LINE リサーチ「ライトコース」に Tableau を導入

レポート納品までの期間短縮

サービスの付加価値向上

導入製品:Tableau Desktop、Tableau Server

 

導入の背景

セルフ型の調査が可能な LINE リサーチの「ライトコース」

リーチできる調査対象が幅広く、多くの WEB アンケート調査では難しい若年層の回答収集も容易という特徴を持つ「LINE リサーチ」。LINE アプリの月間アクティブユーザー数は約8,900万人(2021年9月時点)に達しており、活動年代人口の大半を占めています。LINE リサーチのモニターも559万人(2021年10月時点)に上っており、「日本市場の縮図」といっても過言ではありません。

「LINE がスタートしたのは2011年ですが、2013年には LINE リサーチの前身となるアンケートの仕組みは立ち上がっていました。」と振り返るのは、LINE 株式会社(以下、LINE)のインサイトリサーチ室で室長を務める地福 節子氏。その後、約3年間は社内向けに運営されていましたが、2016年11月には LINE リサーチとしてリサーチサービスの外販が始まったと説明します。

ここでまず提供されたのが、調査のプロが課題ヒアリングを行い、調査設計や集計分析まで対応する「サポートコース」でした。これに加えて2017年11月には、調査をセルフ型で行える「ライトコース」のβ版を開始。これも2018年2月に正式リリースしています。

「昨今の専門人材の人手不足から、調査のコンサルが可能な人を確保することは容易ではありません。サポートコースのビジネスは、LINE リサーチ立ち上げの当初から、最終的にはハイスペックに向かうだろうと感じていました」と地福氏。 そこで専門家でなくても、誰もが手軽かつ直感的に分析できる、しかし調査としての価値を損なわない仕組みも同時に必要になると考えていたと語ります。「ライトコースはこの考えにもとづいてサービス化したものです」。

以前は Excel マクロを使って人力で動的な非定型データの集計作業を行っており、その作業とダブルチェックで2~3日かかっていました。作成されたファイルは数十以上、それらを ZIP でまとめてメール送信しておりました。いまではこれらの作業がゼロになっています。

Tableau の導入・運用環境について

自動化とスピードアップのため Tableau を導入

ライトコースの立ち上げに向けてまず行われたのが、社内リサーチャーへのヒアリングと、それにもとづくアンケート設計でした。

数パターンの質問セットや、配信・回収には「誰もが手軽かつ直感的に分析できる、しかし調査としての価値を損なわない仕組み」の思想が導入されています。

「当初は必要最小限として、アンケートを行った後の回答の生データと、簡単なトータル表を提供していました。しかし、設問間クロスは標準では提供ができていませんでした」と言うのは、LINE のインサイトリサーチ室 企画チームでマネージャーを務める齋藤 祐子氏。

これに対応するため各設問と分析軸の全クロス集計表をオプションで提供することになりましたが、そのデータを生成する作業に時間がかかる、そして見方も複雑、という問題が発生していたと語ります。「「誰もが手軽に」というには集計周りはまだこなれていないなという自覚はありました」(齋藤氏)。

「もっと自動化してスピードアップするため、BI 機能を自社開発することも考えました。また複数の BI 製品の比較検討も並行して進めていました。その中で、ユーザーから『分析に Tableau を使いたい』というご要望も数多くいただいていました。

そこでライトコースに Tableau を導入してはどうかという話になったのです」(地福氏)。

導入に向けた検討が本格化したのは2020年3月。Tableau の担当者とミーティングを行った上で、翌月には検討プロジェクトがキックオフされます。

「私は2020年5月に参加したのですが、すでに PoC が始まっていました」と言うのは、LINE のインサイトリサーチ室 企画チームの葛貫 辰憲氏。ここで Tableau の経験を持っていた葛貫氏がいくつかの Viz を作成し、その使い勝手などを検討した結果、2020年6月には正式に採用が決定したと振り返ります。

