AI ソリューションは、障壁を下げるとともにビジネス上の明確な問題の解決に寄与して、さらなる成功を収めるでしょう

Vidya Setlur

Tableau、Tableau Research ディレクター

Vidya Setlur は Tableau Research ディレクターです。データビジュアライゼーション、マルチモーダルインタラクション、統計、応用機械学習、自然言語処理などの分野で、リサーチサイエンティストのチームを率いています。2005 年に、ノースウェスタン大学でコンピューターグラフィックスの博士号を取得しました。以前は、Nokia Research Center で主席リサーチサイエンティストを務めていました。現在、情報検索や人間の知覚、認知科学の概念を組み合わせて、ユーザーが利用している環境でシステムを効果的に操作できるようにするための研究に携わっています。

これまでの道のり

現在、私たちが享受しているのはデータとテクノロジーの黄金時代であり、その勢いは留まる気配がありません。人工知能 (AI) テクノロジーは向上し続け、機械学習 (ML) モデルは数兆行のデータを処理し、自然言語処理 (NLP) は人間の意図を理解する方向へ歩みを進め、アルゴリズムは高速化の一途をたどっています。単純な繰り返し作業はますます自動化されつつあり、人間が最も得意とする批判的思考や文脈に沿ったデータ理解に集中できるようにする、新たな可能性が生み出されています。

イノベーションが加速するのに合わせて、AI への投資とその導入も広がりを見せており、Fortune 1000 企業の 99% が今後 5 年間にデータと AI への投資 (英語) を計画しています。ビジネスや IT のリーダーは、自社が将来的に生き残るためにそうした投資が不可欠だと考えているためです。しかし、AI ソリューションの長期的な成功と持続可能性のためには、考慮するべきさまざまなポイントがあります。増加するデータ量、AI テクノロジーの保守費用、高度に専門化された職務への人員配置の難しさ、AI の先行導入から幅広い普及への規模拡大などです。

企業は、イノベーションや顧客に提供するサービスの向上のために、さらに努力を重ねる必要があることを認識しています。AI は機会を広げているものの、大半の投資はその潜在的な価値をいまだに実現できていません。2022 年に AI テクノロジーは、人が批判的思考とデータドリブンな意思決定を行えるように支援、強化する人間拡張を通じて、新たな水準の成功を達成します。分析環境と AI をチームの支援要員として捉えましょう。

データカルチャーとデータリテラシー (データを探索、理解しデータを利用して意思疎通を図る能力) は、組織が AI や機械学習に関する戦略と見通しを得るためにも役立ちます。変革管理や人材開発に対するそうした取り組みは、組織が競争力をどう維持するか、人間拡張の範囲をどう管理するかに影響を及ぼします。その始まりとなる問いは次のようなものです。

  • AI テクノロジーで完全に自動化される業務は何か?
    • 人を解放して、より高度な業務に取り組めるようにする自動化の一例として、基礎的な翻訳や画像編集が挙げられます。写真を手作業で編集して背景を変えるのに何時間もかけるのではなく、光やブレンドの技法を処理する AI を活用した、標準的な画像編集テクノロジーを使って編集することができます。このような自動化ツールは、新たな水準のクリエイティビティを推進します。
  • 半自動化され、人の関与と解釈が必要になる業務は何か?
    • 人が文脈に沿ってデータドリブンな意思決定を行えるようにするために、実用的なパターンとインサイトを抽出する AI の例として、次のようなものが挙げられます。
      • 気候モデルやパンデミックモデルの重み付けをより的確に行うために、機械学習の手法が応用されており、研究者が政策決定の支援としてトレンド、影響、パターンを理解するのに役立っています。
      • マシンが、ユーザーの意図を深く理解するための自然言語処理や機械学習のアルゴリズムを用いて、未分類の音声データ (顧客の電話など) を検証し、妥当なカテゴリーやラベルを割り当てることが可能です。そうした記号表現と意味により、人は次に取るべき行動を知ることができます。

共通の行動や信念、データスキルを持つことによっても、AI ソリューション拡大の能力は高まり、持続可能な導入とイノベーションが支えられます。ガートナー社は先ごろのレポート (英語) で、「人工知能と機械学習の普及で、最大の課題として挙げられたのはスキルの欠如」であることを明らかにしました。その理由は、人材と AI 手法の開発への投資は継続的に行われるものであり、AI テクノロジーと歩調を合わせて変化し続けるためです。全員が一丸となり適切なスキルを身につけることが、AI の概念実証がスケーラブルで実用的なアプリケーションに発展するか、完全な失敗に終わるかを分けるかもしれません。

今後の展望

IT リーダーとの連携により、ビジネスリーダーはビジネスの文脈に根差したデータと AI の戦略を推し進めるチャンスが得られます。AI テクノロジーが今日的で保守しやすく、説明可能であるためには、人に力をもたらすとともにビジネスの戦略や目標と結びついていることが必要です。今後、AI ソリューションは概念実証モデルから、企業別、業界別のユースケースへの広範な導入へと移行していくでしょう。

