先日、韓国のLGグループが世界最大規模の機械学習を行った超巨大人工知能 (AI、artificial intelligenceの略) のエクサワン (EXAONE) を発表し、話題を呼びました。情報社会の現代、今後ますます AI(エーアイ)のビジネス活用が加速していくことが考えられます。そもそも、人工知能 (AI) とは何なのか、メリットとデメリットはもちろん、ビジネス面での活用事例も見ながらおさらいしていきましょう。
AI (人工知能) とは何の略? 簡単に解説
AI とは、「Artificial Intelligence」の略で、日本語では人工知能のことを指します。人工知能を簡単に説明すると、人間のようにものを「学ぶ」能力のあるコンピューターのことを意味します。AI の対義語は、「Nature Intelligence」(ネイチャーインテリジェンス)で、人間が自然と持ち得る知能のことを言います。私たちの身近では、Appleの「Siri」、ソフトバンクの「Pepper」が、いわゆるAI として活躍しています。
AI という言葉は、1956年に初めて使われました。それ以降、人工知能の原理が研究されていますが、言葉の定義は研究者ごとに異なっているという現状があります。例えば、京都大学大学院工学系研究科の堀浩一教授が、「人工的に作る新しい知能の世界」と定義しているのに対し、国立情報学研究所の武田英明教授は「人工的に作られた、知能を持つ実体」と定義しています。
また、文部科学省はAI の中心技術を機械学習 (マシンラーニング) と定義しています。つまり、AI 技術とは人間の脳が解釈しきれないほどの莫大なデータを学習し、それらの情報をもとに人間の日常生活における利便性を向上させる技術のことをさすのです。
実は歴史は長い?これまでの AI の歩み
AI は最新の技術だと思われがちです。しかし、AIの歴史は意外と長いのです。AI はいつ登場したのかも含め、人工知能の歴史を 3 つの世代に分けて見ていきましょう。
第一世代 (1956 年~1960 年代)
AI の第一次ブームは、1956 年に行われたダートマス会議でジョン・マッカーシー教授が AI を「知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と紹介した後に起こりました。初期の人工知能では、コンピューターが「推論と探索」を行うことができました。しかし、日常生活における複雑な問題解決に対応できないということがすぐにわかり、ブームはすぐに終了してしまいます。
第二世代 (1980 年代~1990 年代)
この時代には、エキスパートシステムと呼ばれる「こういう場合はこれをしなさい。そうでない場合にはそれをしなさい」というような簡単なルールに応じることのできる AI が誕生しました。専門家があらかじめルールを入力しておくことにより素人でも使うことができるため、多くの企業が導入を始めました。しかし、人の手でコンピューターに「学習」させる必要があり、知識量の限界がブームの終焉へとつながっていきました。
第三世代 (2000年代~現在)
現在は、機械学習 (マシンラーニング) と深層学習 (ディープラーニング) の時代と呼ばれています。現代の AI は、莫大なデータ (ビッグデータ) の学習から知識を得るだけでなく、それらの知識の特徴性までをも学習することが可能となりました。このディープラーニングは私たちの日常生活でも使われるようになり、身近なところでは、写真の顔画像自動認識などが例として挙げられます。
AIのメリット、デメリット
AI の発達は、私たちの日常生活を効率化するだけではなく、ビジネス面においても大きく貢献しています。ここでは、人工知能の利点と問題点をそれぞれ見ていきましょう。
AI のメリットとは?
人工知能 をビジネスに取り入れる一番のメリットは、単純業務の効率化です。特に、チャットボットやコールセンターの応対業務として AI を取り入れると、お客様の求める答えを迅速に提供することができ、顧客満足度向上にもつながります。また、AI を取り入れることにより、人件費のコスト削減を行うこともできます。
次に、データ分析やそれをもとに行う予測機能も AI の利点と言えるでしょう。データの分析をもとにマーケティング業務を行うことは、お客様により良いサービスを行う上で最重要項目といえます。また、データ予測機能は医療分野でも大いに役立ちます。医者が覚えきれない量の医療データや CT・MRI の画像を、AI を用いて分析することにより、的確な早期診断が期待できます。
また、安全性の向上もメリットの 1 つにあげられます。例えば、国土交通省のレポートによると、AI を用いた自動運転車は、その車に起因するであろう事故の 9 割ほどを防ぐことができるというのです。
AI のデメリットとは?
