Tableau Prep でデータ更新の 工数年間 350 時間をゼロに|株式会社しまうまプリント
Tableauユーザーの育成でデータ活用の文化を醸成
導入の背景
データ更新の自動化、深掘りの易化、データ人材定着を目指して導入
株式会社しまうまプリント(東京都新宿区)は、株式会社キタムラ・ホールディングスのグループ会社として、会員数 500 万人以上を誇るオンライン写真プリント・保存サービス「しまうまプリント」を運営する企業です。写真プリント事業・フォトブック事業・年賀状事業を 3 本柱として成長を続けてきた同社は、2022 年、新たな事業として冊子印刷サービス「しまうま出版」とアルバム販売をスタートさせ、さらなるビジネス拡大を目指しています。
そうした中、同社のマーケティング部は、新規事業の売上の最大化をミッションに掲げ、それを実現する手段の1つとしてデータ活用に力を入れています。もともと同部は、2018 年頃からデータの可視化・分析に取り組んできました。無料の BI ツールを導入してメンバー 1 名をデータ専任の担当者とし、データマートを構築して社内の誰でもデータにアクセスできる環境を整えたのです。執行役員で同部の部長を務める八坂勝也氏が、かねてよりデータドリブン経営を志向していたことから始まった動きだったといいます。
「どういうロジックと根拠で決断に至ったのかをしっかり可視化したい、という気持ちが昔から強くありました。また、当社には“ 徹底的に議論する文化”があって、施策を1つ決めるにしても、明確な論拠がないとなかなか話がまとまらない、という背景もありました。それで、まずは無料の BI ツールを導入し、社内にデータの価値を届けるところから始めたのです」(八坂氏)
ただ、BI ツールを数年使う中で、さまざまな課題が見えてきました。1 つは、データ更新に人の手が介在していたことです。専任担当者は、データの格納・抽出など、データ更新の前に必要な作業に年間約 350 時間という莫大な工数を費やしていました。加えて、その作業後でなければ最新のデータを見られないため、たとえば金曜日の売上を確認するには週明けまで待たなければならないなど、データ可視化の即時性にも難がありました。
また、データの深掘り分析が難しいことも大きな課題でした。データ分析の結果を見ると、「なぜ A と B のグラフはこんなに違うのか?」といったさまざまな疑問が湧いてきます。そのとき、改めて別の角度から分析したいと思っても、無料の BI ツールの機能や操作性では限界がありました。八坂氏が「データとの対話」と表現する、同部の目指すデータ分析ができなかったのです。
さらに、人材の採用・定着化に与える影響という点でも、既存の BI ツールは訴求力に欠けていた、と八坂氏はいいます。
「データアナリストが就職や転職をするにあたっては、今後のキャリアを考えれば、無料の BI ツールより、世界中で利用されている BI ツールで仕事のできる環境を選びたいと思うでしょう」(八坂氏)
そうした大きく 3 つの課題を解決するため、同社は 2021 年 11 月、BI ツールを Tableau に入れ替える決断を下したのです。
Tableau の導入・運用環境について
Tableau Prep を活用することで、4 ヶ月間で Tableau への移行を実現
Tableauの導入と社内への展開は、同部分析 Gr の推進チームを中心として進められました。最初に、分析 Gr マネージャーで推進チームリーダーの山口卓也氏を含む 3 名が、オンライン学習サービスなどで Tableau の操作をひと通り習得しました。
「Tableau の習得についてはゼロからのスタートでしたが、オンライン学習サービスや書籍、コミュニティでの勉強会、イベントなど、豊富な学習リソースのおかげで短期間で基本的なスキルを身につけることができました。また、Tableau Public には世界中のユーザーの作成したダッシュボードが多数公開されているので、実際の運用に耐え得る、意思決定のしやすいダッシュボードの構造を学び、本当にほしいものを作れる状態へ近づいていきました」(山口氏)
それと並行して推進チームは、ダッシュボードの運用開始までの速度を重視し、Tableau Prep を活用してデータマートを構築しました。
「SQL を書かずに Tableau Prep でデータマートを作れるので、迅速に構築を完了できました。
Data Management を導入したことで、Prep のフローをスケジュール設定して運用することが可能になり、この仕組みを別個に実装する必要が無かったことも初期のデータ基盤構築に寄与しました。
また、全員で 3 名、うちデータエンジニア 1 名という小さなチームだったため、自前でサーバを構築・保守することなく、ダッシュボードやデータ基盤の作成にリソースを集中させたいと考え、最初から Tableau Cloud の利用を決めていたのも正解でした。結果として、約 4 か月でダッシュボード運用開始までこぎつけることができました。Tableau Prep などがなかったら、おそらく倍の時間はかかったでしょう」(山口氏)
