Tableau によるデータの可視化で、 データドリブン経営の文化と人材を育む|NTTコミュニケーションズ株式会社

業務の効率化・可視化に貢献

導入の背景

大量のデータを可視化するために必要だったセルフサービス BI

NTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)におけるデータ活用の取り組みは、2016 年に遡る。当時の同社システム部は、大小合わせて 1000 近くのシステムを管理しており、そこには大量のデータが存在していた。このデータを単に管理するだけではなく、分析してサービスや業務の改善に活かすべく組織横断的なプロジェクトが立ち上がった。

分析環境として、セキュアに分析できるようデータ分析用の仮想環境を用意し、顧客データなどは利用者 PC 端末にダウンロードできない仕組みにした他、膨大なデータの中から目的のデータを探しだしやすいように「データカタログ」も整備した。そうした中で、データを分析・活用できる人材を増やすためのセルフサービス BI のプラットフォームとして選択されたのが「Tableau」だった。

「可視化ツールをいろいろ調べていたところ、NTT ドコモのマーケティング担当者からTableau が使いやすいと聞き、実際にルック&フィールなどを確認して選びました」と話すのは、当時、システム部第三システム部門の担当部長で、現デジタル改革推進部担当部長の駒走聡昭氏だ。

駒走氏は Tableau について、「他のBI製品がブロックを組み上げる印象だとすると、Tableau は粘土のような柔軟さがあります。細かいところで融通が利いて、触っているうちにダッシュボードできあがる、そのような感じです」と評する。

全社横断プロジェクトにおいて、社内での分析事例の紹介、分析受付窓口の設置、トレーニング講座の開催などの活動を行うことで、NTT Com 社内でデータ分析・可視化の文化が次第に醸成されていく。

Tableau の導入・運用環境について

デジタル改革推進部主導で、データ活用の統合基盤を整備

こうした中、2019 年 NTT Com では全社 DX 推進体制が立ち上がり、副社長が CDO(Chief Digital Officer)を兼任し、社内の全組織に DO(Digital Officer)が設置された。当時、経営企画部オペレーション戦略部門に所属していた現デジタル改革推進部担当部長の松本貴宏氏は、社内の DX 推進の動きに合わせて、2020 年 4 月にデジタル改革推進部にはデータドリブンマネジメント推進部門も創設されて新組織としてスタートした。

デジタル改革推進部は、セールス、サービス、オペレーションなどの業務を跨いだ全社 DX 施策の実行マネジメントや、NTT グループ各社との連携窓口という役割を担う。共通施策として、「プロセス改革」「ワークスタイル変革」「データドリブンマネジメント」が掲げられ、特にデータドリブンマネジメントにおいては、「経営指標の可視化/データドリブン経営」や「システムの在り方の抜本的見直し」をテーマとして取り組むことになった。

「全社のデータを統合した分析基盤の上で、データのカタログであるデータマートを作り、そのデータマートを Tableau などの BI プラットフォームを使って可視化して、全社でデータを活用できるようにした。統合したデータは、可視化だけでなく、機械学習や他のIT システムとの連携も容易にできるようになっている。また、上流からできるだけ綺麗なデータを流すという思想のもと、マスターデータマネジメント(MDM)にも着手した」(松本氏)

データを統合し、分析する上で、マスターデータの統一は重要な意味をもつ。例えば、工事の計画番号や決裁番号、お客様の ID 、ビル番号などのデータが各システムでバラバラになっていると、システムを跨いだ分析をする際に、変換が必要などかなりの手間がかかってしまうからだ。また、データドリブン経営をサポートするための「マネジメントダッシュボード」も作成している。作成開始から1年が経過し、セールス、サービス、オペレーションという部門をまたいで可視化できるダッシュボードが、いつでも利用できるようになっている。なお、ダッシュボードごとに閲覧権限を設定することで、経営層はもちろん、従業員まで全社のメンバーが参照できるようになっている。

 

図:データ活用のための基盤を整備

図:データ活用のための基盤を整備

Tableau は粘土のような柔軟さがあります。細かいところで融通が利いて、触っているうちにダッシュボードできあがるイメージです。

Tableau の導入効果について

社内コンテスト「ダッシュボード EXPOʼ22 」を開催し、ボトムアップを図る

統合基盤の整備やマネジメントダッシュボードの作成など、全社にまたがる抜本的な改革をトップダウンで進める一方で、社員の自発的な変革を促し「クイック・ウィン」で成果を出すボトムアップによるアプローチにも力を注いだ。

その一例が、社内コンテスト「ダッシュボード EXPOʼ22 」だ。これは、NTT Com 内でそれまでに作成した 3000 にものぼるダッシュボードの中で、優れたものを提案していただき、表彰するという取り組みだ。

例えば、このコンテストで賞を受賞した「クライアントビジネスマップ」は、顧客の IT 投資額をポテンシャルと推定し、そのポテンシャルにどれだけ NTT Com やグループ会社の営業が関与しているかを可視化して営業戦略を策定。ここに寄与するのが Tableau のダッシュボードだ。優れたダッシュボードは特別サイトで公開し、全従業員が閲覧できるようにすることで、「自分もダッシュボードづくりをしてみたい」と感じてもらい、DX が「楽しい」「ワクワクする」ものだと思ってもらえることを目指している。

「こうした成果もあって、業務の効率化・可視化は、かなり進んだと感じています。会議で資料を見せる際にも、パワーポイントへのグラフ貼り付けではなくダッシュボードを提示するケースが増えてきています。これも、分析・可視化の文化が社内に根付いてきているからだと思います」と、松本氏は手ごたえを感じている。

社内コミュニティづくりにも注力

コンテストの開催と並行して、社内でのコミュニティも盛んになってきている。2019 年ごろから、社内のコラボレーションツール上にあったデータ分析のコミュニティを引き継ぎ、2022 年には 2000 人近くが参加する規模にまで成長している。また、デジタル改革推進部のメンバーやTableau 社の担当者のセミナーを開催することで、データ分析スキルを社内に広げる施策も展開している。コミュニティの育成について駒走氏は、「Tableau に限らず、ツールを社内で普及しようとすると、『まず、つくってほしい』と依頼がきて、それに応じると次もまた作成依頼が来てしまうということになりがちです。これでは、社員はいつまでたっても成長しません。そのためにも、社員同士が自発的に助け合うためのコミュニティの育成は重要だと考えています」と話す。

業務の効率化・可視化は、かなり進んだと感じています。会議で資料を見せる際にも、ダッシュボードを提示するケースが増えてきています

今後の展開について

データ活用に適した 「データマート」を公開していきたい

また駒走氏は、今後について、データ活用に適した「データマート」を次々と公開していきたいと意欲を示している。具体的には、管理会計ベースの売上データや、Salesforce から取得できる営業活動の商談件数といったデータマートを順次公開することで、可視化や分析に役立てていく方針だ。例えば、商談に関するデータを、サービス開発担当者が見ることができれば、自分のサービスがどんな顧客にどのぐらい売り込まれているのかが分かり、顧客を意識したサービス開発ができるようになる。NTT Com の目指しているセールス、サービス、オペレーションという部門を跨いだデータ活用が可能になるわけだ。

最後に松本氏は、Tableau への評価として、「ツールの提供だけでなくコミュニティの育成にも協力いただき、データ活用文化の醸成に大きく役立っています。これからも活用を促進していきますので、引き続きサポートいただきたいです」とエールを送ってくれた。

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