Line Graphic 1

Tableau 選定の理由について

ビジュアルのわかりやすさと直感的な操作性を評価

Tableau の採用の決め手になったのは、ビジュアルのわかりやすさと、直感的な操作性です。

「Tableau 採用に行き着くまでには様々な BI 製品を検討しましたが、アンケート調査という動的な非定型データを柔軟に見せたいという、当社の要望にかなう製品はなかなか見つかりませんでした」と地福氏。このような中、Tableau はこの要望に対して柔軟に対応でき、しかも優れたビジュアライズ機能があることがわかったと言います。「これなら調査の専門家でなくても、スピーディに分析と可視化ができると判断しました」。

これに加え「BI 業界でメジャーであり、熱心なファンから発せられる情報が多いことも、魅力の1つです」と指摘するのは齋藤氏です。「実は LINE 社内にも Tableau の熱烈なファンがおり、目の前でパッと Viz を作って見せてくれるなど、積極的な勧誘を受けました。このようなファンがいることも高く評価しました」。

Tableau の導入効果について

Tableauによって高まったサービスの価値

ライトコースにおけるTableau提供が始まったのは2020年12月。現在は以下の4種類のダッシュボードが提供されています。

  • 基本属性項目
  • 設問毎の回答数グラフ
  • 自由回答記述のフィルタリング表示
  • 複数設問のクロス集計表

これによって次のような効果が得られています。

レポート納品までの期間短縮

以前はアンケートが終了してから集計結果の納品まで、人力による作業が必要だったため、2~3営業日必要でした。現在では Tableau で自動集計を行っているため、集計作業は必要なく、アンケート終了後に、他のすべての納品物と共に集計結果が利用可能。「スピードを求めるお客様にはたいへん好評です」(齋藤氏)

サービスの付加価値向上

これまでオプションとして提供していた設問間クロス、属性クロスからなる「全クロス集計」を、標準機能として提供することが可能になりました。その結果サービスそのものの付加価値が向上し、顧客に満足いただけるようになり、繰り返しご利用いただける方も増えました。

顧客層の拡大

「Tableau をライトコースに組み込んでからは『Tableau を使いたい』という理由で、お申込みくださるお客様も増えています」と齋藤氏。Tableau で可視化したグラフをキャプチャーし、それをプレスリリースに使うケースもあったと言います。「最近では、サポートコースでも Tableau を使えないか、というお問い合わせもいただくようになっています」。

LINE ならではの広告に連動する要素が追加されたダッシュボードの提供を検討中です。LINE 広告で保有する趣味・関心項目を近い将来、ダッシュボードに組み込んでいく予定です。

今後の展開について

今後も Tableau でライトコースを拡充

「このようなお問い合わせもありますが、まずはライトコースにおける Tableau 活用の拡充を進めていきたいと考えています」と地福氏。ライトコースで提供するダッシュボードの数を増やしていくことで、顧客にとっての価値は間違いなく高まるからだと言います。

「すでに新しい情報の追加されたダッシュボードの提供を検討中です」と言うのは葛貫氏。新しい情報というのは、LINE ならではの広告に連動する要素。LINE 広告ではターゲティング用にみなし属性として趣味・関心項目を保有しており、近い将来にはこれらの項目も調査結果に紐づけて、LINE リサーチの Tableau のダッシュボードに組み込んでいく予定だと言います。「今後はユーザーニーズに応じて、トラッキング調査のテンプレート化やカスタマイズされたワークブックの提供も視野にいれています。これからも多くのお客様に共通するパターンをライトコースに取り込み、手軽かつ直感的なアンケート調査が可能な環境を拡充していきたいと考えています」(地福氏)。

提供するダッシュボードを増やしていくこと。今後はユーザーニーズに応じて、トラッキング調査のテンプレート化やカスタマイズされたワークブックの提供も視野にいれていきたいです。