Tableau の習得についてはゼロからのスタートでしたが、オンライン学習サービスや書籍、コミュニティでの勉強会、イベントなど、豊富な学習リソースのおかげで短期間で基本的なスキルを身につけることができました
社内ユーザー育成について
運用方針の転換 社内勉強会で Tableau ユーザー育成
順調なスタートを切ったかに見えた推進チームは、すぐに新たな課題に直面することになります。各部門からのダッシュボード作成の依頼が増え続け、人的リソースが不足するようになったのです。そこで、推進チームは方針を転換。推進チームが担うのはデータの準備までとし、データの可視化・分析については各部門で行えるようにするため、社内勉強会を開催して人材を育成することにしました。講師役を務めた同部データアンバサダーの南 栄伍氏はいいます。
「ゼロから始めて 3 か月で Tableau を使えるようになった私自身の体験を踏まえて、学習コンテンツを作成し、勉強会で展開していきました。週 1 回 2 時間、全 12 回のプログラムには、販売促進部の部長をはじめ、さまざまな部門・役職のメンバーが計 11 名参加しました。そして、最終的に全員が自分でダッシュボードを作成できるようになり、Tableau Explorer ライセンスを付与しました。
Tableau は非常に直感的に使えるので、勉強会では『やってみると意外にできますね』というメンバーの声をよく耳にし、データ活用に対するメンバーの意識や姿勢は劇的に変化していきました。卒業後、推進チームへの依頼の内容が、従来の『ダッシュボードを作ってください』という受け身なものから、『ダッシュボードを作りたいから、こういうデータや作成のアドバイスをください』という積極的なものへと変わったのです」(南氏)
「推進チームがデータを使いやすい形で提供し、分析や施策への展開はユーザーが自ら行う、という方針に転換したことが、そうした社員の変化を促したのだと思います。南の作った学習コンテンツで楽しくスキルを身につけ、また Tableau Blueprint でデータ活用を企業に根づかせるためのベストプラクティスを学ぶことで、データ活用の文化を醸成できました」(山口氏)
Tableau は非常に直感的に使えるので、勉強会では『やってみると意外にできますね』というメンバーの声をよく耳にし、データ活用に対するメンバーの意識や姿勢は劇的に変化していきました。卒業後、推進チームへの依頼の内容が、従来の『ダッシュボードを作ってください』という受け身なものから、『ダッシュボードを作りたいから、こういうデータや作成のアドバイスをください』という積極的なものへと変わったのです
Tableau の導入効果について
ダッシュボードのデザインシステム構築
同社では、ダッシュボードの作成を Tableau Desktop で、ダッシュボードの閲覧を Tableau Cloud で行うという形で Tableauを使い分けています。そして、売上のトップラインの向上を目的とする各部門、および経営層が Tableau を利用しています。各部門ではほぼ全社員が、5 つの事業について、売上の推移や各種 KPI 指標を日々ダッシュボードで確認し、業務改善などにつなげています。一方、経営層においても Tableau のダッシュボードでデータを確認することで意思決定に役立てています。
「以前より格段に進歩したことの一例が、顧客の深掘り分析です。単に売上や受注件数の動きを見るだけでなく、新規顧客とリピート顧客の売上はそれぞれどれぐらいで、最終購入日・頻度・金額はどうなっているか、といった詳細な RFM 分析が可能になりました。そのように、ダッシュボードで扱うデータ量が多く、以前は SQL を実行してスプレッドシートに貼る作業が大変すぎてなかなかできなかった、深掘り分析による“データとの対話”を、手軽にいつでも行えるようになりました」(山口氏)
またデザインにも拘りました。データを正しく簡単に理解できるようにするために、ダッシュボード用のデザインシステムを構築しました。これにより、Creator のスキル差に左右されず、一定品質以上のダッシュボードを社内に届けられるようになりました。
データ更新作業の「年 350 時間」の工数削減
Tableau 導入の効果は、データ更新に費やしていた年間約350時間の工数がゼロになったこと や、ダッシュボード運用開始までに要する期間を約2分の1に短縮できたことなど、さまざまな数値として現れています。また、ユーザー 72 名の約 92 %が 10 日間以内に 1 回以上ダッシュボードを閲覧しており、資料作成などにかかる時間が劇的に削減されているそうです。
データ基盤の導入で可視化速度アップ
