KYB Japan

内製していたデータ可視化システムを Tableau へ


ユーザーニーズへの迅速な対応と分析の共有が可能に

ユーザー要望への迅速な対応

データ分析・可視化の時間短縮

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導入の背景

データでの意思決定が不十分、分析の属人化も大きな課題に

最近では日本の製造業でも、生産現場に IoT を導入する企業が増えています。しかしその中には、センサーなどからのデータ収集にとどまり、そこから新たな知見を抽出し次のアクションに結びつけるところにまで、至っていないケースが少なくありません。このハードルを乗り越えるため、Tableau を活用しているのがカヤバ株式会社です。

同社は油圧技術を核として、自動車向けショックアブソーバーや鉄道向けサスペンションシステムなど、幅広い製品群によって多岐にわたる産業を支え続けている企業。2019 年には創業 100 年を迎えた老舗企業でもあります。

「当社ではすでに 2000 年頃から各ラインの生産実績を可視化できるシステムを運用し、ラインの可動(べき動)率分析などに取り組んできました」と語るのは、DX 推進部の井指 諒亮 氏。このシステムは現在もデータ分析のベースとなっており、現場主体でのデータ分析が進められていると言います。

しかし「従来は経験や実績をもとにした意思決定の方が圧倒的に多く、データにもとづく意思決定はまだ十分だとは言えない状況でした」と付け加えるのは、DX 推進部の瀧野 慎介 氏。データ分析の方法も、エンジニアであれば MATLAB や LabVIEW、Python などで処理をすることが多く、それ以外の人であれば Excel や CSV ファイルの利用が一般的だったと言います。「そのため分析方法が属人化しており、分析結果の共有方法にも課題がありました」。

また、同社の生産設備やそれらを運用するシステムは内製されたものが多く、一般的なパッケージの適用が難しいという問題もありました。

 

Tableau の導入・運用環境について

AWS 上で Tableau を動かし多様な情報源と連携

この問題はユーザーニーズに柔軟かつ迅速に対応することが難しく、さらに属人的な分析・可視化が続いてしまうという懸念もあったため、2017 年には既存システムの可視化部分を BI ツールに置き換えるための検討に着手。

複数の BI 製品を比較検討した結果、この問題を解決できると評価されたのが Tableau でした。2019 年 4 月に Tableau の採用を正式決定。各種生産設備からのデータを集約している AmazonRDS や Oracle サーバー、各ユーザーが持っている Excel シートなどからデータをTableau に取り込み、分析・可視化するダッシュボードが提供されています。なお Tableau は AWS 上で稼働させていますが、AWS の環境構築は CTC が支援しています。

「ダッシュボードの作成で特に意識したのは、できるだけシンプルな画面を作ることです」と語るのは、DX 推進部の雪吹 研斗 氏。また直近半年分のデータだけでも 1,000 万レコード近くになるため、処理速度の追求も重視したと言います。「ダッシュボードの作り方については、テキストの例題や練習問題に 2 ~ 3 日取り組むことで理解できました。その後、社内データの理解や画面構成の検討に 2 ~ 3 週間かけて、最初のダッシュボードを作成しました」。

その一方で、Tableau 活用を広げるための取り組みも展開。全社員を対象にした Tableau 講習会を年に 2 回開催しており、まだ分析にサポートが必要なメンバーもいますが、現在約 80 名の Creator が Tableau を活用したデータ分析に取り組んでいると言います。またこのような先行ユーザーを孤立させないため、月に 1 回の頻度で事例やノウハウ共有の場(社内コミュニティ活動)も設けられています。

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Tableau 選定の理由について

ユーザー自身がデータ分析を行いやすいことを高く評価

Tableau 選択の理由としては、データ分析・可視化の共通基盤を作ることで属人化を回避できることや、内製されたシステムとも連携しやすいことが挙げられていますが、それ以外にもいくつかのポイントがあったと井指氏は述べています。そのなかでも特に重要だったのが、「ユーザー自身がデータ分析を行いやすいこと」だと言います。

