拡張分析(Augmented Analytics)とは?
現代のデータは複雑で、解釈や理解が難しい場合があります。そこで、拡張分析(Augmented Analytics)のようなツールが大変役に立ちます。
機械学習(Machine Learning、ML)と人工知能(Artificial Intelligence、AI)を利用してデータを理解しやすくするのは言うまでもありません。しかし、機械学習(ML)と人工知能(AI)とはどういうもので、どのように機能するのでしょうか?
この記事では、次のような拡張分析トピックについてご説明します。
- 定義
- 機械学習の役割
- 利用者について
- 主な利点
- 機能
- ユースケース
- 課題
- ベストプラクティス
- ビジネスインテリジェンスにおける役割
拡張分析とは
拡張分析は、人工知能 (AI) と機械学習 (ML) を利用した分析の分野で、状況に応じてデータを扱う人の能力を高めます。拡張分析は、推奨、インサイト、クエリに関するガイダンスなどの分析機能をより多くの人に提供するツールやソフトウェアで構成されています。
世界的な調査コンサルタント企業である ガートナー社によると、「拡張分析とは、機械学習(ML)や 人工知能(AI) などのテクノロジーを使用して、データの準備、インサイトの説明を補助し、分析や ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence、BI) プラットフォームでデータを探索および分析する方法を強化するもの」と定義されています。
拡張分析における機械学習の役割
機械学習はコンピューターサイエンスの 1 つの領域で、データを使用してアルゴリズムや学習モデルを抽出します。機械学習は、多くの拡張分析機能のコアテクノロジーとなっています。多くの場面で、面倒な作業を軽減または不要にすることが可能となり、データの分析を容易化します。これにより、データを使用してより迅速にインサイトを獲得し、意思決定を行うことができます。その利点はデータのクリーニング、変換、調査、フィルタリングにも及び、より正確で詳細な検証が可能になります。
ビジネスインテリジェンス(BI) プラットフォーム内での機械学習の機能は、多くの場合、高度なアルゴリズムの結果を推奨事項として提示します。また、拡張分析の一部のアプリケーションでは、機械学習(ML) を活用して業界および組織のセマンティック、さらにはユーザーの好みを時間をかけて学習することも可能です。これにより、分析時の質問や結果をビジネスの状況に応じてパーソナライズし、より効果的なものにします。
拡張分析と自動化
自動化は拡張分析ソリューションの一般的な機能ですが、多くのテクノロジーがそうであるように、タスクの自動化と、分析による情報を使用した意思決定の自動化との違いを理解することが重要です。また、 データ主導の意思決定を自動化することで人的能力が不要となります。その一方で拡張機能は、他の方法では見られない、または発見されない可能性のある洞察をユーザーが発見できるように、基盤となるテクノロジーの方法論を提供します。
対象分野の知識はいつの時代でもアナリストにとって重要なものでしたが、人工知能(AI) と機械学習(ML)を活用した拡張分析により、そのスキルセットはさらに重要性を増しました。多くの場合、必要な状況は人が埋める必要があり、分析から得られたインサイトを使用することで、現在直面している問題に対する最適な意思決定を行うのに役立てることができます。
拡張分析のユーザー層とは??
ビジネスユーザーや管理職が拡張分析から驚くほどの価値を得られます。これらのテクノロジーのおかげで、データ処理に関する高い技術的スキルや専門知識がなくても、データから迅速に価値を得られるからです。拡張分析により、ビジネスユーザーや管理職がより簡単に関連データを見つけ、適切な質問を投げかけ、ビジネスの状況に沿ったインサイトをすばやく明確にすることができます。
拡張分析の利点の多くは、分析に関する深い専門知識を必要としないということです。しかし、専門家のアナリストや上級ユーザーにとっても、より徹底的な分析や、より迅速なデータの準備を行うために役立ちます。
拡張分析の利点とは?
