ビジネスの成功を左右する IT 部門と財務部門の関係

データセキュリティとデータ管理は、IT 部門と財務部門が協力して取り組むミッションクリティカルな課題にしなければならない理由を、Damon Fletcher が解説します。

この記事は当初 Quartz (英語) で公開されたものです。

最高財務責任者 (CFO) の 38% (英語) は IT 部門の責任者を務めていますが、多くの財務部門は IT 部門と別に運営されています。CFO の職務がテクノロジー面でさらに大きな責任を負うようになるにつれて、現代の財務部門でもデータ戦略に重点を置くことが欠かせなくなります。そのうえ、デジタルトランスフォーメーションは不可避です。財務部門と IT 部門の関係を進化させてデータと実用的なインサイトに重点を置かなければ、企業は競合他社に後れを取り、可能性を最大限に引き出せなくなるリスクがあります。

どの企業も膨大なデータを持っていますが、データを利用して戦略的なインサイトを得ることが、企業の変革目標の達成に役立ちます。それには、IT 部門の協力が必要です。ガートナー社 (英語) は、「データサイエンスが今後も競争優位性をもたらす一方で、データサイエンティストを所有するだけでは競争力の得られない業界では、データサイエンスによる分析を最も差し迫った用途に利用して、その結果得られたインサイトを確実に採用できる組織が競争力を得ることになる」と述べています。IT 部門との対話を早く始めて、頻繁に話し合い、新しいテクノロジーを採用する準備を進めましょう。財務の革新的なリーダーとしての役割を引き受け、IT 部門とのパートナーシップを強化すれば、予算編成や計画策定、競合分析、差別化で改善が見られるようになります。

データセキュリティやデータ管理を、IT 部門と財務部門が協力して取り組むミッションクリティカルな課題にする

IT 部門と財務部門は、相違点よりも類似点の方が多いと言えます。どちらも説明責任と意思決定にデータを使用しており、データセキュリティやデータ品質、データガバナンスを監視して、EU 一般データ保護規則 (GDPR) などの規則を遵守する責任も共に負っています。また、IT 部門は先頭に立って、データ管理基準の確立と、データドリブンな組織を実現するためのシステムの導入を行っています。

財務部門と IT 部門の境界線があいまいになるにつれて、データ管理におけるテクノロジー上のリスクやニーズを理解することが、成功に欠かせなくなります。大きなチームで財務データを扱うには、データ管理を一元化して、ユーザーによる利用に対してスケーラブルな独自アプローチを取れるようにする、セキュアかつパワフル、そして柔軟なプラットフォームが必要です。IT 部門と財務部門が協力して企業データのセキュリティを維持すれば、IT 部門は財務部門による企業目標の達成を支援することができます。

IT 部門が財務部門の成功を支援する

財務部門は、いずれも IT 部門のサポートが必要なシステム、会社のハードウェア、パブリッククラウドプロバイダーを利用していると考えられます。複雑ではあるものの、日常業務にはそのようなインフラストラクチャやテクノロジースタックを利用する必要があり、そのため効率的でセキュア、かつスケーラブルなプロセスを確保するには IT 部門との緊密な連携が欠かせません。

既存の ERP 収益モジュールの更新など、財務部門のみが関わるように見える変更でも、注文処理や顧客請求のシステムに対しダウンストリームで影響を与える可能性があります。そこでそうした意思決定に IT 部門を関わらせると、財務のリーダーはシステム間の依存関係を把握し、変更をシームレスに導入するためのプロジェクト計画を策定できるようになります。また、会計期間の短縮などの特定の機能を改善するために新しいテクノロジーを財務部門が必要とする場合も、IT 部門はプロセスの変更や既存ソフトウェアの利用方法を提案できます。

IT 部門は、期末やサイクルの計画時などの重要な時期に、財務部門の能力を強化し支援することができます。 しかし、業績レポートの作成時以外にも連携を図れば、パートナーシップの価値をはるかに高められます。IT 部門はテクノロジーの進歩の最前線に立っており、人工知能や機械学習などの新しいテクノロジーの利用で社内のエキスパートの役割を担うべき存在です。緊密なパートナーシップによって、IT 部門は財務部門のニーズに対応できる最適なシステムを見つけて導入することができます。それにより、財務部門は面倒なレポートの更新にかかる時間を短縮して、成功を生み出すインサイトの発見により多くの時間をかけられるようになります。

データ分析により、財務部門がレポートの実行ではなく経営を支えられるようにする

ほとんどの企業にとって、データソースの集約と分析は管理が大変な作業ですが、適切なデータに基づいて適切な意思決定を行うことは欠かせません。IT 部門と協力してデータインフラストラクチャを決定すれば、財務部門の人員は価値ある戦略立案に集中できるようになります。

財務部門を記録管理やレポート作成、取引処理の業務から解放し、データで価値を生み出す戦略的な業務を行う部門に変革する大きなチャンスがあります。財務会計部門は単なるデータ処理ではなく、分析に集中することができます。すなわち、収益に対してデータが持つ意味を解釈し、困難な取引に対処する方法を決定し、業務とって最も効果的な会計戦略を特定できるということです。結局のところ、社内の優秀な人材はレポートを実行するためだけではなく、経営を支えるために採用されています。

IT 部門の導入するシステムやアプリケーションは、財務部門がデータを管理し分析する方法に大きな影響を与える可能性があります。両部門が協力すれば、会社は複雑な問題を解決できるとともに、ますます専門的になる業界で差別化を図って発展するモダンでデータドリブンな財務部門になる、という目標を達成することができます。