さまざまな業界が斬新な形で AI を開発、利用しています。KPMG 社は先ごろ行った調査 (英語) で、5 つの業界 (小売、運輸、医療、金融、テクノロジー) を対象に AI 開発について調べました。その結果、「医療業界の回答者の 91% で、AI により患者の医療アクセスが向上している」ことがわかりました。また、ほとんどの企業はサプライチェーンを人の手で管理していますが、Harvard Business Review 誌 (英語) によると、「今後数か月、数年で AI を導入する企業は競争力を大きく向上させる」としています。

クラウドコンピューティングによって、AI はコストが一層手頃で利用しやすくなり、エクスペリエンスや業界の全体でより優れたイノベーションにつながっています。また、ビジネス成果の一層の重点化に伴い、異なる AI 手法を組み合わせてさらに高い成果を引き出すソリューション (コンポジット AI (英語) とも呼ばれる) が、人を支援するため、特にインテリジェンスを特定のワークフロー用に「調整する」ために登場するでしょう。

共有するスキルやマインドセット、価値観、すなわちデータカルチャーとデータリテラシーは、AI で成功を収めるのに欠かせない、人がデータサイエンスと分析のより高度な新しい業務をこなす能力を伸ばします。今後はそれらにより、ワークフローに命が吹き込まれて一層効率的になるでしょう。

アドバイス

1.AI をチームスポーツと捉えましょう。人がかける時間の短縮、スキルや専門知識の強化による人間拡張に、最も向く業務と部門を見極めてください。まずは、顧客の抱えるニーズと問題点を調べて、AI ソリューションで顧客にとっての価値を高められる箇所を把握します。概念実証や先行導入を行う価値があるかどうかを判断するために、次の問いに答えてみましょう。

  • 同様のニーズを持つ顧客や同じ問題を抱える顧客はどのくらいいますか?
  • 問題はどの程度の頻度で発生していますか?
  • 問題は AI テクノロジーで解決できますか?

2.概念実証から移行して拡大するために、ビジネスでのユースケースと成功の鍵となる要素に重点を置きましょう。

  • 実際のビジネス上の問題に対するソリューションと設定された目標を結びつけることで、意図や文脈を理解する AI を推進し、ソリューションの価値を実現します。
  • AI が力をもたらし障壁を下げることのできる箇所を把握します。一連の製品のあらゆる側面で AI の利用を試みることは避けましょう。リソースが分散されすぎるために拡大が難しくなります。
  • 「見た目」だけの非現実的なプロジェクトに注意してください。魅力的に見えても、概念実証より先に進むことはめったにありません。また、AI プロジェクトの時間やスコープに対して現実的な見通しを立てることで雑音を消し、予算や時間、高度な技術を持つ人員、インフラストラクチャなどあらゆるリソースのバランスを取りましょう。

3.データリテラシーに投資して、スキルアップと人材開発を図りましょう。

  • データ品質が低ければ、的確でも効果的でもない AI ソリューションになります。一方、データリテラシーのある人材はデータ品質に関する問題を改善し、的確でタイミングに合った妥当なデータを使って AI や機械学習、自然言語処理などのアルゴリズムとモデルの開発、トレーニングを行うことができます。
  • 組織内で開発したものかサードパーティーが提供するものかにかかわらず、データの基礎的なトレーニングでもビジネスユーザーは、自身の疑問に答えを出すために必要なスキルを身につけられます。これにより、高度な分析やデータサイエンスを担当するチームに対して、分析に関する単純な依頼や得られるものの少ない依頼の件数が減り、チームは価値の高い大規模なプロジェクトに時間を充てられるようになります。

責任ある組織はエクスペリエンスやビジネス成果を改善するために、倫理的な利用のポリシー策定、検討委員会の設立などを積極的に行うようになるでしょう

Mark Nelson

Tableau プレジデント兼 CEO

Mark Nelson は Tableau のプレジデント兼 CEO として会社のビジョンと方向性を定め、戦略、製品開発、ビジネス活動、運営を監督しています。プレジデント兼 CEO に就く前は、Tableau の製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントを務め、世界に広がるお客様を支援するべく、業界をリードする Tableau 分析プラットフォームの拡張と深化に寄与していました。

これまでの道のり

人工知能 (AI) の普及が急速に進み、世界規模の問題も重なっていることから、データや AI の倫理的な利用に対する画一的なアプローチというものはもはや存在しません。組織にとっては、現在急速に進化しているデジタルの世界で、データと AI の責任ある開発、利用の方法を積極的に規定するチャンスです。公正で的確な AI ソリューションの構築は、あらゆる企業にとって市民としての義務であり、今や世界中の立法者が重視しています (英語)。

信頼性と透明性は今やかつてないほど、イノベーションや成長、顧客関係の基盤としての役割を果たす必要があります。最近のデータ危機から、バイアスのかかった顔認識や人種差別的なローン設定など、テクノロジーが人に危害を及ぼす可能性が垣間見えました。こうした危機から、企業がデータをセキュアに責任を持って開発、利用するという社会一般の期待につながる可能性があります。シスコ社が 2021 年に行った調査 (英語) では、「回答者の 72% が、組織は AI の責任ある倫理的な利用に対してのみ義務を負うと考えている」ことが明らかになりました。

