データ可視化とは、企業が扱う膨大な数値データを、グラフやチャートなどを使ってひと目で理解できるようにすることです。分析までのスピードが上がるため、データに基づく意思決定を迅速に行えます。
データを可視化する際には、ポイントを押さえたうえでデータの種類に合った手法の選択が必要です。
本記事では、データ可視化の基本手法とポイントを解説します。メリットも紹介するので、データの可視化による効果を最大化できるよう理解を深めましょう。
データの可視化とは?
データ可視化とは、データビジュアライゼーションとも呼ばれ、売上や顧客数といったデータを直観的に理解できるように、グラフや分布図などの視覚的にわかりやすい手法を使って示すことです。
表に数字が並んでいるだけでは、データの特徴を捉え、分析する際に時間がかかります。一方、データの可視化によって見るべきポイントが明確化されると、データ分析・理解の速度が上がります。
たとえば、月ごとの売上が棒グラフで示され、そのうえに利益率の折れ線グラフが表示されていると、年間売上の分析に役立つでしょう。各支店の利益率を地図上に表示すると、どのエリアの顧客層が厚いのかひと目でわかります。
各部門における施策の立案・評価に活用できるのはもちろん、他者にデータを示しながら現状を説明・提案する際にも活用できます。だれもが直感的にデータを理解できるため、迅速な意思決定にもつながります。
データ可視化の必要性
データの可視化は、あらゆる意思決定を高速化させるうえで必要です。
では、なぜデータを可視化する必要があるのでしょうか。それは、現代のビジネスが複雑化しており、ひとつのビジネスに対して多くのステークホルダーが存在するからです。
ビジネスの複雑化によって、企業にはさまざまなステークホルダーが存在します。ステークホルダーは、必ずしも全員がビジネスを詳細に理解しているわけではありません。深くビジネスに関わっている現場のメンバーでなければ、理解しにくいデータもあるでしょう。ビジネスへの解像度が低いステークホルダーにデータの意味を理解してもらうためには、できるだけわかりやすく可視化する必要があります。
ビジネスが複雑化する要因のひとつに、社会や市場・顧客ニーズの変化スピードの速さが挙げられます。変化に対応するためには、業務の効率化、情報共有と理解スピードの向上が必要なため、データの可視化は、目まぐるしい変化に対応するための手段といえるでしょう。
データ可視化のメリット
データの可視化には、次の5つのメリットがあります。
- 迅速にデータの意味を共有できる
- 意思決定スピードが向上する
- 課題に対する共通認識を持ちやすくなる
- 属人的なナレッジ・ノウハウが不要になる
- データドリブン経営を実現できる
データの可視化によるメリットを活かせるように運用することで、効果の最大化を見込めるでしょう。
迅速にデータの意味を共有できる
データを可視化するメリットは、ステークホルダーに向けて、データの意味を正確かつ迅速に伝えられる点です。
たとえば、小売業における年間売上が数千万円・数億円のように大きな単位になる場合、数字を並べただけでは売上が高い月がどれなのか、わかりにくいことがあります。
現場メンバーはこれまでの経験から、どの月の売上が高いかを判断できるはずです。一方、他部署や外部の協力パートナーなど、現場の事情を知らないステークホルダーは、数字を読み解くことに時間がかかってしまい、データのよい点・問題点にたどり着くのが困難です。
数字の羅列ではなく、グラフや図によって視覚的にアプローチすることで、ステークホルダーもデータの意味や特徴ををひと目で把握できるようになります。
意思決定スピードが向上する
データの可視化によって、経営層やマネジメント層の意思決定スピードが向上することもメリットです。
経営層やマネジメント層が何かしらの判断を下す際、次のような内容について数値で示されたデータを参考にします。
