reel とは、顧客企業や顧客グループから NRI の DWH にデータを預かり、そこに蓄積したデータを様々な形で分析できるようにする、リテール営業業務向けのデータ活用プラットフォームです。
「D-reel の検討を開始したのは 2016 年から 2017 年にかけてでしたが、その頃はまだ金融機関におけるデータ分析が、売上向上に貢献するというイメージがありませんでした」と振り返るのは、NRI 証券デジタル事業推進部で課長を務める田所 奈美 氏。実際に Python や R を使ったデータ分析やモデル化も検討されましたが、それを社内で使いこなしてサービス化できる自信もなかったと語ります。
このようなハードルを乗り越える 1 つのきっかけとなったのが、Tableau との出会いでした。これなら比較的簡単に使いこなすことができ、ビジュアライズの表現力もサービス化に対応できる、十分に高いものだと評価されたのです。
Tableau の導入・運用環境について
最小規模でスタート、現在は金融機関会社 60 社以上が活用するサービスに
2018 年 7 月には D-reel におけるTableau の採用を決定。まずは最小限の規模でサーバー環境が整備され、そこでTableauServer を動かし、顧客企業からアクセスできる環境を整備します。ここでまずは、中小証券会社に対してサービスの提供を開始。その後、D-reel の評価を耳にした証券会社が続々とサービスを利用するようになり、最近では大手銀行も顧客企業として名を連ねるようになっています。
現在提供しているサービス内容は、以下の通りです。
1.DWH の代替
2.資産情報残高ダッシュボード
3.経営ダッシュボード
4.銀証連携高度化に向けたデータ分析
5.セールス業務支援や業務効率化に向けたデータ分析
6.本社向けデータ利活用
これらのサービスを実現するため、Tableau で作成されているダッシュボード(Viz)数は、約 30 に上ります。その中には、実績管理や営業員評価、顧客基礎分析などのテンプレートが含まれています。また実績管理・営業員評価をベースに、AI 分析モデルで算出した需要予測値によって営業員の生産性向上を図る、といったことも可能になっています。
「ダッシュボードの開発はアジャイル型で行っており、2 週間サイクルのスプリントによって、2~3 か月でリリースしています」と田所氏。定型的なダッシュボードだけではなく、顧客の要望に合わせたダッシュボード開発を行うことも多く、データ分析を NRI と一緒にやりたいという金融機関も増えていると言います。「現在では利用企業数は約 60 社に上っております。2021 年にはサービスの黒字化も達成しています」。
Tableau 選定の理由について
柔軟な認証機能と金融以外での実績も評価
Tableau の採用ではビジュアライズの表現力が高く評価されていますが、選定理由はそれだけではありません。他にもいくつかの評価ポイントが挙げられています。
その 1 つが認証機能です。金融機関向けのサービスは求められるセキュリティレベルが高い上、同じ企業向けでも部署によってアクセス権限が異なり、認証も複雑になりがちです。Tableau の認証機能とアクセス制御機能は極めて柔軟性が高いため、このようなニーズにも問題なく対応できたのです。「金融機関に適した認証・アクセス制御を行えることは、D-reel を提供する上での絶対条件でした」(田所氏)。
また、金融以外の産業界で高い実績があることも評価されました。「金融商品の取り扱いは、金融業界だけではなく様々な業界へと広がっています」と田所氏。D-reel を構築する際も金融業界だけではなく、それ以外の業界での利用も視野に入れるべきだと考えたと言います。
さらに、顧客のことをしっかり考えた定期的なアップデートや、アップデートの際の事前の情報提供、企業姿勢から感じられる将来性の高さも Tableau の魅力だと指摘します。
「これは結果論になってしまいますが、Salesforce と統合されたことも利点の 1 つです。金融業界では Salesforce を導入しているケースが多く、Tableau であれば提案時の話も早いからです」。
Tableau の導入効果について
腹落ちする BI 提案が可能、利用企業のビジネスにも貢献
D-reel の分析・可視化基盤に Tableau を採用したことで、次のような効果が生まれています。
腹落ちする BI 提案が可能
D-reel を活用した BI 提案を行う際に、Tableau のダッシュボードでデータを可視化した画面を、その場で見せることができます。そのため「顧客がきちんと腹落ちしやすい形」で提案することが可能です。Tableau のダッシュボードは短時間でカスタマイズできるため、顧客の話を聞いてすぐに、その内容に沿った形で可視化して見せる、といったことも行われています。
D-reel のファンの増大
Tableau はビジュアライズの表現力が高いだけではなく、操作も直感的に行なえます。またデータ分析担当者だけではなく、データ分析を専門としない決裁者にとってもわかりやすい、という特徴もあります。そのため「D-reel を一度使うとファンになるユーザーも多い」と田所氏は述べています。
顧客ビジネスへの貢献
D-reel によるデータ分析が、顧客のビジネスに貢献している事例も、すでに登場しています。その一例が、地方銀行の証券子会社のケースです。ここでは、D-reel のダッシュボードを日常的に見ている営業担当者の新規資金導入額が、そうではない営業担当者に比べて 2~3 倍になっているのです。「データ分析は売上に貢献できる」ことが、はっきりと示されていると言えます。
Tableau を使いこなせるようになると、お客様が課題としているビジネス課題をデータから自分が思ったようなビジュアライズが可能になります。スキルさえあれば、見やすくきれいな画面を、自由自在に作成できるのです。
今後の展開について
目指すのは業界横断型のデータ分析インフラ
すでに金融業界の中で、確固たるポジションを獲得しつつある D-reel 。しかし NRI がD-reel で目指すのは、さらに大きな世界です。
「『デジタルは自分たちのビジネスを表現するツールになる』という意識を持たれる方が、D-reel のユーザー様の中で増えています。この意識は金融業界だけではなく、より普遍的に広げていけるはずです。今後は金融業界だけではなく、他の業界にもユーザー企業を拡大し、業界横断型のデータ分析インフラにしていきたいと考えています」。
2030 年の D-reel の目標売上額は、2022 年の 3~4 倍を目指すと田所氏。最小規模でスタートした D-reel の挑戦は、着実に大きな花を咲かせつつあるのです。
※ 本事例は2022年8月時点の情報です
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