AI を導入するためには、既存システムの見直しが必要になるうえ、新システムの導入には時間とコストがかかります。長期的に考えると利点の多い投資になりますが、導入時に一時的なコストがかかるということはデメリットと言えるでしょう。
また、人工知能によって仕事の効率化をはかることができる一方、AI が行うことのできる単調作業の雇用が減少するという問題点が考えられます。将来的には、事務員、レジ係、カスタマーセンター、スポーツの審判、受付係などの雇用が減るだろうと予測されています。しかし、人間にしか行うことのできないクリエイティブな能力を必要とした雇用や、データを扱う仕事など、専門性のある雇用は今後増え続けていくでしょう。
情報漏洩のリスクも、多大なデータを扱う AI のデメリットといえるでしょう。しかし、情報社会の今、情報漏洩のリスクは AI に限った話ではありません。今後は、どんなビジネスもセキュリティ対策を万全にしていく必要があるでしょう。
AIで動く身近な物・サービスとは?
AIで動く身近な物・サービスとは?人工知能 (AI、artificial intelligenceの略) という言葉を耳にすると、漠然とデータ分析や技術研究に使われているものだと考える人が多いかもしれません。しかし、現代では日常生活で触れるような身近なサービスの中にも、AI (エーアイ) の導入が加速しています。
AIの種類
AI とひとくくりにまとめられることがありますが、AI にはいくつかの種類が存在します。ここでは、代表的な種類について見ていきましょう。
特化型・汎用型
特化型 AI は、決まった役割を担う AI の総称です。例えば、音声や画像を認識する AI や、自動運転システム、天気予測などがあります。それに反し、汎用型 AI は場面に応じてあらゆる知的作業を自律して行うことのできる AI を指します。現時点で存在するすべての AI は、特化型 AI という種類に分類されます。
強い AI・弱い AI
強い AI とは、人間と同じような自律性と知性を持つ AI のことを指します。それ以外の AIは、すべて弱い AI に分類されます。特化型 AI と同様に、現時点で存在するすべての AI は弱い AI という種類に分類されます。自意識を持つ強い AI が実現するには、さらなる研究や課題の克服が必要とされています。
ビジネスでの活用事例
次に、ビジネス面における実際の活用事例をいくつか見ていきましょう。
ゲーム業界
2016 年 3 月に、アルファ碁 (AlphaGo) と呼ばれる AI がトップ棋士の李九段に囲碁のゲームで勝利したことは日本でも大きなニュースになりました。他にも、チェス、オセロ、将棋などのボードゲームは、AI がゲームのルールを学習しやすいこともあり、AI に適した活用例だと言われています。
E コマース業界
データ分析が重要な E コマース業界では、Amazon や楽天を筆頭として AI が駆使されています。オンラインストアで買い物をした後、「おすすめ商品」や「関連商品」が出てくるのは、AI が活用されているからです。
カスタマーサービス業界
受付業務のロボット AI においては、ソフトバンクの「Pepper」が有名です。また、コロナ禍で対面業務を避ける傾向が強まったことにより、レストランなどの接客業でも AI を搭載したロボットを導入する企業が増えてきています。
自動車業界
先述したように、自動運転車の開発には AI が大きく活用されています。2016 年にはトヨタ自動車がアメリカに研究所を設立し、AI 業務に力を入れています。
医療業界
人工知能の画像認識機能は、医療業界での画像診断に実用化されています。代表的なものは IBMのワトソン (Watson) と呼ばれる AI です。過去の莫大な診療データなどももとに、患者に最適な診療を提案することに役立ちます。
今後の AI の技術発展と未来
AI は、今後も人間社会の業務効率化に大きく貢献することが期待される一方、課題や懸念点も多く残っている分野です。現存しない強い AI や汎用的 AI が登場する未来もそう遠くはないかもしれません。哲学者のレイ・カーツワイル氏は、AI の知能が人間の知能を超える転換点を「シンギュラリティ」と命名し、2045 年にはシンギュラリティが訪れると警鐘を鳴らしています。テクノロジーの発展を享受しつつ、その危険性も理解していくことが今後は必要となるでしょう。