リスク管理に必要なデータ分析ツールをTableauへと移行|みずほ証券株式会社
開発コストの削減
リスク分析の高度化
導入の背景
『One MIZUHO』のスローガンのもと、銀行・信託・証券の一体運営を推進するみずほフィナンシャルグループの総合証券会社として、グループ全体の成長をけん引しているみずほ証券株式会社。その中で、市場リスクや信用リスクのような、あらゆるリスク管理を担っているのがリスク統括部です。
「リスク統括部の役割は、当社を取り巻くさまざまなリスクを適切に管理することですが、その業務はデータ分析と不可分な関係にあります」。このように語るのは、みずほ証券 リスク統括部で部長を務める齋藤 誠 氏です。「そのため以前からエンドユーザーコンピューティングの一環として、分析用のRDB の開発・管理を行ってきました」。
以前はRDB にデータを格納し、それを独自開発したExcel シートやWeb サービスへと抽出することで、レポートを作成していたと齋藤氏。しかしこのようなやり方はいくつかの課題を抱えていたと振り返ります。
「Excel で作成したレポートはスタティックなものであり、レポート上の特定のデータを深掘りしたい場合にはその都度、RDB にSQL を発行する必要がありました。またWeb サービスは外部ベンダーに開発を依頼しており、コストがかかることも問題でした」。
開発コストを抑制しながらより動的なレポートを作成するにはどうすればいいのか。この問いへの答えを見つけ出すため、2015 ~2016 年にかけてセルフBI に関する調査を実施。その結果採用されたのがTableauでした。
今ではTableau のダッシュボードによって、リスク管理レポートがいつでも見られます。また過去の情報を参照したり、特定の検索キーでデータをフィルタリングするといったことも、レポート上で簡単に行なえます。これによって自分の作業や議論を中断することなく、タイムリーにデータを確認して判断を下せるようになりました
Tableau の導入・運用環境について
Tableau の採用を決めたのは2017 年上期。ここで社内申請を行い、2017 年10 月から活用を開始しています。まずは1 年間の実証実験が行われ、Tableau が従来のExcel やWeb サービスの代替になりうるかを検証。その結果を受け、リスク統括部全体への展開が行われました。
Tableauで分析されているデータは、ポジション情報やマーケット情報、リスク指標に関する情報など、リスク管理に必要なデータ全般です。これらのデータは複数のRDB で管理されており、Tableau Prep Conductor によってhyperファイルとして抽出、これをTableau Server にパブリッシュしています。またダッシュボードはリスク統括部内の特定チームがTableau Desktopで作成し、Tableau Server に展開しています。
ユーザー数は約1,000 名。その多くはリスク統括部を含むリスク管理グループとフロント部署のメンバーです。主な用途はリスク管理のための定形レポートの作成ですが、スポット的なリスク分析でも活用されています。
「当初は従来のExcel やWeb サービスの代替と見られ、一部のユーザーからは使い慣れたツールからの移行への反発もありました」と齋藤氏。これに対して小さな実績を積み重ね、ボトムアップ的にTableau へと切り替えていくことで、次第に好感されるようになったと言います。「やはり大容量データをインタラクティブに分析できることが、高評価につながったようです」。
このような流れを加速するため2019年4月には、ExcelのレポートをTableauへと切り替えるためのチームも新設。Tableau を使える人材を増やすための勉強会も開催しています。これによってボトムアップから、トップダウンでのTableau 化を推進。2019 年10 月頃にはリスク管理に関するほとんどのレポートが、Tableau に切り替わっています。
Tableau 選定の理由について
それではなぜセルフBI としてTableau が選ばれたのでしょうか。齋藤氏は「大きな理由はBI ツールの中で最も使われている製品だから」だと説明しますが、他にも以下の3 つの理由を挙げています。 第1 の理由は直感的に使え、専門的なスキルやトレーニングが不要なことです。慣れるまでの時間が短く、文字通り「セルフサービス型」でデータ分析できる点が評価されたのです。
第2 はインタラクティブなダッシュボードが作成できること。レポート上の特定のグラフや数値を、その場でドリルダウンしていくことが可能です。これによってデータの背後を深掘りすることが容易になり、より高度な分析を行うことが容易になります。またダッシュボードの変更も簡単に行えるため、走りながら改善を進めていくといったことも容易です。
そして第3 の理由が、ダッシュボードをWebブラウザで閲覧できることです。「Excel レポートはファイルをメールで配信する必要がありましたが、Tableau はその必要がありません。レポート配信の手間が省ける上、常に最新のレポートを参照できます」(齋藤氏)。
Tableau の導入効果について
データ分析ツールをTableau へと移行したことで、以下のようなメリットが得られています。
開発コストの削減
レポート類の大部分をTableau に切り替えたことで、レポート作成のための開発を外部ベンダーに依頼する必要がなくなりました。Tableau 以外の要因もありますが、外部ベンダーに費やすコストはTableau 導入前に比べ、2 ~ 3 割削減されています。今後も業務プロセスの見直しなどによって、これをさらに2 ~ 3 割削減することが目指されています。
リスク分析の高度化
Excel のレポートはスタティックであり、スプレッドシートに貼り付けられるデータ量も限られていました。そのためRDB に精度の高いデータが存在していても、集計した上でレポート作成を行う必要があり、データのスライス&ダイスを高精度で行うことは困難でした。これに対してTableau では、hyper ファイルを活用することで精度の高いデータ抽出を行うことができ、インタラクティブなダッシュボードを作成できます。これによって高精度なスライス&ダイスを効率よく行うことができ、リスク分析の高度 化が可能になっています。
リスクレポートの改善
Tableau は新たなレポートの作成や、そのメンテナンスも容易です。そのためレポートの改善も進みやすくなっています。ユーザーが独自に作ったレポートの中には、グローバルなエクスポージャー(リスクの度合い)を世界地図にマッピングするといった、直感的に理解できるようビジュアルに工夫を凝らしたものもあると言います。
今後の展開について
現在のTableau 活用はリスク管理グループが中心になって進められていますが、他の部門での利用も広がりつつあります。
「Tableau をリスク管理以外のデータ分析で活用しようという動きもすでに始まっています」と齋藤氏。その一例として、勤務管理データをTableauで分析する、といった取り組みがあると語ります。
「マネージャーとしては人事管理や勤務管理がTableau のダッシュボードで行えれば便利なので、人事部に対してもこの取り組みを紹介し、全社展開に向けた検討をお願いしています。他にもTableau が適用できる領域は幅広く存在するはずです。Tableau を活用したデータ分析のカルチャーを、会社全体に浸透させていければと考えています」。
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