近年、多種多様な業界において、ビッグデータをビジネスに活用する取り組みに注目が集まっています。さまざまな種類や形式のデータを企業内で収集・蓄積し、ビジネスの意思決定につなげるデータ駆動型経営を目指している企業も多いことでしょう。このようなビジネス環境を実現させるためには、データガバナンスの理解が不可欠です。
この記事では、データガバナンスの基礎知識や必要性のほか、データガバナンスを推進するために理想的な組織像などについて解説します。
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データガバナンスとはデータの取り扱いを統制すること
データガバナンス(Data governance)とは、端的にいうと「データの統治」のことです。わかりやすく考えるために、国の統治になぞらえてみます。
国を統治するために、人々が従うべきルールを定める「立法機関(国会)」、ルールに則って施策を実行する「行政機関(内閣)」、ルールに反した場合にはペナルティを科す「司法機関(裁判所)」が存在しています。これらの役割が、どれかひとつでも崩れた場合には、国全体が混乱に陥ってしまうおそれがあります。統治の仕組みが三権分立となって互いにその効力を発揮しているからこそ、人々は有意義に活動でき、平穏に暮らしていけるのです。 これら政治機能を、データの取り扱いにあてはめてみましょう。
データガバナンスの機能
- 立法機関:データの取り扱いについて、従うべきルールや考え方を決める
- 行政機関:データ活用のルールを守るために監督し、指揮をとってその責任を負う
- 司法機関:データ活用について、ルールが守られているかチェックし、報告を行う
データガバナンスは、組織内のビッグデータを混乱なく、有意義かつ円滑に活用するために、必要不可欠な概念なのです。
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データガバナンスの役割
データガバナンスの概要を国の政治機関に例えましたが、政治機関が経済活動などを実際に行わないように、データガバナンスもデータ活用を実行するのではなく、あくまで管理監督する役割を担っています。 具体的には、組織がビッグデータを活用する上でデータの品質とデータのセキュリティを保証するためのルール決めを行い、そのルールに則ってデータの監督や管理について指揮をとり、責任を負うのです。
欠陥のあるデータはそれだけでビジネス上の価値はなく、いつまでも大量に抱えてしまうと、スピーディーかつ精度の高いデータ分析は行えません。ですから、まずはデータの品質を守り続けるルールが必要です。また、データのセキュリティを保証するためには、データを保護し、不正アクセスなどを防ぐための策を立てることも大切です。
データガバナンスの役割とは、「どのデータについて」「誰が」「どんな場面で」「どんな方法で」「何を実行できるか」のルール決めをあらかじめ行い、明文化しておくことともいえます。そして、ルールを決めたら、それに則ってデータ運用の指揮をとります。組織を統率していくうちに、何らかの課題が発生した場合には、そのコントロールも必要です。
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Tableau 無料トライアルをダウンロードデータマネジメントやマスターデータ管理との違い
データガバナンスと同じデータ管理に関連する言葉として、「データマネジメント」や「マスターデータ管理」があります。 データガバナンスは、データマネジメントやマスターデータ管理よりも高次の概念で、組織内でデータがあるべき姿を明文化し、そのポリシーを守っていくための取り組みです。データマネジメントやマスターデータ管理をどのように行っていくのか、方向性を決めているのがデータガバナンスと理解しましょう。 データマネジメントとマスターデータ管理には、それぞれ下記のような意味があります。
データマネジメント
データマネジメントは、データの維持とデータをさらに進化させていくために行う、組織的な取り組みを指します。 ビジネスに活かせるような状態にしたデータを継続的に維持すること、そしてビジネスの成長のために、進化させることが目的です。データの維持などのために、データガバナンスで定めた運用のポリシーが必要になります。
マスターデータ管理(マスターデータマネジメント、MDM)
マスターデータ管理とは、データマネジメントに内包され、業務に使うデータを全社的に統合し、その品質を維持するための取り組みです。 データの正確性や安全性を保証して、現場担当者に提供します。データウェアハウスや、データレイクの維持管理に関係の深い役割です。マスターデータ管理も、データガバナンスで定められたデータ運用のポリシーを基準に管理を行っておきます。