倫理と誠実さを持って前進するために、データと AI の透明で責任ある利用に対する企業や行政の取り組み、そしてアカウンタビリティが高まるでしょう。

今後の展望

責任ある組織は、倫理的な利用の正式なポリシー、サードパーティーのエキスパートによる監査、組織内の検討委員会の設置などにより、責任ある利用を吟味、検証する画期的な手法に乗り出して積極的に開発するでしょう。そうした倫理的なイノベーションによりエクスペリエンスが改善され、リスク管理と価値実現 (英語) で一層高い成果が得られるようになります。

組織が倫理的な利用の責任に対処するのに伴い、人間の判断力と専門知識を強化する、透明な AI と機械学習 (ML) のソリューションやエクスペリエンスが増えることが予想されます。また、それはビジネスの目標とワークフローにも直接結び付けられるようにもなり、バイアスなど説明可能性に関係するリスクが軽減されます。現実の人間に危害を及ぼす可能性とともに、「倫理的負債」のようなダウンストリームでの負のリスクを持つエラーを技術的負債として生み出す可能性もある、バイアスのかかったアルゴリズムやデータセットに組織は対処し始めるでしょう。

今後、危害を及ぼさずにイノベーションを推し進めるために、公私の組織は連携して倫理ポリシーの改革に取り組みます。テクノロジーパートナーも、意思決定でデータを活用する必要に迫られている行政機関にアドバイスするようになります。そしてまたテクノロジー企業は、自社テクノロジーを行政機関などを含めた誰もが責任を持って利用していることを保証するために、態度を明確にするでしょう (たとえば Salesforce では、平等への取り組みの一環として顔認識が禁止されています)。

AI による業務の自動化や、AI で連携した質の高い意思決定など、あらゆるユースケースで知らなければならないのは、ミスの回避、倫理的な意思決定、データの理解のためにマシンが何を行っているかということです。2022 年も、この点が組織にとって極めて重要であることに変わりはありません。

しかし、データの理解、そしてデータの責任ある利用のためには、基本的なデータリテラシーすなわちデータスキルが欠かせません。また今や、データリテラシーの欠如が不要なリスクを生じさせる段階にまで達しました。倫理的なデータとテクノロジーを日々の生活や意思決定の一部にするには、やるべきことが山積していますが、投資するだけの価値はあります。最終的には、あらゆる場所のあらゆる人にとってより倫理的で公平な未来が実現されるでしょう。

アドバイス

1.データと AI の倫理ガイドラインを用いて、データやリスク管理のポリシーを設計しましょう。米国イギリスEU (すべて英語) などで導入済みか原案段階の規制とデータ戦略では、バイアスのかかった違法な個人データ利用から人々が保護されています。倫理を持って前進するために、倫理行動規範を規定し、先を見越して法令に対処し、コンプライアンスを遵守して、リスクを軽減してください。

2.組織内に倫理委員会を設けるかサードパーティーのスペシャリストに依頼して、検討と監査を行いましょう。AI 倫理委員会は、変化し続ける規制を遵守できるよう組織を支えるとともに、データのバイアスと的確性に一層対処するための革新的なソリューションを構築、吟味します。

3.プロセス全体に人との接点と再検証を織り込みながら、意図的に透明なテクノロジーや説明可能な AI を開発しましょう。データやテクノロジーを人間の価値観や倫理と整合させて、透明性や説明可能性を確立し、信頼できるエクスペリエンスを確保します。開発サイクルの全体で倫理について積極的に検討を重ねることで、技術面のキャッチアップを延々と繰り返す事態を避けてください。

4.データスキルのトレーニングなどが用意された、健全なデータカルチャーを構築しましょう。データリテラシーを改善すると、データ品質の低さへの対処に加えて、AI 開発の成功と拡大能力を妨げる、適切ではないデータの収集や適切ではない質問に伴うリスクにも対処できるようになります。データリテラシーのある人材は、倫理的なデータ利用と AI を実現し維持するためのデータカルチャーの構築に欠かせません。

未来の働き方で成功するために、組織はデータリテラシーの定義を拡張し、人材に投資して、データカルチャーを強化しています

Wendy Turner-Williams

Tableau 最高データ責任者 (CDO)

Wendy Turner-Williams は、Tableau のエンタープライズデータ戦略、データプラットフォームとサービス、データガバナンスとデータ管理の成熟度、データリスク、データリテラシーを統括する責任者です。自身のチームとともに、Tableau のデータドリブンなビジネスイノベーション、変革、オペレーショナルエクセレンスを推進しています。20 年以上にわたってさまざまな分野で責任者を務めた経験を持ち、最近までは Salesforce で情報管理 & 戦略エンタープライズプログラムの指揮をとっていました。

