誰もがデータを見て判断する“データドリブン文化”を醸成
データで判断することが、誰でも自由に行えるようになった
データから新たな気づきや発見を得ることも容易になった
CCC グループの一員として、T カードを軸としたデータベース・マーケティングを担っているCCC マーケティング。T ポイントのサービスが始まった当初から、ユニークなユーザーID と単品レベルでの購買データをかけ合わせた“ID-POS 分析” を行い、そこから得られた知見にもとづくコンサルティングや販促・広告の支援を、幅広く行ってきました。当初はオンプレミスのデータベースを利用していましたが、蓄積されるデータ量の増大に伴い、スケーラビリティの問題に直面。これを解決するため2016 年には、データベースのクラウド化を行っています。これに伴い検討が始まったのが、データ分析環境の見直しでした。
「以前は分析結果を帳票の形で提供していたのですが、分析で使用するツールはExcel がメインで、データをExcel に貼り付ける作業に膨大な時間がかかっていました」と振り返るのは、マーケティングソリューションディビジョン データストラテジーユニットでユニットリーダーを務める清水 大志 氏。そのため「分析軸を変えたい」、「データをもっと深掘りしたい」といったニーズの多様化に、対応しきれない状況になっていたと言います。「これらのニーズに対応するには、大元のデータに立ち返って分析をやり直す必要がありました。またExcel ではデータがどう加工され、それがどのように表現されているのかを、追いきれないという問題もありました」。
2020 年5 月末時点でのT カードの会員数は7,000 万人を超えており、トランザクションも月間60 億件を突破。その分析から得られる数字を円滑に可視化できれば、さまざまなビジネスに貢献できるはずです。そこでデータベースの切り替えに合わせ、改めてBI 環境を整備することになったのです。「目標は社内における“データドリブン文化” を醸成していくこと。誰もがデータを見て判断できる状態を目指しました」(清水氏)。
データ可視化の圧倒的なパフォーマンスと操作性です。スピーディにグラフを作成でき、マウス操作だけ簡単に変更できます。また製品の考え方が体系的で、ナレッジを持っている人が多く、コミュニティが充実していることにも驚きました。Tableau 社自身が製品を良くするため、常に情報発信している点も魅力的です
Tableau の導入・運用環境について
そのためのツールとして選ばれたのがTableauです。2017 年8 月に20 ライセンスの契約を締結。約半年間のPoC を経た上で、2018 年4 月から全社展開が行われています。
Tableau の利用を広げるための取り組みも、このタイミングで始まっています。コアとなるTableau 推進チームを結成し、全社員向けにTableau 勉強会を開催すると共に、社内向けの学習コンテンツの整備が進められていったのです。勉強会は1~1.5 時間×20 セッションのカリキュラムが用意され、学習コンテンツはWeb ページの形で提供。さらに役員に対し「“DB × BI” がもたらすビジネス貢献の価値」についての説明も行われ、経営層のコミットメントのもと、トップダウンで推進する体制が整えられていきました。
2019 年には社内エバンジェリストの育成を行いながら、学習コンテンツのさらなる整備・更新を実施。現在では1 週間でTableau の基礎が学習できる状態になっています。また具体的なユースケースにおける質問や、相談に対応する窓口も設置。さらに“Tableau コンテスト” も社内で開催し、会社全体での普及を推進しています。
分析対象となるデータは、クラウド化されたデータベースから抽出されています。当初はデータベースからCSV などの形でデータを出力しTableau へとインポートしていましたが、最近ではデータベースとTableau を直結してデータを得るようになりつつあります。
「Tableau の普及促進で特に意識したのは、分析結果の数字を“見る側” だった社員の意識改革です」と清水氏。勉強会や学習コンテンツでTableau の使い方はマスターしても、自分の業務に必要な数字を自らの手で生み出すという意識が広がっていかなければ、データドリブン文化は定着しないのだと指摘します。「案件に応じた相談窓口を設けたのもそのためです。また既存業務の変化に対する抵抗感を、どのように緩和していくかも重視しました」。
Tableau 選定の理由について
それではなぜBI ツールとしてTableau を採用したのでしょうか。その理由は3 点あると清水氏は説明します。
第1はビジュアライゼーション機能の圧倒的な使いやすさです。「これ以前にもいくつかのBI ツールを試していましたが、Tableau の使いやすさは群を抜いていました。他の製品では追随できないレベルだと思います。またフィルタ等のインタラクティブ性も高く、マウス操作1つで表示を変えられる手軽さも素晴らしいと思いました」。
第2は分析用のデータマートを用意しなくていいことです。CCC マーケティングでは、CSV によるデータインポートとデータベーステーブルへの接続という2 種類の方法でデータをTableau に取り込んでいますが、いずれもTableau の設定だけで簡単に実現できます。データ処理やカスタマイズのために言語を使う必要もありません。そのため学習コストを最小限に抑えることが可能です。
そして第3 が、充実したユーザーコミュニティの存在です。Tableau を使っていて生じた疑問も、コミュニティで質問することで簡単に解決できるのです。「分析の自由度が高いこともTableau の魅力ですが、さまざまな疑問をすぐに解決できるコミュニティが存在することで、この自由度も最大限に生かせるようになっています」
Tableau の導入効果について
Tableau の導入はさまざまなメリットをもたらしています。これによってCCC マーケティングのデータ分析のあり方も、大きく変化しつつあります。
1 つ目は、Tableauでデータの可視化が容易になったため、データを見て判断するといったことが、誰でも自由に行えるようになりました。以前は数字を“作る人” と、それを“見て判断する人” が別だったため、判断基準がわからずにデータを抽出してしまう、といったことも起こりがちでしたが、いまではこのようなミスマッチもなくなりつつあります。実際にデータアクセスする人の数も、Tableau を導入してから急速に増えています。
2 つ目は、データ分析結果に不満がある場合には、再度データ分析をやり直す必要がありますが、Tableauであればその手戻り作業も最小化できます。分析軸の変更などを、マウス操作だけで簡単に行えるからです。これによってデータ準備に費やされる作業も削減されており、判断に必要なデータを短時間で入手できるようになっています。
3 つ目は、Tableau のフィルタ機能やハイライト機能を活用することで、データから新たな気づきや発見を得ることも容易になりました。「Tableau はExcel とは異なり、気になるポイントを簡単にドリルダウンできます」と語るのは、ストラテジックプランニング データイノベーションUnit の小林 拓磨 氏。単に傾向がわかるだけではなく、そこからさらに掘り下げて、傾向の背景にある要因まで突き止められるのだと言います。「また私たちのお客様である加盟店では、地域毎のデータへのニーズが高いのですが、Tableau は地図上へのデータマッピングも簡単に行なえます。そのため地域別の購買傾向や施策の影響なども、わかりやすい形で可視化できます」
今後の展開について
「現在はまだ普及促進の段階にあります」と清水氏。今後も普及活動を継続し、データドリブン文化を定着させていきたいと語ります。その一方で、Tableau によるデータの可視化は、社外とのコミュニケーション手段としても、大きな貢献を果たすはずだと指摘。これによってさまざまなクライアントと、新しいビジネスを立ち上げていくことも視野に入っていると言います。
「例えば今後はMaaS の普及などに伴い、地域に密接に関わるビジネスが増えていくはずです。T カードのデータであれば、どこで何を購入したかをきめ細かく分析可能。※ このようなデータを社会の改善につながる企画やビジネスで、ぜひ活用していきたいと考えています」。
※セキュリティ上、厳重に管理された環境のもと、個人を特定できない状態で、マーケティング分析を行っております。