Konica Minolta Japan

コニカミノルタ: DX推進の一環として全社の経営データをTableauで可視化


データ活用の迅速化

多様なデータを組み合わせた活用

導入の背景

1873 年に創業したコニカと、1928 年の創業したミノルタが経営統合し、2003 年 8 月に誕生したコニカミノルタ株式会社(当初はコニカミノルタホールディングス株式会社)。その直近の歴史は変革の歴史だったと言えます。2006 年に創業事業だった写真フィルムやカメラ事業から撤退し、事業構造を大 きく変革。2013 年には傘下 7 社を吸収合併し、社名もコニカミノルタへと変更されています。現在はデジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリント、ヘルスケア、インダストリー事業を展開。約150か国で 4 万人を超える従業員がこれらのビジネスに従事しています。

DX にも積極的に取り組んでいます。2018 年に業務改革部を立上げ、デジタル技術を活用した業務改革を推進。さらに、2020 年度からは中期経営戦略「DX2022」に基づき、プロダクト主体のモノ売りビジネスから、DX による高付加価値サービス(DX as a Service)を主体としたビジネスへと業容転換を図っています。同社の DX は社外からも高く評価されており、経済産業省の「DX 銘柄 2020」にも選定されています。

「当社のDX は、まず 2030 年という未来の社会課題を見据えた上で、そこからバックキャストする形で顧客価値を定義、ここを起点に無形資産と事業の競争力を強化することで、持続的な価値提供を目指しています」。このように説明するのは、コニカミノルタ 常務執行役 CIO/CSO として DX 改革とDX ブランド推進を担当する市村 雄二 氏。そのためにありとあらゆる技術とビジネスモデルを使い、 グループ全体の変革を進めていると語ります。「既存の組織やプロセスを破壊し、ゼロベースで再構築することも厭いません」。

その一環として進められているのが、経営データの「見える化」です。

「以前は Excel 中心で経営データの収集・分析を行っていましたが、その作業量は膨大でした」と振り返るのは、コニカミノルタ 業務改革部 改革推進グループでグループリーダーを務める今泉 幸博 氏。経営会議の資料作成にも数日間かかっていたと言います。「そのため経営会議のタイミングではデータがすでに古くなっており、タイムリーな意思決定が困難でした」。 市村氏も「このようなデータが上がってきても、現場の状況はすでに変化しています」と指摘。古いデータで現場に指示を出し、結果的に現場が混乱するといったことが、日常的に起きていたのだと言います。

データ分析から意思決定や実行まで、一 気通貫でつなげていく仕組みを作り上げていきたいと考えています。また数字の意味 を共有し、同じ土台で議論できるようにすることも、重要だと考えています

Tableau の導入・運用環境について

このような問題を解決するために活用されているのが Tableau です。Tableau は会社全体の標準データプラットフォームになっており、Tableau 活用の支援活動も積極的に行われています。その基本的なアプローチは「業務部門のニーズを業務改革部でヒアリングし、それぞれに適した方法論をこちらから提示した上で、実際のデータ活用は各業務部門で行ってもらう、というものです」と細木氏は説明します。

これに加え、社内コミュニケーションを担当する部門とも積極的に連携。同部が制作する、社内 DX 事例を発信する連載記事の中でも、Tableau 活用情報が紹介されています。「トップダウンとボトムアップを最適な形で組み合わせながら、Tableau 活用を広げています」(今泉氏)。

このような活動が実を結び、2020 年 12 月開催の Tableau 関連の社内イベントには、各事業部門から 500 名以上が参加。すでに作成されているダッシュボード数も数百規模になっています。

 

Tableau 選定の理由について

標準データプラットフォームとして Tableau が選ばれた理由は、大きく 3 つあると今泉氏と細木氏は説明します。

第 1 はきめ細かいデータ分析が簡単に行えること。

第2 はデータ取り込みを柔軟に行える接続性の高さ。

そして第 3 は定着に向けたサポートの充実です。

これらに加え、Salesforce が提供する AI 機能「Einstein Discovery」との統合計画が、2020 年に発表されたことも採用を後押ししました。これによってさらにデータ活用が加速すると期待されたからです。

創造的な時間が増えました。データをどう 分析してどう見せるかといったことに費やさ れる時間が大幅に減り、データからどのよ うな知見や洞察を見つけ出すのか、といっ たことを意識するようになっています

Tableau の導入効果について

Tableau の活用は次の効果をもたらしています。

データ活用の迅速化

Tableau を用いることでデータ集計・分析・レポーティングに必要な時間を短縮でき、タイムリーなデータ活用が可能です。「以前は 3 日必要だった資料作成時間が数時間になり、会議もダッシュボードで進められるようになりました」と今泉氏は語ります。

多様なデータを組み合わせた活用

 Tableau に多様なデータを取り込んで組み合わせることで、これまでは難しかった分析も容易になりました。その 1 つとして挙げられたのが、コロナ禍の拡大と売上との相関分析です。その他にも労働災 害の地域傾向や要因分析などが行われています。

Tableau で感動したのは気が利いている点です。データ分析者がやりたいと思うことを、細部まで考え抜かれた設計になっていると感じています。また限られた時間でもダッシュボードを作り込むことができ、修正がその場でできることも気に入っています

今後の展開について

今後はTableau 活用のベストプラクティスをさらに積み増ししていくと共に、Einstein Discovery の導入・活用も積極化してく予定です。2020 年 9 月には業務改革部での利用と、主要事業での販売生産性向上に向けた導入を開始。2021 年はそこで得られた知見を、他の業務部門にも順次提案していく計画です。

「日本企業は暗黙知を共有しやすいという強みがありますが、データのチカラをこれと融合することで、さらなる強みを発揮できるはずです」と市村氏。経営データの見える化は経営者の判断基準という暗黙知を、裏付けのある形で現場に共有するための、強力な基盤なのだと語ります。「これが実現されれば現場でも、経営者と同じ判断を下せるようになります。そしてこれができる日本企業は、グローバルでも高い競争力を発揮できるようになるでしょう」