これまでの道のり

データが根本的な差別化要因である市場では、データリテラシーがデータやテクノロジーへの投資の価値を引き出すための鍵となります。そして、データリテラシーの鍵を握るのがデータカルチャーです。今後 1 年、競争力のある組織は、データ利用を重視して実践するための共有された組織文化とマインドセットを育む必要性を認識するでしょう。スキルトレーニングを越えてデータリテラシーの範囲を拡張して、データの仕組みや、ビジネスでデータをどう活用できるかに関する基礎的な理解も含めるようになります。そして、組織は将来に備えた人材開発に投資する過程で、トレーニングやスキルアップのためにサードパーティーの組織と連携します。

今後の展望の前に、データが、そしてデータスキルが極めて重要な理由を見てみましょう。

テクノロジーと AI への投資は拡大しつつあり、データを重視したそのような投資の価値を実現するには人材開発が不可欠です。PwC 社の予測によると AI は世界経済を押し上げ (英語)、その額は 2030 年までに 15.7 兆ドルに上ります。また、労働の自動化は予想より急速に進んでいると、世界経済フォーラムによる仕事の未来レポート (英語) は述べています。自動化により、2025 年までに 9,700 万人分の新たな仕事が創出される一方で、8,500 万人が仕事を失います。現在の仕事を維持する人も、半数は今後 5 年間で新しいスキルを身につける必要があるでしょう。

職場でも社会でもデータスキルの需要は高まっています。2021 年に最も需要の高いスキルとして、人事リーダーたちはデータスキルを (英語)、つまり分析の能力とデータサイエンスをトップに挙げました。社会的な対話でデータがますます重視されるに従い、誰もがデータサイエンティストである必要はないものの、基礎的なデータ精通度と分析スキルは求められるようになるでしょう。

しかし、データリテラシーのある人材の価値を引き出すには、手間をかける必要があります。学校から職場まで、データスキルに格差があるだけではなく、データリテラシープログラムも欠けています。83% の CEO が一層データドリブンな組織になることを望んでいますが、自身がデータリテラシーを備えていると考えるデジタルネイティブは 43% (英語) に留まります2。Forrester 社によると、データスキルに取り組んでいる教育機関は半数に満たないのが現状です3。また、数多くの企業が短期的なアプローチを取り、データリテラシーやデータカルチャーへの投資ではなく、当座のスキル格差を埋めるための人材採用を行っています。

実際に行われているプログラムはツールやテクノロジーに偏重しており、データがビジネスでどう生成、利用、管理されているかを基本的に理解させるには至っていません。

今後の展望

競争力ある組織はデータスキルに価値を見出しているうえ、将来に備えた人材開発はデータスキルやツールのトレーニングに留まらないことも認識しています。そこで、必要不可欠なデータリテラシーを人材に浸透させるべく行動を起こすでしょう。

教育機関は、さまざまな科目のカリキュラムにデータリテラシーを組み込みます。そのメリットは明白です。データスキルに取り組む教育機関はそうではない大学と比べ、半年間の学生就職率が 11.5% 高いことが明らかになっています3米国数学教師評議会 (英語) は米国教育省に対して行った 2021 年のプレゼンテーションで、データスキルが「将来のために不可欠」であると述べ、幼稚園に上がる前から高校を卒業するまでのデータリテラシー教育に対する、有意義で包括的、そして領域横断的なアプローチの再構築を呼びかけました。

組織はデータリテラシーへの投資を拡大していきます。ツールの使い方や、テクノロジーがビジネスにもたらすメリットを知る方法を教育することが、テクノロジーへの投資で極めて重要な要素であると認識する組織はますます増えていくでしょう。米国国務省がエンタープライズデータ戦略で指摘 (英語) したように、「これはチャンスであるばかりでなく、米国が世界の舞台で外交上の強みを維持するために不可欠でもある」のです。

組織はデータスキルの定義を拡張して、ビジネスやテクノロジーのプロセス、インプット、アウトプットも含めるとともに、データカルチャーに重きを置くようになります。ツールやプラットフォームのスキルを越えたところに目を向けて、批判的思考や分野の専門知識の応用によるビジネス上の問題の解決を重視するでしょう。この発想の転換の鍵となるのは組織文化です。データリテラシー、つまりデータを探索、理解しデータを利用して意思疎通を図る能力が、データカルチャーの重要な柱です。データリテラシーとデータカルチャーを並行して育成すると、成果が上がります。TDWI 社のレポートによるとデータリテラシーのある組織は、リテラシーのレベルが低い組織やリテラシーのない組織と比べて、「連携と成果重視の組織文化を持ち (92% 対 46%)、[分析上の] 目標が経営目標と結びつけられている (73% 対 40%)」ことがわかっています。確固としたデータカルチャーを持つ組織では、強力な連携や競争力などが得られています。

組織はまた、独力では進めないということを受け入れるでしょう。独自の教育プログラムを実施するため、あるいは変化のペースについていくための、リソースや組織内の専門知識、能力を持たない組織は、データリテラシーをコミュニティで取り組むものと捉えるようになります。そして、臨機応変で従来とは異なるアプローチを取り入れ、サードパーティーのトレーニングプログラムを導入します。

