成功を収めるデータドリブンな企業に不可欠な人間と機械の分業
世界経済フォーラムによる最新の『仕事の未来』レポート (英語) は、人工知能や機械学習、ビッグデータなどのテクノロジーの進化が、今後 5 年間で世界の仕事に与える可能性がある影響について論じています。人間と機械の間で業務の再配分が予測され、それによって 7,500 万の仕事が失われる可能性があるが、1 億 3,300 万もの新しい仕事も創出されるだろうとレポートは述べています。
仕事におけるこの大きな変化は、テクノロジーが自身の職務にとって脅威になると考えている人々を安心させるものではないかもしれません。しかし現実には、よりスマートなテクノロジーによって、組織にとって最大の価値を創造することに集中できる非常に大きなチャンスが生まれています。これからも、クリエイティビティと戦略的思考が人間の持つ明らかな強みです。これを機械が持つ向上した処理能力と組み合わせれば、未来を十分に楽観視できるようになるでしょう。
人間と機械の強みの違いを理解する
機械を信頼して、人間同様の判断能力と状況理解でビジネス上の意思決定を行わせる時代は、まだ遠い先の話です。現在、機械を信頼して任せられるのは、高度にパラメーター化されリスクが低い分野を対象にした、タスクと分析の自動処理です。しかし人間の介入や監視が必要な場合でも、理解をさらに深めてより確実な意思決定を行うために、機械のサポートに頼ることもあります。
人間は、人工知能や機械学習から数多くのメリットを得られます。次はその一例です。
- 業務の自動化 — 機械学習と人工知能は、アルゴリズムが高度に専門的な繰り返し作業に重点を置いている応用分野で、非常に大きな前進を遂げました。例えば、関連するコンテンツや商品の「おすすめ」の提案をしてくる Web サイトや不正検出プログラムです。不正な支出の検出は本のおすすめよりも変数が複雑ですが、こうしたアルゴリズムで共通しているのは、1 つのタスクに対して高度にチューニングされており、優れた計算能力を基にした驚異的な正確さを持っている点です。
- よりインテリジェントな出発点の提示 — ユーザー行動の広範囲にわたる追跡によって、システムはよりスマートな既定値を提示し、アクションを推奨することができます。また、ユーザーの反応に基づいて、時間の経過とともに既定値やアクションのチューニングとパーソナライズを進めることも可能です。たとえば現在、分析アプリケーションでこの方法が取り入れられており、あるデータセットで成功した分析手法を特徴が似ている他のデータソースにも適用して、インサイトを導き出すまでの時間を短縮しています。
- 高度な分析を身近なものに — 分析プラットフォームは、機械学習を活用して、データサイエンスの知識を持たないユーザーでも高度な分析機能を利用できるようにしています。たとえば、機械は予測やクラスタリングの最善のアルゴリズムの中から、確実性が最も高いものを選び出すことができます。基盤となるモデルが提示され明確になることによって、透明性が確保され、必要に応じてモデルのチューニングも可能になります。
- より完全な全体像の提示 — 機械は休む必要がなく、繰り返し作業や計算に非常に長けています。はるかに綿密な分析を行う能力を持った PC は、あらゆる細部を効果的に調べることができます。そしてそれによって得られる全体像は、分析で確証バイアスを回避するのに役立ちます。
人間の関与を保ち続ける
現在の PC は、長期計画の立案、抽象的思考や創造的思考、特定の分野の経験や背景情報が必要な意思決定に関しては、人間のようにうまくこなすことができません。たとえば機械によるプロセスが、解約する顧客を知らせてきたとします。しかし、その顧客が利益の高い製品を十分に購入していないのであれば、都合の良い解約と言えるかもしれません。人間は機械よりも、顧客の解約には別の側面もあるという思考の飛躍をすることに長けています。
あるいは、過去の営業から学んだ経験に基づいて、営業担当者が特定のリードを無視することもあるでしょう。機械は、この種の「勘」を簡単に働かせることができません。機械は営業機会の逸失を知らせることはできるでしょうが、営業担当者は時間を無駄にしないための知恵を持っています。
また因果関係の理解も、人間の強みであることに変わりはありません。機械が、限定的なデータセットに隠れた相関関係を見出す能力を高めている一方で、因果関係と偶然の一致を見分けることに関しては人間の力が今も必要です。予測分析は「もしも」のシナリオを試す際の強力な武器になりますが、機械の処方的分析を検証するために人間の判断は欠かせません。
間もなく訪れるチャンスを見据えて
人間と機械の分析能力を組み合わせてゆく過程で、人は新たに数多くの重要な役割を担うことになります。世界経済フォーラムのレポートで予測されているものの大半も含めて、新たに生み出されている数百万もの仕事がデータに関連しているのも当然のことです。データの利用場面が広がるにつれ、その範囲も広がっていく一方でしょう。
必要なのは、適切な質問を投げかけてスマート分析による結果に微調整を加えられる、人間の創造力です。今後ますます、人間が AI と機械学習の倫理を監視し維持する必要性は高まっていきます。そして、さまざまなスキルレベルのユーザーが分析を利用し役立てられるように、データリテラシーのレベルを高めることに取り組む人々も増えるでしょう。
テクノロジーがどれほどスマートになっても、意思決定の材料にすることという、分析の最終的な目的を見失ってはなりません。取るべき行動がわかれば、意思決定を委ねる領域、すなわちどこを自動化し、どこに監視が必要で、どこで人間のみが持つスキルを生かしたいかを見出すことができます。今後最も成功を収めるのは、大半の業務を自動化する組織ではなく、人の判断を機械とデータで最大限に支援する方法を理解している組織となるでしょう。
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