- 1年のうちどの月の売上が高いのか
- どの地域の店舗の売上が高いのか
- どれくらいの在庫を抱えているのか
- Web サイトの PV はどれくらいあるのか
変化スピードの速い現代において、経営層・マネジメント層の勘や経験に基づく判断は不確実性が高いといえます。一方、数値データに基づく判断は正確性が高いため、経営層やマネジメント層は現場に対して数字での報告を求めるのです。
そこで役立つのがデータ可視化です。グラフや図などを駆使してわかりやすくデータを可視化することで、経営層やマネジメント層が瞬時にデータの意味と特徴を理解し、スピーディーな意思決定を促せます。
課題に対する共通認識を持ちやすくなる
データの可視化によって、課題の発見が容易になり、共通認識を持ちやすくなることもメリットです。
データを可視化すると、数値として課題が浮き彫りになります。たとえば、売上は予測通りである一方、顧客層が変動しているケースは、日頃から数値を取得し、データが可視化されていなければ気づきにくい変化です。こうした変化から、従来の顧客層の購買が減った要因を突き止め、改善していくことで顧客ニーズに合った商品・サービスを提供できます。
数値として課題が明確化されると、社内で共通の課題意識を持てるため、一丸となって商品・サービスの改善にあたれるのです。
属人的なナレッジ・ノウハウが不要になる
BIツールによってデータが自動で可視化されると、データ分析のナレッジ・ノウハウがなくても、容易にデータの意味や特徴を理解できるようになります。そのため、データ管理・分析に必要だったデータサイエンティストという専門知識を持つ人材に頼らなくても、一定レベルのデータ分析ができるのです。従来のデータサイエンティストの業務効率化にも寄与します。
BIツールとは、CRM/SFAをはじめとするさまざまなシステムと連携することでデータを可視化し、分析を容易にするツールです。人の手でグラフや図を作成すると時間がかかってしまうため、意思決定をスピーディーにするためにデータを可視化したい場合は、BIツールの導入が適切です。
以下の記事では、BIツールを導入する際に留意すべきポイントを解説しているので、参考にしてください。
▶ BI ツールを導入するメリットと留意すべき 6 つのポイント
データドリブン経営を実現できる
データの可視化によって、社内にデータを利活用する基盤を築ければ、データドリブン経営をスムーズに進められます。
データドリブン経営とは、あらゆる企業活動においてデータに基づく判断・意思決定を行う経営手法です。データに基づく判断・意思決定によって、変化スピードの速い社会・市場・顧客ニーズに対応できるようになると、顧客理解の深化および顧客満足度の向上につながります。課題発見・改善を高速化させるため、ビジネスのPDCAをスピーディーに回すことが可能です。
データの可視化は、データドリブン経営の実現に欠かせない基礎部分でもあります。以下の記事では、データドリブン経営を成功させるコツを解説しているので、参考にしてください。
データ可視化の基本手法
データを可視化する基本的な手法は、以下の通りです。
- グラフ・チャート
- ヒートマップ
- 地図
- インフォグラフィック・イラスト
データの種別によって、適切な可視化の手法が異なります。どのような手法があるか理解しておくと、種別に合った手法を選べるようになるので、参考にしてください。
グラフ・チャート
グラフを用いることで、数字のデータを視覚的にわかりやすく表現できます。それぞれのグラフには、次のように適した使い方があります。
グラフの種類 |
概要 |
適した使い方の例 |
円グラフ |
全体に対する各要素の構成比をあらわす |
全顧客に対し、属性ごとの購入割合を示す |
棒グラフ |
各要素の大小をあらわす |
月別売上データを比較する |
折れ線グラフ |
増減の推移をあらわす |