アドバイス

1.データカルチャーとデータリテラシーを並行して育成しましょう。それぞれの成功は相互に依存しているため、リテラシーのトレーニングと組織文化の転換を組み合わせて投資する価値は見過ごせません。そして、変革は一夜にして達成できるものではないことを忘れないでください。焦らずあきらめず、継続的な取り組みであることを認識しましょう。

  • 共通の目標を設定するため、また持続可能な成功を目指す取り組みを体系化するための枠組みを策定します。
  • 組織全体で用語、スキルレベル、成功指標、プロセスを標準化します。
  • 従業員のやる気を引き出します。データで何ができるかについて関心を高めましょう。
  • データドリブンな意思決定の模範を見せて奨励し、データの価値を実際に示します。
  • ディスカッションや学び、育成の場を設けます。

 

2.将来を見据えて雇用とトレーニングを行いましょう。米国国務省 (英語) はこのように述べています。「[国務省では] データスキルを要件のひとつにして雇用が行われるようになっていきます。データに関するスキルセットは、幅広い重要な職種で不可欠の要素になるはずです。データスキルの格差に対処しなければ、省の雇用は変化していくデータニーズについていくことができなくなるでしょう」。この目標を達成するために、国務省は「あらゆるレベルと場所の意思決定でデータを日常的に求めて重要視し、スムーズに利用する人材と職場に対して、募集、トレーニング、奨励を行って」いきます。これを一般の組織に当てはめると、次のような意味になるでしょう。

  • 雇用の仕方と役割期待を発展させて、基礎的なデータスキルを要件とします。
  • データスキルの取り組みで教育機関と連携し、データリテラシーのある学生を採用します。
  • 既存の人材に対し、データスキルの向上を奨励して推進します。
  • データコミュニティを構築して、継続的な成長や能力開発、連携を奨励します。
  • 社内のトレーニングプログラムへの協力を得るために、エキスパート (データチャンピオン) を把握、採用します。そうしたエキスパートを定着しやすくするために、データドリブンな意思決定の文化を構築します。

 

3.前倒しで対処: 大学の各学部やスキルレベルの全体を通して、データスキルのカリキュラムに投資して推進しましょう。教育の場にいる場合は、データスキルや批判的思考を教えるのに早すぎることも遅すぎることもありません。基礎的なデータスキルを教育のあらゆる段階に組み込んで、一層多くの学生が就職後にデータを利用し理解することができるように育成してください。

  • 分析スキルの育成と批判的思考のスキルをすべての講座に組み込みます。将来のどのような仕事でもデータを使用でき、実際に使用することを教え込んでください。
  • 研究や勉強でデータを活用するよう学生に働きかけます。
  • データの楽しさを教えましょう。実社会でデータがどう現れているかを探り、学生がデータの概念を実感できるようにします。
  • データスキルの価値を伝えます。キャリアの可能性が広がる、データを使って世界を変えられるなどさまざまな価値があります。
  • Tableau アカデミックプログラムで、教員も学生も利用できる無料のソフトウェア、カリキュラム、リソースを入手します。

 

4.データリテラシーや、分析ツールと分析プラットフォームのスキルを、組織全体で育成するためのプログラムに投資しましょう。この取り組みは一朝一夕に終わるものではありません。現在利用しているツールやテクノロジーのトレーニングなどの、短期的なニーズのみに偏重しないでください。データがビジネスにどう価値をもたらすかなど、特定のテクノロジーにとらわれない基礎を教育します。また、不要な手間は省きましょう。可能であれば、基礎 (データ入門など) を組織内で教え、残りは外部のサービスを利用します。

すでにあるものを利用するためにサードパーティーの組織と提携することで、従業員がさらに高度なスキルを身につけられるよう支援します。利用できるプログラムの例として、マサチューセッツ工科大学の応用データサイエンスプロフェッショナル講座ビジネス向け DataCampAvado データアカデミー世界経済フォーラムの技能再教育革命Coursera 社のデータ & 分析アカデミーTest Automation University の無料トレーニングKhan Academy のデータ講座 (すべて英語) などがあります。

1 Gartner®, Maximize the Value of Your Data Science Efforts by Empowering Citizen Data Scientists, Pidsley, David and Idoine, Carlie, 7 December 2021

2 Tableau の後援による IDC ホワイトペーパー. "データカルチャーはいかにしてデータドリブンな組織のビジネス価値を高めるか". Doc. #US47605621, May 2021.

3 Forrester Consulting, Thought Leadership Paper Commissioned By Tableau, The Great Data Literacy Gap: Demand For Data Skills Exceeds Supply, June 2021.