Tableau Prep を活用しデータマート構築を迅速に完了した後、ETL の安定や可視化の速度向上を求めて BigQuery を軸とした基盤に変更を行いました。Tableau Prep は特定用途に特化したワンショット案件のデータマート作成等に活用を続けています。
BigQuery によって変換されたデータマートが Tableau のみではなく Salesforce Marketing Cloud にも投入出来るようになりました。
副次的な DX 推進作用
加えて南氏は、Tableau への移行による副次効果として、ルーチン作業を自動化する動きが社内で活発化していると話します。
「たとえば、今までなんの疑いもなく人力で議事録を作成していましたが、Tableau 導入後、生成 AI を利用して自動化しました。機械でできることは代行させ、人間は自ら行ってこそ価値の生まれる仕事に集中しようという意識改革が全社的に進んだことは、非常に重要な成果だと受け止めています」(南氏)
新卒社員の早期戦力化
八坂氏は、新入社員の育成における Tableau の有用性についてこう話します。
「新卒の社員は一般的に、とても不安な気持ちで入社し、会社のために役に立っているのかを実感できないまま半年ぐらいを過ごします。しかし当社では、新卒メンバーに上半期で Tableau と SQL をみっちり勉強してもらうことで、半年後にはある程度の活躍が見られました。新卒メンバーからも、『この会社を選んで本当によかったです』という充実感のある言葉を聞くことができています。そのように Tableau は、社員を短期間で育成し、また社員にとっても会社への貢献を早い段階で実感できる、ちょうどいいサイズのツールだと感じています」(八坂氏)
当社では、新卒メンバーに上半期で Tableau と SQL をみっちり勉強してもらうことで、半年後にはある程度の活躍が見られました。新卒メンバーからも、『この会社を選んで本当によかったです』という充実感のある言葉を聞くことができています。そのように Tableau は、社員を短期間で育成し、また社員にとっても会社への貢献を早い段階で実感できる、ちょうどいいサイズのツールだと感じています
今後の展開について
Marketing Cloud とのデータ連携
Tableau 導入後に取り組み始めているのが、Salesforce Marketing Cloud との連携によるマーケティング施策の効率化です。BigQuery で作成されるデータマートは、Tableau Cloud だけでなく、Marketing Cloud にもアップロードされ、メール配信などのマーケティング施策に利用できる仕組みになっています。ます。扱うデータは同じなので、データ作成の運用コストはかかりません。
「Tableau でデータを見るか、Marketing Cloud で顧客とコミュニケーションを取るかという用途の違いだけで、扱うデータは同じなので、運用コストはかかりません。現状、Marketing Cloud から配信したメールやプッシュ通知による効果は、Marketing Cloud 上で確認できます。ただ、それを他のデータと組み合わせて分析すれば、より大きな価値を生み出せるはずです。そこで、Marketing Cloud によるコミュニケーションの結果をデータ基盤に取り込んで Tableau で分析できる仕組みを構築し、2024 年 1 月頃から運用を開始する予定です」(山口氏)
会社の業績すべてを説明可能な状態を目指し、Tableau の活用範囲を拡大
同社における Tableau の活用範囲は、今後、マーケティング以外の領域にも拡大していく見通しです。八坂氏はいいます。
「現在進めている施策の 1 つが、採用に関する人件費の適正化です。当社ではこれまで、目標を達成するための要員計画を部門ごとに立て、採用活動を進めていました。しかし実情としては、どれぐらいの単価の人材を何人採ればいい、という明確な答えをもって計画を立てていたわけではありませんでした。Tableau を活用すれば、各部門の営業利益に対して、過去の人件費率や労働生産性の推移はどうだったかを定量化し、会社全体としてより合理性のある要員計画を立てられるようになるはずです。来期の実現に向け、人事部と一緒にプロジェクトを進めています」(八坂氏)
推進チームを率いてきた山口氏も、今後の展開について次のように熱く語りました。
「現在扱っているのは売上に関する限定的なデータですが、今後は販管費や売上原価などのデータも Tableau の世界に連れてきて、会社の業績すべてを明確に説明できるようになるぐらいの気持ちで、活用範囲を広げていきたいと考えています。
さらにいえば、グループ内で当社はデータ活用に関して進んだ存在になっているので、社内に限らず、興味のあるグループ会社があれば、ぜひノウハウや体験を共有してサポートしたいと思っています」(山口氏)
※ 本事例は 2023 年 10 月時点の情報です
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