月別利益率を比較する |
帯グラフ |
円グラフと同様、各要素の構成比をあらわす |
各年の事業別売上高を帯グラフに示し、各帯グラフを比較する |
レーダーチャート |
・複数のデータを掛け合わせ、全体のバランスを見る ・カテゴリ間のデータを比較する |
1ヵ月の製品別売上高を比較する |
どのような目的でデータを活用するかが明確になっていると、適切なグラフを選べるため、データの可視化では目的の明確化が大切です。
以下のホワイトペーパーでは、14種類のグラフ・チャートの適切な使い方をまとめているので、ぜひご覧ください。
ヒートマップ
ヒートマップは 、Web サイトの分析によく活用される手法です。
たとえば、ページごとにユーザーがよく見ている部分を赤く表示し、あまり見られていない部分を青く表示します。中間となる部分は、黄色や緑で表示するのが一般的です。マップや散布図とヒートマップを連携すると、密度や利用率などを可視化できます。
ヒートマップを使うと、Web ページ内のどこが見られていて、どこが見られていないのかを確認できます。あまり見られていない箇所は改善したり、よく見られている箇所はさらにコンテンツを充実させたりと、データに基づいてWeb サイトの改善を行えます。
地図(マッピング)
地図を活用してデータを可視化すると、場所のイメージがつかみやすくなり、分析しやすくなるでしょう。
たとえば、日本の各都市の気温を比較する場合、地図上にデータを示すことで位置関係や地域特性を踏まえながらデータを分析できます。
インフォグラフィック・イラスト
データを示したグラフや地図にイラストを組み合わせることで、よりデータを見やすくまとめる手法をインフォグラフィックと呼びます。
効果的にデザインすることで、グラフ単体よりもさらに閲覧者の理解度を高められるでしょう。
データ可視化のポイント
データを可視化する際は、次の3つのポイントに留意が必要です。
- データ可視化の対象・目的を明確化する
- 対象者に合わせて適切な手法を選択する
- データのサイロ化を防ぐ
ポイントを押さえることで、データの可視化による効果を引き出せるはずです。
データ可視化の対象・目的を明確化する
まずは、対象となるデータや可視化の目的を明確化する必要があります。
データの可視化は、現状把握や課題発見、情報共有のための手段です。可視化によって何を適切かつ迅速に伝えたいのかを明らかにしておかないと、データの可視化によるメリットを享受しにくくなるでしょう。
目的に応じて適切な可視化手法を選択するためにも、必要な工程であるといえます。
対象者に合わせて適切な手法を選択する
データは「だれに見せるのか」を踏まえ、取捨選択する必要があります。データを見る対象者にとって、不要なデータはノイズとなり、分析・判断を鈍らせるおそれがあるためです。
たとえば、経営者が対象の場合、各店舗の売上データに絞って可視化し、商品ごとの細かい売上数データは省略します。逆に店舗内のスタッフに共有するのであれば、他店舗との比較の可視化は行わず、商品ごとの売上データに絞る、といった具合です。
このとき、対象者がもっとも理解しやすい可視化手法を選ぶことも大切でしょう。適切でないグラフを用いて可視化すると、データが見にくくなり、誤解が生じるリスクがあるためです。
データの取捨選択とともに、適切な手法を選択し、対象者がデータの意味と特徴を正確に捉えられるようにしましょう。
データのサイロ化を防ぐ
部署ごとにデータの可視化を行っていると、データが分散してしまい、効率的に活用しにくくなる「データのサイロ化」が起きます。
データのサイロ化を防ぐためには、社内で共通のデータ蓄積・共有システムを導入し、同一のルールのもとでデータを蓄積することが大切です。部署をまたいで必要なデータを利活用できると、重複するデータの入力作業が減り、業務効率化にもつながります。
データ可視化はエクセルでできる?