データの持つ戦略的価値の認識が高まることで、組織のあらゆる人にパワーをもたらす、柔軟で統合されたデータガバナンス手法が推進されます

Kate Wright

Tableau 製品開発担当シニアバイスプレジデント

Kate Wright は、開発や製品管理、リーダーシップで 17 年以上の経験を持つ分析リーダーです。Tableau と CRM Analytics の分析エンジニアリング、製品管理、ユーザーエクスペリエンス全体を統括しています。

これまでの道のり

データの価値とその量は、これまでにないほど高まっています。2022 年、データはビジネス成果を得るために不可欠というだけでなく、データがビジネス「そのもの」になります6。組織が革新的な AI ソリューションやクラウドベースのあらゆるものに投資するにつれて、セルフサービスやデータ共有の能力に対する需要は、データプライバシーとデータ利用の規制と並行して高まっています。デジタル化を進めた組織は矛盾に直面します。信頼できる単一の情報源は不可欠である一方で、それを 1 か所に維持することはできず、少人数で管理してセキュリティを確保することもできないという矛盾です。

組織は、柔軟性や権限付与を連携した制御と組み合わせた、データガバナンスやデータ管理に対する新たなアプローチを取る必要があります。イノベーションを起こし、競争力を得て、ガバナンスやセキュリティの要件を先取りするために、成功を収める組織は統合されたデータガバナンス手法を取り入れるでしょう。そのようなアプローチでは、一元的に定義されたガバナンスの標準とローカルなドメイン権限が組み合わされ、全社の幅広いユーザーのインクルージョンによって組織が幅広い分野の専門知識を活用できるようになります。

結局のところ、このデジタルの世界で今日的であるにはデータから価値を引き出す必要があります。しかし、どうすればこれを実現できるのでしょうか? 最高データ責任者を対象にしたガートナー社の最新調査 (英語) で、「デジタルビジネスの取り組みに深く関与しているまたはこれを率いているデータや分析のリーダーの 72%」は、取り組みの加速やビジネス目標の達成に必要な「信頼できるデータ基盤」の構築方法がわからないことが明らかになりました7

データの見つけやすさ、セキュリティ、理解、信頼性を確保するための繰り返し可能でスケーラブルなプロセスがなければ、柔軟性とイノベーションはリスクにさらされます。組織がデータガバナンスを再考しない限り、信頼できるリアルタイムのセルフサービス分析という理想はただの夢に終わってしまうでしょう。

今後の展望

成功するデータガバナンス戦略は常に、信頼を基盤としてきました。2022 年、組織は発想の転換を受け入れ、データのガバナンスと管理に対して一層インクルーシブなアプローチを取るようになるでしょう。

インクルーシブとは、少人数に留まらず大多数の人のために設計されたシステムとプロセスを意味します。データのガバナンスと管理に関して、IT 部門とビジネス部門は対立関係にないという認識のことです。従来のデータ所有者である IT 部門がソリューションにビジネス部門を関与させると、すべての人が共通の目標の下に結束し、イノベーションへの道を開くことができるようになります。

それはどのような状態なのでしょうか? キーワードは開発と拡大です。誰もが自ら行うためのツールを提供しつつ、一元的な対策でリスクを管理しましょう。たとえば IT 部門は、ニーズに合う形でビジネス部門にコントロール権を拡大する一方で、組織全体に影響を及ぼすもの (系列、データカタログ、標準、検証ルール、メタデータ管理、アーキテクチャなど) に対してはガバナンスの基盤を確立します。この適切規模のアプローチにより、信頼性や見つけやすさ、イノベーションを実現しながら、分野のエキスパートが文脈に沿ってビジネス上の問題を解決できるようになります。

全社にデータガバナンスを適用するためには、データリテラシーが欠かせません。誰もが「共通の言葉」を話し、共同のガバナンスに参画しなければなりませんが、もっと根本的にはデータの基礎を理解する必要もあります。透明性と見つけやすさに重きを置くと、情報を見つける場所を組織が 1 か所に統一し続けることで、データは入手しやすくなります。そのため、何が測定されているか、どのように定義されているか、どこにあるか、誰が所有しているかについて全ユーザーが迷わないようにすることができます。この取り組みを成功させると、組織の隅々までデータがどのように流れているか、信頼とセキュリティをどのように維持するかが全体的な視点から理解できるようになるでしょう。

アドバイス

1.現在の段階とこれから向かうべき方向を検討しましょう。利用しているのがどのようなデータかを知り、現在どのような段階にいるかを知る必要があります。組織全体の人々に質問を投げかけて働きかけ、どのようなデータがあるか、どのように利用されているか、重要度はどの程度かを把握してください。何度でも繰り返しますが、重要なのは信頼です。成功するために何が必要かをステークホルダーに尋ねましょう。また、データ管理成熟度 (DMM) プログラム (英語) などのサードパーティーの枠組みを利用して、組織の能力を評価するとともに強みと不足している部分を把握します。

2.パートナーシップのアプローチを取りましょう (ヒント: 信頼が出発点になります)。IT 部門はある部分で厳格に管理する必要があることに間違いはありませんが、すべてを管理することはできませんし、そうすべきでもありません。ビジネス部門をパートナーにしてください。ビジネスユーザーのスキルアップで責任を持ってデータを利用できるようにすることにより、人とプロセスへの信頼を高めるところから始めます。透明なプロセスやセキュリティで保護された最新のデータも、やはり大きな役割を果たします。パートナーシップの価値を組織に幅広く示すには、クイックウィンを積み重ねます。