拡張分析は、アナリストがより迅速、効果的、かつ正確に作業を行うことを可能にします。また、機械学習および自然言語テクノロジーにより、分析に対する技術的障壁がなくなるため、ビジネス分野の専門家が直接データを操作することが可能になります。つまり、データスキルや経験がそれほどなくても、高度なテクニックを利用できるということです。
アジリティ: インサイト取得までの時間の短縮
AI 搭載の拡張機能は、検索空間をトリミングし、関連するデータを適切なタイミングで適切な人に提示し、効果的な分析の道筋を示すことで、インサイトの探索スピードを速めることができます。ユーザーの行動を広範囲にわたって追跡することにより、システムはよりスマートな既定値を提示し、アクションを推奨することができます。また、ユーザーの反応に基づいて、時間の経過とともに既定値やアクションを微調整し、パーソナライズすることも可能です。データに対する質問への答えをすばやく得られるようになれば、より戦略的なタスクに集中することができ、インサイトを求めてデータを調べる時間を短縮することができます。
精度: より完全な全体像を提供
機械は眠らないため、繰り返し作業や計算の実行に極めて優れています。拡張分析を支える 人工知能(AI) および機械学習(ML) テクノロジーは、埋もれている部分まですべてを効果的に見ることができるため、ユーザーは徹底的な分析による豊富な情報に基づいて意思決定を行うことができます。そしてそれによって得られる全体像は、結論を求める際の確証バイアスを回避するのに役立ちます。
効率化: 業務の自動化
機械学習(ML)と人工知能(AI)は、高度に専門化された反復作業によってアルゴリズムが促進される分野で、非常に大きな進歩を遂げました。(例えば、関連するコンテンツや商品の「おすすめ」の提案をしてくる Web サイトや不正検出プログラムです。)拡張分析が提供するタスクの自動化により、データ準備、データ検出、統計分析の実行など、データ作業時の時間と労力を節約できます。
自信: 状況に応じた強力な分析
多くの場合、拡張テクノロジーは使いやすく、データ作業への障壁を軽減し、より幅広いグループの人々がインサイトをより簡単に取得できるようにします。拡張テクノロジーは、状況に応じてデータをモデル化して、明示化するように調整できるため、ユーザーは自分の直感に対する裏付けを得て、結論の内容に自信を持つことができます。分析テクニックについてあまり詳しく理解していないビジネスユーザーでも、自身の担当領域や業界については良く理解しているため、拡張分析によって提示された所見をどのように使用するか評価する際にこの専門知識を適用することができます。ビジネスワークフローに組み込まれ、他のツールやソフトウェアと統合されている拡張テクノロジーもあり、それを使用すれば、分析を中断することなく特定の質問についてすばやく探索できます。その場合、データ準備に追加の手順は必要ないこともあります。
拡張分析の機能
自動化されたデータ識別
人工知能(AI) を使用して、データの特定の属性、たとえばそのフィールドに グラフィック情報 (郵便番号など) や個人情報 (電話番号やメールアドレス) が含まれているかどうかを検出するモダン BI(ビジネスインテリジェンス) プラットフォームもあります。
また、PDF やテキストなどの形式の文書にあるデータテーブルを読み取ることができ、特殊な形式設定を自動的に削除し、それらを変換して効果的に分析するプラットフォームもあります。
統計のテクニック
拡張分析テクノロジーは、確実性が最も高い方法を基準として、 予測、クラスタリング、その他の統計アルゴリズムから最適なものを自動的に選択することもできます。また、モデルが自動的に実行され、ユーザーが見たこともないようなインサイトをデータ内から明らかにし、提示するシステムもあります。これらの手法は、データ内の外れ値や予想外の値の要因など、データポイントの背後にある「理由」を説明できます。エンドユーザーは、計算やコードを記述するための専門知識は必要とせず、これらの機能をクリックするだけで利用できます。
スマートなデータ準備
データを準備する際、ユーザーはバックグラウンドで動作するパワフルなアルゴリズムによって、より迅速にデータを準備し、手作業によるクリーンアップを最小限に抑えることができます。拡張分析システムは、発音や共通の文字によって関連語句のインデックス化とグループ化を行うことができるため、フィールドや値の手作業による検索や更新の時間を節約できます。
場合によっては、システムはNull 値を削除したり、フィールドを別々の列に分割したりするなどのクリーニング手順を推奨することもあります。
推奨事項の提供
多くの拡張分析システムの機能として有名なのは、人工知能(AI) 主導の推奨事項をユーザーに提示する機能です。推奨事項は、データ準備から検出、分析、共有まで多岐にわたります。たとえば、データの準備時に、システムがデータソースの結合やクリーニング手順を推奨したり、ユーザーが表示するデータの行と列に基づいて、使用すべき効果的なグラフの種類を推奨することなどがあげられます。
また、多くのビジネスが提供している「おすすめ」の提案のように、自身の役割、チーム、分析に関するブラウジング行動に基づいて分析コンテンツを探索するための提案を受け取ることもあります。この機能は、新しいユーザーを迅速にオンボーディングし、最も関連性の高いデータアセットを見つけるのに役立ちます。
