多様な情報源からデータを直接 Tableau Cloud へ

データ集計・分析の作業負担軽減

データ活用サイクルの高速化

導入の背景

ID-POS データの登場で Excel での分析が限界に

DX を実現するためにデータ活用を推進したいが、そのために DWH や分析用サーバーを導入するのはハードルが高いと感じている企業は、決して少なくありません。このジレンマを軽々とクリアしたのが日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社(以下、KFC)です。同社は「ケンタッキーフライドチキン」を日本で運営する企業であり、国内に 1,150 店舗以上を展開、店舗経営のために集められる情報も膨大です。

「以前から数字を見て判断する文化は醸成されていましたが、Excel メインで集計・分析が行われていたため、大量データの分析負荷が大きく、意思決定に使われるまでに時間がかかるという問題を抱えていました」と振り返るのは、KFC 経営企画部で部長を務める中田 陽子 氏。例えば営業週報の作成には、営業管理部門の担当者 2 名が毎週 1~2 時間を費やしており、それを受け取る管理職にとっても大容量の Excel シートを見て意思決定につなげることは、大きな負担だったと語ります。

このような状況を変えていくため、2015 年にはデータ戦略企画課を設置。データ活用のあるべき姿を確立するための検討が始まります。

「その大きな背景としては共通ポイントプログラムに加入したことで、消費者と紐付いたID-POS データが大量に発生したことがあります」と中田氏。ID-POS 分析を行うツールも用意されていましたが、それを使える人が限られるため、分析業務が特定の人に集中してしまうという問題もあったと言います。「また 2012 年には KFC 公式アプリの提供もスタートしており、そのログデータも蓄積されていました。データ量は ID-POS データだけで年間 1 億件に上っており、100 万行の壁がある Excel では、もはや扱えない規模になっていたのです」。

 

Tableau の導入・運用環境について

多様な情報源からデータを Tableau Cloud へ

この問題をクリアするために導入されたのが Tableau でした。2017 年 6 月に KFC に入社し Tableau 導入を推進した、経営企画部 データ戦略企画課 課長補佐の小松 一氏は、その経緯を次のように語ります。

「私自身が前職で Tableau を使っており、これだけ膨大なデータをスピーディに分析するには、Tableau が最適だと考えました。そこで 2017 年 7 月に Desktop ライセンスを 3 名分契約し、まずは個人レベルでの活用を開始しました」。

その結果が良好だったこともあり、2019 年 5 月には営業向けのデータ集計分析環境構築プロジェクトが発足。2019 年 11 月からテスト運用を開始、2020 年 5 月より順次直営店舗管理用、フランチャイズ店舗管理用のダッシュボードを展開。日次、月次等目的に沿った粒度の帳票が提供されています。マーケティング向けには、2019 年 12 月に CRM ダッシュボード、2020 年 9 月に顧客調査ダッシュボードと、各種ダッシュボードが次々と提供されています。

さらに2020 年 10 月には Data Management アドオンを導入し、Tableau のプロフェッショナルサービスの利用も開始。その後も 2021 年 5 月にマネジメント向けレポートのTableau 化、2021 年 11 月に部門横断で活用するレポート類の Tableau 化が行われています。データソースは、ID-POS データや店舗運営に関する各種データ、マーケティング関連データなど多種多様。その保存形式も、データベース化されているものもあれば、ローカルファイルとして保存されているものもあるという状況です。これらのデータソースから Tableau Cloud にデータを取り込み、Tableau Prep で加工。その一連の処理は Data Management アドオンでスケジュール化されています。

「このような処理方法はプロフェッショナルサービスに提案してもらいました。これによって DWH がない状況でも、スムーズかつ安定したデータ処理を実現しています」(小松氏)。

Tableau 選定の理由について

機能性に加えてコスパの良さも高く評価

データ分析基盤として Tableau を選定した理由は、大きく 3 点あったと小松氏は説明します。

第 1 はユーザーインターフェースが使いやすいことです。ドラッグ&ドロップできれいに可視化できることや、計算式や色を細かく指定できること、さらにデータ加工を行うTableau Prep が簡単に使えることは、Tableau の大きな価値だと指摘します。

第 2 は Tableau Cloud を採用することで、サーバーを設置することなく運用できることです。「実は Tableau 導入の前に、複数の製品を取り上げてコスト比較したのですが、Tableau 以外はサーバーが必要なケースが多く、その場合はどうしてもサーバー費用のためにコストパフォーマンスが悪化することがわかりました。Tableau Cloud ならサーバーが不要なので、高いコストパフォーマンスを実現できます」。

そして第 3 が、機能のアップデートが早いことです。「こんな機能があったらいいのに、という機能が、どんどん追加されています。これなら長期的に安心して使い続けられると判断しました」。

Tableau で感動したことはたくさんあります。なかでも LOD 計算の存在は革命的だと感じました。『こういうことができないか』と調べて見ると、大抵のことは実現可能です

Tableau の導入効果について

集計・分析の時間を削減しデータ活用サイクルを高速化

Tableau を活用することで、以下のようなメリットが得られています。

データ集計・分析の作業負担軽減

例えば管理部門で毎週 1~2 時間かけて作成していた週報は、Tableau で自動化されました。これによって週報作成のための出社も不要に。KFC 本社ではテレワーク化が進んでいますが、Tableau が果たしている貢献も大きいと中田氏は語ります。

重複したルーチンワークの削減

これまでスーパーバイザー等営業部門が個別に行っていたデータ集計作業も、Tableau に集約したことで削減されました。すでにこれらの職種の 9 割近くが Tableau のアクティブユーザーになっています。

大量データの一括分析

以前は Excel の制限によって、大量なデータを分割して抽出し、集計・分析する必要がありました。しかし現在では全データを一気に取り込み、以前はできなかった切り口での分析が行えるようになっています。

データ活用サイクルの高速化

以前は週 1 回程度の数値確認であったのが、現在では Tableau で日々のデータを分析できるようになっています。

データ活用に対する意識の向上

最近では各部署から「こんな数字を見たい」「このような分析はできないか」という問い合わせも増えています。特に ID-POS 関連のデータ分析へのニーズが高くなっており、マーケティング部門では Tableau 活用のためのコミュニティも立ち上げられています。

 

今後の展開について

営業・マーケティング以外にもユーザーを拡大

「今後もデータ分析できるユーザーを増やしていきます」と中田氏。すでに営業部門とマーケティング部門では活用が進んでいますが、最近では店舗開発部門等でも Tableau に興味を持つ人が増えており、すでに体験会も開催していると語ります。「またマーケティング部門は商品在庫を見ながらプロモーションを行っているため、サプライチェーン関連のデータも分析可能にしたいと考えています」。

これに加え、マネジメント層での利用拡大も進められています。すでにマネジメント向けのレポートや帳票は Tableau で作成されており、Viewer を使いこなすマネージャーも増えていると言います。

「もうデータ分析を 10 年近くやってきましたが、その目的は集計や分析そのものではなく、データで議論しながら意思決定をすることです。Tableau によってその環境が実現でき、次のアクションを考えることに時間を取れるようになりつつあります」。

営業部門とマーケティング部門では活用が進んでいますが、店舗開発部門等で Tableauに興味を持つ人が増えています。Tableau によって、データで議論しながら意思決定ができる環境を実現していきたいです。