3.統合を重視しましょう。複数のデータ戦略を同時に実行することはできず、徹底した一元管理の実現は不可能であることを認識する必要があります。ですから、より統合的なアプローチを取ってください。ビジネス部門とのパートナーシップを築きながら、バランスを取って必要な部分を管理することを目指します。また、不要な手間は省きましょう。障壁を下げ、どのようなものが優れているかを深く理解するために、業界で認められている枠組み、たとえば DMM プログラムや、EDM Council によるクラウドデータ管理能力の枠組み (英語) などを利用します。

6 Forrester Consulting, Break Through Data Governance Fatigue: A Framework For Effectiveness And Sustainability, Goetz, Michelle, February 2021

7 Gartner®, Predicts 2022: Data and Analytics Strategies Build Trust and Accelerate Decision Making, Jorgen Heizenberg, et.al, 2 December 2021

8 Gartner®, Modern Data and Analytics Requirements Demand a Convergence of Data Management Capabilities, Guido de Simoni, et.al, 20 January 2021

データは、人々や組織が目を向けられ、抱えている問題を理解させて、支援するはずの機関に働きかけるための言葉となります

Neal Myrick

Tableau、Tableau Foundation グローバル責任者

Neal Myrick は Tableau のソーシャルインパクト担当バイスプレジデントであり、Tableau Foundation のグローバル責任者も務めています。より公正公平な世界を目指してデータ利用を推進することを目的とした、Tableau の慈善活動への投資で指揮をとっています。積極的なエンジェル投資家であり、国際的な保健や発展に関する複数の諮問委員会にも名を連ねています。

これまでの道のり

データは変革のための強力な手段です。Tableau Foundation の NPO パートナーとの長年にわたる連携の結果、Tableau は社会の成員の誰もがデータの力から等しく恩恵を受けているわけではないことに気づきました。完全に代弁するデータというものはほとんどなく、たいていは生きた体験の背景や意味合いが失われています。そのためデータの可能性は損われます。データへの不信感が形成されることもあり、それは自らの声が代弁されていると感じていない個人や集団ではなおのことです。このような信頼の欠如により、代弁されていない集団がデータを使って力や影響力を得ることが妨げられる場合もあります。

もちろん Tableau がすべての答えを持っているわけではありませんが、パートナーとの対話からあるトレンドが見えてきました。それは、実社会の体験に裏打ちされ、コミュニティのアドボカシーと参画を発展させる可能性を持っています。

今日的かつ効果的、そして持続可能なデータソリューションにするには、そのソリューションが代弁し支援する対象のコミュニティと連携して設計する必要があります。実状を変えればデータによって、人や組織が自らにとって最も重要な、複雑で微妙な問題に対処できるようになります。そして、データの公平性は枠組みとして、データがさらにインクルーシブで代弁性が高く、アドボカシーのツールとして効果的であるようにするためのアプローチになり得ます。これは、データの公平性によって形成される、関係するすべてのステークホルダーが共有する当事者意識のためです。

このアプローチは最も力を発揮すると、絶え間ない改善のプロセスの中で、得られる答えと同じくらい多くの疑問をもたらすはずです。このデータは、代弁するはずの体験を表しているか? 代弁するデータにするために、データの収集と分析の方法でほかにできることはないか? 自らの場所にいる対象の人々に伝わり、対抗者ではなくパートナーとして変革への道を歩めるようにする形で、データによるストーリーテリングを行っているか?

データを戦略的資産として捉え、データカルチャーとデータリテラシーを育む組織は、データの新しい強力な用途を見出しています。たとえばデータを使った、新しい方針への着手、既存の方針の見直し、資金提供に関する話し合いなどです。地方自治体や権力を持つ組織に責任を負わせるためのテクノロジーとデータのリソースを、従来持たなかったコミュニティ組織にも、データの利用は拡大しつつあります。現在、ますます多くの NPO や活動家、コミュニティ従事者が、データを戦略的資産として捉えて利用し、データカルチャーを築き、データリテラシーを一段と高めています。

今後の展望

データを戦略的資産として捉えて組織のデータカルチャーに力を注ぐと、政策や、公的機関がコミュニティにどう投資するかについて、効果的な話し合いを新たに始めることができます。データ民主化により、アナリストやデータサイエンティストに留まらず、幅広い人々がインサイトとデータを手にするだけでなく、これを利用できるようになり、これによってデータや分析をアドボカシー活動に取り込むことにこれまで消極的だった組織でも恩恵が得られるようになります。また、NPO やコミュニティ活動家の行っているデータアドボカシー活動が、その闘いの目的である人々の生活に実際のプラスの影響をもたらしている事例も見られます。それに伴って、ほかの場所でも気運が盛り上がりはじめ、「このコミュニティでデータを利用して、変化を起こすために何ができるだろうか」と問いかける声が聞かれるようになっています。