自然言語による操作
自然言語クエリは、データクエリ言語やコードを使用するのではなく、普通の言葉で質問を入力してデータをクエリできるようにする拡張分析機能です。システムはテキストをクエリに変換し、ユーザーの質問の背後にある意図や文脈とのギャップを埋めるための提案を行い、ユーザーにガイダンスを提供します。これは多くの人が、基盤となるデータモデルを理解していなくても、データからインサイトを取得するのに役立ちます。
自然言語の生成により、データから得たインサイトがテキストで説明されます。これにはデータビジュアライゼーション(データの視覚化)の説明が含まれることもあります。普通の言葉によるこれらの説明は、視覚化の操作や解釈に関する深い専門知識がなくても、データのストーリーを理解するのに役立ちます。
Tableau 拡張分析が意思決定を強化する仕組みについてご確認ください
拡張分析のユースケース
拡張分析の多くのユースケースでは、人工知能(AI) と機械学習(ML)によって高度な分析をより素早く容易にできるようにしており、データスキルや技術的能力に関係なく、より多くの人々が最良の質問をして 豊富な情報に基づいて意思決定を行い、データから価値を導き出しています。
役割ごとの例
- 営業チーム は、自分たちのノルマと案件に関する傾向を調査するために拡張分析を使用することができます。
- 管理職は、役員会議中に、静的なレポートを使用するのではなく、データを簡単にライブで探索するために拡張分析を使用することができます。
- IT 部門 は、サーバーやシステムの使用が急増した要因を明らかにするために拡張分析を使用することができます。
- アナリストおよびデータスチュワード は、分析のためのデータクリーニング、変換、準備をより迅速に行うために拡張分析を使用することができます。
業界ごとの例
- サプライチェーン管理 の業界では、特定の場所で、期待されている速度で製品が提供されていない理由を把握するために、拡張分析を使用することができます。
- 旅行および観光 業界の組織では、顧客のアップセルまたはクロスセルに最適な、パーソナライズされたプロモーショナルオファーを見つけるために、拡張分析を使用することができます。
- マーケティングおよびコミュニケーション企業 では、広告キャンペーンの効果を調査し、データに隠れている可能性のある変数を明らかにするために拡張分析を使用することができます。
その他の一般的なユースケース
- 大企業は多くの場合、分析プログラムを新規ユーザーへと拡大する際に拡張分析を活用しています。その多くの機能が、データ作業の経験が浅い人々のオンボーディングプロセスを迅速化するのに役立つからです。
- 静的なレポートから、拡張されたインタラクティブな ダッシュボードに切り替える組織もあります。これにより、アナリストのレポート作成時間が節約されるだけでなく、データに関する質問を行うことへの障壁が低くなります。すると、より多くの人がダッシュボードを使用して効果的にデータに対する答えを得るという道が開かれます。
拡張分析の使用に関する課題とは?
拡張分析の使用に関する課題
人工知能(AI) および 機械学習(ML) は、一般の人々がどのようにして操作し、恩恵を得られるかではなく、その根本的な複雑さが原因で未だにテクノロジー自体に注目が集まっている現状があります。この現状と、機械が人間の仕事を奪うという 誤解 により、データ作業に取り組む人々に実用的なメリットをもたらすソリューションの採用が停滞している可能性があります。人工知能(AI) と拡張分析の価値を理解し、信用することがなければ、誰もこれらのツールを使おうとはしないでしょう。
拡張分析の限界とは?
一方で、こうした種類のテクノロジーが何を達成し、提供できるかについて、過大な期待を抱いている人もいます。このテクノロジーが実際にどのように人々を支援できるかについて十分理解せず、その実装およびサポートに関する明確な戦略を持たずに大きな投資を行うと、結果として埋没コストが発生する可能性があります。
また、人間と機械がそれぞれどの分野に長けているかを理解することも必要です。機械にとって、限られた状況の中で人の意図を理解することは困難です。機械はデータ自体を保有してはいますが、専門知識を持っている人間と同じように全体像を把握することはできません。そして、機械は使用に関する行動の監視やユーザーのフィードバックにより、時間をかけて人の好みを学んでいく必要があります。
データリテラシーと分析スキル
ツールとテクノロジーは大きな動きの中で重要な役割を果たしますが、従業員がデータについて批判的に考えることを学ぶことも必要です。誤ったデータや AI システムからの誤った推奨事項を基に行動すると、不適切な意思決定につながり、リソースも無駄にしてしまいます。そこで必要なのが データリテラシーや批判的な思考を持つ人材の開発です。
拡張分析が成功するのは、組織が全部門にわたって分析スキルの習得を優先し、誰もがデータ言語を理解し、自信をもって利用できるようになった場合のみです。説明や推奨が有効となるのは、利用者がデータのコンセプトを理解し、自分のビジネスデータとどのように関連付けられるかを理解している場合に限ります。たとえば、ビジネスの状況を把握している人間は、機械が相関関係を発見した際に、その因果関係を是認または否認する可能性が高くなります。