「セルフサービス型 BI である Tableau は全世界でユーザー数が多く、コミュニティの活動も活発で多様な情報が入手しやすいため、ユーザー自身の課題解決の手助けにもなります」。

これに加えて「直感的に操作でき、自分が作成したい画面を簡単に実現できることも、大きなメリットです」と語るのは雪吹氏です。「ドラッグ&ドロップで適当に配置しても、見やすいデザインの画面が出来上がります。またユーザーへの説明も行いやすく、ダッシュボードを使ってもらいやすいとも感じています」。

セルフサービス型 BI である Tableau は全世界でユーザー数が多く、コミュニティの活動も活発で多様な情報が入手しやすいため、ユーザー自身の課題解決の手助けにもなります

Tableau の導入効果について

ユーザーニーズへの迅速な対応と分析の共有が可能に

データ分析・可視化基盤として Tableau を採用したことで、すでに次のようなメリットが得られています。

ユーザー要望への迅速な対応

「以前は自社開発システムをウォーターフォール型で機能拡張していたため、ユーザーの要望を取り込むまでに数か月 ~ 1 年程度かかっていました」と雪吹氏。現在ではユーザーの要望に合わせてプロトタイプの作成・改善を行うことで、2 週間 ~ 1 か月程度で対応できるようになっていると言います。

データ分析・可視化の時間短縮

データ分析・可視化の作業時間も短縮されています。「体感では Excel に比べて 1/2 ~ 1/3 程度になっていると思います」(雪吹氏)。

多角的な分析が可能

以前は個別のワークシートで分析していたデータを、Tableau 上で組み合わせて分析することで、より多角的な分析も可能になりました。また操作が簡単なため、データを可視化しながら新たなアイディアが出てくることも増えていると言います。

分析方法や分析結果の共有も容易に

ダッシュボードを共有することで、データ分析結果も簡単に共有できるようになりました。また作成時の作業内容も保存されているため、それを見ることでどのような意図でダッシュボードが作成されているのか、自分が望む結果を得るにはどこを変更すればいいのかも、容易にわかると雪吹氏は言います。「そのため、ベースとなるダッシュボードを共有することで、イメージを持って頂きながらユーザー自身で分析を始めてもらいやすくなりました」。

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ベースとなるダッシュボードを共有することで、イメージを持って頂きながらユーザー自身で分析を始めてもらいやすくなりました

今後の展開について

全社共通の経営ダッシュボード実現を目指す

すでに生産実績システムとの連携が実現されており、工場設備の故障予知システムや MES システムとの連携も進みつつあります。また(社内規定により現在接続できていない)Box との直接的なデータ連携も、IT 企画部とともに検討中だと言います。

その一方で、顧客に提供するサービスでは、Tableau と Salesforce の連携も視野に入っていると言います。「お客様の設備で使っている作動油の状態をチェックするサービスを現在開発中ですが、これを Service Cloud で提供し、その中で Tableau による可視化を行うことを検討しています」(瀧野氏)。

「また、経営から現場まで同じデータを用いた経営ダッシュボードを実現し、それを全社員が参照して意思決定する企業風土を確立することも目指しています」と瀧野氏。そのため、Viewer を使えるユーザーをさらに増やし、経営層での活用も広げていきたいと語ります。

 

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は、お客様のパートナーとなる総合ITサービス企業です。コンサルティングから設計、開発・構築、運用・保守サポートまで、先進のITソリューションやクラウドサービスを組み合わせてお客様の課題を解決します。通信、放送、製造、金融、流通・小売、公共・公益、ライフサイエンス、科学・工学など、全ての分野で最適なサービスを提供します。また、2019 APJ Partner Awardsで、日本国内におけるTableauソリューションの提供実績が評価され「Partner of the Year, Asia Pacific」を6年連続で受賞しました。

経営から現場まで同じデータを用いた経営ダッシュボードを実現し、それを全社員が参照して意思決定する企業風土を確立することも目指しています