データカルチャーに積極的に取り組み、内部とコミュニティ全体のデータスキルに投資しているさまざまな組織を、Tableau は目の当たりにしています。その取り組みからいくつかのベストプラクティスが生まれており、成功を収めているところは次のような手法を組み合わせています。

  • 適切なデータとリソースを公開して民主化する
  • データを集計しない状態にしてより代弁できるものにする
  • データとあわせて人本位の言葉を使う
  • 従来のデータ提示方法を見直す
  • 人の体験を中心に据えたモデルを使用する

Tableau ソーシャルインパクトプログラムマネージャーの Channing Nesbitt は、データを集計しない状態にする、つまり、平均化や集計を行ったデータのみを使うのではなく、データを分解して多様なフィールドや単位、メジャーを調べることの重要性について、次のように述べています。「一般化され集計されたデータでは、たいてい見落とされたり見えなかったりするようなことを体験しているコミュニティの人々、そしてそうした情報の消失によって直面している課題が固定化あるいは拡大すらしうる人々に、声を与えることができます」。また、ジェンダーや人種、所得のみを見たときより、はっきりした可能性も見えるようになり、各個人 (たとえば住宅ローンを希望する大学院学位を持った黒人女性など) に特有の体験に関する、より細かい情報が生み出されます。集計しない状態のデータによってデータの中に人が一層はっきりと見えるようになり、それによって人々のニーズはさらに満たされるとともに、行政や機関、コミュニティベースの組織の提供するソリューションが改善されるようになります。

こうしたすべての変化の結果、データの的確さとインクルージョンが強化され、データポイントの背後にいる人々の姿も文脈に沿って描き出されるようになります。つまり、コミュニティのあらゆる人々の意見が代弁され、支援となるのです。

一層的確で代弁性の高いデータがあると、実際の体験を検証できるうえ、人々やコミュニティの集団は目標を達成するための力と影響力をさらに持てるようになります。

質の高いデータと、枠組みとしてのデータ公平性の活用によって、人々は対話の開始や捉え直しを行えるようになり、資金提供の要望や政策の変更にプラスのダウンストリーム効果がもたらされます。この枠組みは、行政や機関が目標に向けた進捗状況を評価、追跡するのに役立ちます。その例として、国連の持続可能な開発目標 (英語)、刑事訴追とプロセスに関するデータを共有している米国の地方検事局などが挙げられます。また、コミュニティのステークホルダーが行政など権力を持つ組織に、一層対等な立場で直接働きかけられるようにもなります。

アドバイス

Tableau の最も成功を収めている NPO パートナーの中には、データの公平性を改善するために 1 つ以上の手段を取り入れているところがあります。まだ改善の余地があるリストではありますが、Tableau パートナーが導入して成功した、データの公平性に対する共通の取り組みを一部ご紹介します。

1.解決しようとしている問題が最も身近なコミュニティと連携しましょう。適切なデータを収集するためにどのような問いを投げかけるべきか、どのような文脈でデータを理解し分析すべきかについて、そのコミュニティから意見を得ます。コミュニティとの連携には次のようなメリットがあります。

  • データの精度、信頼性、確かさが向上し、データが利用され参考にされる可能性が高まります。
  • データがコミュニティにとって有用であり、コミュニティが対処を望んでいる問題に関係のあるデータであることを確認できます。
  • インパクトを高め、何がうまくいっていて何がうまくいっていないかを明らかにし、総体的な優先度の設定に役立つ、行動につながるデータを生み出せます。

 

2.対象となる人々とコミュニティに関係があり、代弁するデータにしましょう。データが対象としているはずの人々のニーズを深く理解して対処するためには、データの中に人々の姿がよりはっきりと見える必要があります。

  • プライバシーは保護しながら、データを可能な限り集計しない状態にします。
  • 個人の体験をより細かく描き出す、関連性のあるデータポイントを求めます。人種や民族、ジェンダー、所得水準のみのデータでは、個人の重要な側面をまとめて見ることのできる能力と同じ文脈やインサイトは得られません。

 

3.データはこちらからもコミュニティと共有し、フィードバックの反復を通じてインパクトを拡大しましょう。

  • コミュニティがデータから十分に恩恵を受けるには、データを利用できるようになる必要があります。データの共有により、データ利用の好循環が強化されます。これはつまり、ますますデータが利用され、ますます多くのコミュニティがデータに反応するようになれば、データが収集、分析され続ける可能性も高くなるということです。
  • データを共有して取り組みを拡大する方法に、責任を負う必要があります。データのプライバシーを保護して、信頼を構築、維持しましょう。

 

4.人々やコミュニティが、データの有効利用に必要なツールと知識を使えるようにしましょう。

  • データセットの規模と複雑さが増すに従って、人々が利用可能な情報を読み解く方法を身につけるようにするうえで、データリテラシーやデータスキル習得の取り組みはますます重要になっていきます。
  • コミュニティベースの組織には、テクノロジーソリューションをさらに利用できるようにする必要があります。
  • 組織は、テクノロジー関連のコストと間接費の資金として利用可能な、より自由な財源を使えるようになる必要もあります。