データガバナンス、管理、キュレーション
データは AI システムの基盤です。つまり、人工知能(AI) を使用した規範的な推奨事項や自動化タスクは、システムのトレーニングに使用するデータの品質および信頼性と直接の相関関係にあります。健全な データガバナンス または データ管理 行動に投資していない組織や、ビジネスインテルジェンス(BI )の導入に関する牽引力や自信を築くのに苦労している組織は、人工知能(AI) の採用を成功させる可能性が低いと言えます。
人工知能(AI) の倫理的な利用
アルゴリズムやモデルがさらに複雑になるにつれて、人工知能(AI)を理解できないものにしないことが重要です。言い換えると、組織は「ブラックボックス」と呼ばれる AI ソリューションに注意していく必要があります。透明性のある「説明可能な AI」というのが強力なコンセプトです。人々は、答えを導き出すのに使用された工程と論理を理解できることが必要です。そうすることで、バイアスがかかったモデルを組織が使用しないようにできるだけでなく、得た答えが意思決定のための情報として信頼できるということを人々に納得させることができます。
拡張分析のベストプラクティス
モダン分析の強固な基盤で始める
モダン BI (ビジネスインテリジェンス)は、アジリティと、セキュリティおよびガバナンスの必要性のバランスを保ちながら、あらゆるスキルレベルのユーザーが自ら質問に答えられる方法を提供しています。モダン BI プラットフォームにとって、人工知能(AI) と機械学習( ML) の機能はこのパラダイムの延長となります。それらはデジタルトランスフォーメーションに向けたさらなるステップを意味し、組織を従来型の ビジネスインテリジェンス(BI) とレポートから、誰もがデータに関して質問できるモダンな セルフサービス環境 へと変えていきます。
AI 分析への投資を拡大する前に成功を証明
大胆な新しいアイデアで前へと進む最善の方法は、スコープテストから始めることです。完璧なシステムをいきなり壮大な規模で展開することを求めるべきではありません。特定の部門やユースケースなど、非常に限定的なスコープで始めましょう。投資の価値が証明された後、組織全体のより幅広いグループへと展開していきましょう。
分かりやすい説明と教育で信頼とデータリテラシーを築く
影響力のあるデータ教育には、実践的スキルとクリエイティブな能力が必要になります。ビジネスプロセスに AI 分析を導入するには、これらのテクノロジーに対する信頼とともに、従業員による正しい判断が必要です。データサイエンティストは、実際の経験に基づいて、機械を信頼することをためらう人もいるでしょう。また、経験の浅い分析ユーザーは、拡張分析による推奨事項の扱い方や検証方法について、また、方向性を修正するために人間の知識を投入する方法について学ぶことが必要です。
コラボレーションとコミュニティで成功を育む
こうしたさまざまな機能は、既存のワークフローに組み込まれるため、データチャンピオンと分野の専門家が緊密に連携することで、ユーザーを成功に導き、より広範な採用を促進できます。他のユーザーのためにダッシュボードを作成するアナリストたちは、人工知能(AI) と機械学習(ML)の機能がどのように利用されているかを理解し、データそのものやデータの説明に関して、オープンなコミュニケーションを促すことが必要です。アナリストは、分野の専門家が正しいデータを使用して適切な意味合いで、自分にとって重要なデータポイントをドリルダウンできるように設定することができます。たとえば、スターターダッシュボードを利用すると、インタラクティブな探索や適用が可能になります。
ビジネスインテリジェンス (BI) における拡張分析の役割
データは、より良いカスタマーエクスペリエンスの構築、より効率的なオペレーションの実現、新しい収益ストリームの開拓を推進するうえで必要不可欠な要素です。データ分析を得意とする組織は、最も高い競争力と影響力を備えることができます。そのため、多くの人が AI 分析テクノロジーと拡張分析に注目しています。それらには、 機械学習(ML)、 自然言語による操作、複雑なアルゴリズムが含まれており、それらを活用して競争力の獲得や従業員の分析能力のさらなる強化、デジタルトランスフォーメーションの促進、変化の局面におけるビジネスレジリエンスの構築を進めています。
拡張分析は、人間の好奇心を適切な答えに、より的確に変換することを可能にします。このような機能により、データ作業にあまり慣れていない多くの人にも分析の使用を拡大することができます。これは、データに関するビジネス上の質問への答えを自信をもって得る方法を、組織の全員に提供することへと繋がります。
Tableau は、 AI (人工知能)を使用して人々が質問への答えを導き出し 、データを活用した有意義な意思決定を促進できるよう支援します。スマートなデータ準備やワンクリックでの統計的分析から自然言語クエリまで、Tableau の拡張分析機能は、より多くの人々がデータから知る必要のあることを学び、そこから得られる結果に自信を持つことを可能にします。Tableau の機能は、データに対する質問への答えを得られるように広範なビジネスオーディエンスを後押しし、増え続けるデータを活用できるように組織を支援します。
その他のリソース