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データガバナンスの必要性
組織内でデータを収集・蓄積していく過程で、データガバナンスをまったく取り入れなかった場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
例えば、自社内でこれまでに、膨大かつ、さまざまな種類・形式のデータを収集・蓄積してきたと想定しましょう。時間もコストもかけて、苦労して集めたビッグデータの集合体に対して、適切な統治が一切、何もなされないまま長期間、放置されてしまったとします。 すると、「あるはずの欲しいデータがどこにあるのかわからない」「収集したデータが間違いだらけで出所も不明、どれを信用していいかわからない」「データの形式があまりにも不統一で、コンピューター処理が困難、管理しきれない」「セキュリティに不安があるため、データを適正に公開できない」といった問題が生じかねません。しかも、データ量は増え続ける一方で、複雑化の一途をたどります。
データガバナンスがない場合
一度、データがこのような状況に陥ってしまうと、分析に活用できず、ビジネスにとって何の役にも立たないものになってしまいます。せっかく時間も労力も費用もかけてビッグデータを収集し蓄積してきたのに、その内部統制がまったくとれていないと、分析担当者やエンジニアなどの現場担当者が日々、大きな負担を抱え続けることになります。
また、社内向けに構築していたデータが外部に漏れないようにセキュリティを築くことは、企業にとって重要課題のひとつといえます。データを扱う上でのコンプライアンスに規約がなく、情報漏洩などの問題が生じれば、企業全体の信用問題にもなりかねません。総合的に捉えれば、リスクもコストも、ともに増大していくのです。
これでは、データを活用したビジネス上の戦略立案・意思決定はうまく進みません。そのため、ビッグデータを取り扱う企業にとって、データガバナンスは必要不可欠なのです。
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データガバナンスの具体的な取り組み方
データガバナンスは具体的に、どのように取り組んでいけば良いのでしょうか。実際に取り組む際には、複雑なプロセスを経る場合が多いため、簡単に解説します。
1. データマネジメントの目的を明確にして戦略を立てる
データガバナンスは、データマネジメントを円滑に進めるために取り組みます。そのため、まずはデータマネジメントの目的を明確にします。
2. データガバナンスに必要な規約を作成する
データマネジメントの目的が定まったら、次はその目的達成に向けて、どのようなルールが必要か、必要な役割は何か、どのようなチェック体制をとるべきかなど、大まかな規約を作成します。
3. データガバナンスの実施に必要な人員を割り当てる
作成したデータガバナンスの規約をもとに、データマネジメントが正しく行われているか監視する人員を配置します。
4. 日々のデータ活用にデータガバナンスを適用する
戦略を立て、規約を設けて人員を配置したら、日々の活動に適用してデータガバナンスの運用を開始します。データ分析がスムーズに行われているか、運用ルールが順守されているかなどを確認し、常にブラッシュアップしながらデータマネジメントの目的を達成させましょう。
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データガバナンスに取り組む際の注意点
これからデータガバナンスを策定して社内に浸透させることは、一筋縄ではいきません。データガバナンスにこれから取り組もうとする際の注意点は、下記の 2 つがあります。
スモールスタートで始める
組織内におけるデータガバナンスの推進は、まずはスモールスタートが良いと理解しておきましょう。 突然、「社内でのデータの取り扱いは、今日からすべてこのようにしてください」とルールやペナルティなどを決めて周知したとしても、部署によっては現場担当者の反発が生じることも考えられます。 そのため、「最初は特定のチームだけでスモールスタートする」「トライアル的にスタートする」ことをおすすめします。
データガバナンス自体を目的にしない
データガバナンスそのものが「目的」になってしまわないよう、留意しましょう。つまり、「ビジネスで目指している真のゴールを見失わないように」ということです。 データガバナンスはあくまで、組織内でデータを適切に活用し、新たな答えを明確に導くための「手段」に過ぎません。組織にとっての真のゴールとは、「データ活用する中で、ビジネスで新たな価値を創造すること」です。