データの可視化はエクセルでもできますが、次のようなデメリットがあります。
- 可視化を手作業で行わなければならない
- 誤入力や誤表示などのリスクが高まる
- 手作業が入るためリアルタイムでデータを確認できない
- エクセルに詳しくなければ適切に運用できない
データの可視化を行う場合は、エクセルよりもBIツールが適切です。ただし、多くの企業は、使い慣れているエクセルでデータ管理を行っているのではないでしょうか。その場合は、BIツールを導入する際も、エクセルを活用できるものを選ぶのがおすすめです。
以下のホワイトペーパーでは、データ分析においてエクセルではできないことをまとめているので、合わせてご覧ください。
データ可視化に役立つBIツール「Tableau」とは
「Tableau」は、データの可視化に役立つBIツールです。企業がクラウドやデータベース、ファイルに蓄積してきたデータを連携し、さまざまな手法で可視化します。社内で活用したいデータをピックアップし、ダッシュボードにまとめられるため、ひと目でデータを理解・分析できる点が魅力です。
さまざまな企業で親しまれているエクセルとも簡単に連携でき、エクセルデータを基に可視化することもできます。エクセルの要素を少し残しておくことで「Tableau」に使い慣れるまでの期間をサポートできます。
以下のデモ動画では、Tableauの機能を紹介していますので、ぜひご覧ください。30日間の無料トライアルをご利用いただくと、機能性を実感できるはずです。
Tableauを使ったデータ可視化の事例
「Tableau」によるデータ可視化の事例を3つ紹介します。
- 事例1.データの可視化によるデータドリブン経営の実現|NTTコミュニケーションズ株式会社
- 事例2.情報のサイロ化からの脱却|旭化成株式会社
- 事例3.データの可視化による分析の高速化|富士フイルム株式会社
事例から「Tableau」をどのように活用できるかがわかるので、参考にしてください。
事例1.データの可視化でデータドリブン経営を支援|NTTコミュニケーションズ株式会社
NTTコミュニケーションズ株式会社では、大小合わせて1,000近くのデータが存在していました。これを、管理するだけでなく分析して活かしたいという目的から「Tableau」を導入しました。
導入後、「Tableau」上で3,000以上のダッシュボードを作成し、データの可視化を実現。会議で資料を見せる際も、ダッシュボードをそのまま見せるケースが増えており、社内での活用が浸透しています。
▶ Tableau によるデータの可視化で、データドリブン経営の文化と人材を育む|NTTコミュニケーションズ株式会社
事例2.情報のサイロ化からの脱却|旭化成株式会社
旭化成株式会社では、社内で情報がサイロ化してしまい、十分に活用できない課題を抱えていました。この状況を脱却することを目的のひとつとして、「Tableau」を導入したのです。
導入後、売上をはじめさまざまなデータをダッシュボードでリアルタイムに可視化できるようになりました。データの取得や共有が自動化されたことで、分析・意思決定の高速化・効率化を実現したのです。
▶ 総合化学メーカーが“ 情報のサイロ化” から脱却!|旭化成株式会社
事例3.データの可視化による分析の高速化|富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社では、販売設置先の印刷機器のログデータをエクセルのマクロ機能を使って分析していました。ところが、データのダウンロードやビジュアライズに時間がかかっており、非効率性が課題となっていたのです。そこで、データを可視化し、分析を高速化させるために「Tableau」を導入しました。
導入後、分析時間が大幅に短縮され、年間約250時間の削減に成功しました。可視化されたデータは、印刷機器のパーツ在庫の最適化にも活用されるようになり、社内でデータ活用が浸透しています。
まとめ:BIツールでデータを可視化し迅速な意思決定を行おう
データを可視化すると、閲覧者がひと目でデータの意味や特徴を理解できるため、その後の意思決定スピードを向上させられます。課題発見から商品・サービス改善までのPDCAサイクルがスピーディーに回せるようになり、変化スピードの速い時代にも適応できるでしょう。
データの可視化は、従来親しまれてきたエクセルでも可能ですが、数値入力やビジュアライズに手間がかかるなど、非効率的です。そこで、データの可視化・分析に特化したBIツールの活用をおすすめします。
BIツールなら、蓄積したデータを自動で適切な手法を使ってビジュアライズできます。可視化までを自動で行えるため、データ分析までの業務を効率化できる点も魅力です。
Saleceforceが提供する「Tableau」は、既存のクラウドやサーバー、ファイルのデータを可視化し、分析を高速化させるBIツールです。だれもが直感的にデータを理解・分析できるようになります。ぜひ、無料トライアルからお試しいただき、体感してください。