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データガバナンスに成功する理想的な組織像
データガバナンス推進のために「理想的な組織体制」と、失敗に陥りがちになる「見直しが必要な組織体制」について、例をまとめました。
理想的な組織体制
- データを一元管理する責任者がいる
「CDO(最高データ責任者)」「CPO(最高個人情報責任者)」「CIO(最高情報責任者)」など、データを管理・統率する役割を明確に据えることが重要です。
- データの定義を明確にしている
「自社ビジネスにとって必要なデータ」「不要なデータ」を明確に定義し、その定義に則って運用管理ができていることが必要です。
- 万が一の場合のリスク管理体制が確立されている
個人情報保護、不正アクセスなど、リスクに備えた体制づくりがなされていることが必要です。
見直しが必要な組織体制
- データを一元管理する責任者を設置していない
責任者が不在では、いくらデータガバナンスを行おうとしても、データの管理や監督することは不可能です。
- 「データガバナンスは一部の人にしか関係ない」と考えているメンバーがいる
データガバナンスは、一度策定・周知されたら、組織内メンバーの一人ひとり、誰もが順守する必要があるものだと理解しながら業務にあたっていく必要があります。
- データの収集や蓄積が目的だと思っている
データガバナンスへの理解や周知が不足していると、データ収集や蓄積が目的として勘違いされがちです。そうすると、規約がないままデータが蓄積されてカオス状態になり、役に立たないデータや信用できないデータなどが増える一方になります。
- 万が一の場合に備えたリスク管理体制そのものが存在しない
データガバナンスは、データ管理においてその責任を負うものですので、リスク管理も非常に重要です。
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Tableau は自社に最適なデータガバナンスモデルの構築をアシストする
データガバナンスの構築のアシストに最適な BI プラットフォームが Tableau です。策定したルールに則って日々データ運用を行い、ビジネス上の新たな意思決定を明確に導き出すプロセスに、一貫して役立ちます。 データガバナンスを推進する上で理想的な組織にするためには、組織の頂点に、データを一元で管理・統率する責任者を置くことです。しかし、実際のビジネスの現場には、日々さまざまな場面や状況があるものです。トップダウン型でデータを一元管理していても、「IT 部門以外の人が、データにアクセスできるように権限を付与してほしい」「部門以外の人も、コンテンツを入力したいので管理を分けたい」など、さまざまなニーズが想定されます。Tableau は、そのような多様なニーズも柔軟に対応することができるのです。
なお、Tableau を導入する際に、Tableau Blueprint の活用をおすすめします。Tableau Blueprint とは、データドリブンな組織を実現するために、必要な手順を説明したガイドです。Tableau Blueprint のガイドに沿っていくことで、自社に最適なガバナンスモデルを策定できます。
そして、Tableau は導入後のデータはもちろん、すでに蓄積されているデータに対してもセキュリティを強化することができます。コンテンツの表示や編集、公開、エクスポートの許諾をユーザーやグループごとに制御が可能なため、社内向けデータが外部に漏れるようなことも防げます。 Tableau を導入することで理想的なデータガバナンスが構築でき、高いセキュリティを確保しつつ、組織内のさまざまな部門のメンバーが、コンテンツへ柔軟にアクセスできるようになるでしょう。
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Tableau は、データ駆動型企業の強力な伴走者
データガバナンスが適切に実行されていないと、せっかく収集し蓄積したデータも、ビジネスにとって無価値なものになりかねません。まずは、データガバナンスという基盤戦略を組織に浸透させることから始めましょう。 Tableau は、ガバナンスモデル策定段階から組織をアシストしてくれるツールです。導入後も、組織内のメンバーが社内で保有するデータに自律的にアクセスし、みずから新たな答えを導き出すことを後押ししてくれます。 データ駆動型企業への第一歩を踏み出す場面で、Tableau は強力な伴走者になってくれるはずです。まず、無料トライアルからスタートしたい方は、こちらから詳細をご確認ください。
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