「FUJIFILM Prints & Gifts」の運営に Tableau を活用

精度の高い施策の立案

スピーディな会議と意思決定

導入の背景

商材に横串を通したデータ基盤の確立が課題に

フイルムからデジタルへ。写真の撮影方法や楽しみ方は大きく変化してきましたが、現在でも「写真を紙に出力したい」「紙のアルバムで思い出を楽しみたい」というニーズは少なくありません。このような想いに応えるため、富士フイルム株式会社(以下、富士フイルム)が提供しているのが、スマートフォンから多彩なプリントサービスを簡単に注文できる「FUJIFILM Prints & Gifts」です。

「ネットを通じて簡単にプリントが注文できるサービスは、すでに1998年から展開していました」と語るのは、このサービスの企画・運営を手掛ける富士フイルム イメージングシステムズ株式会社 コンシューマー営業本部 広域量販・特販事業部 特販第2営業部でマネージャーを務める藤堂 正寛 氏。2018年7月に既存サービスをリブランドし、より便利にしたのがこの サービスなのだと説明します。「この他にも消費者向けの会員サービスである『フジフイルムモール』での物販も行っており、その会員になることで FUJIFILM Prints & Gifts をご利用いただけるようになっています」。

このような EC サイトのマーケティングでは、データを活用した利用者の動向把握が欠かせません。そのため以前から様々なデータを取得して活用してきましたが、なかなか「痒いところに手が届かない状況でした」と、藤堂氏と同じく特販第2営業部でマネージャーを務める佐藤 裕介 氏は振り返ります。

「このサービスは一種のポータルサイトであり、担当者は商材毎に異なっています。そのため以前は担当者によってツールの使い方やデータの見方が異なっており、ノイズも入りやすい状況だったのです。これではサービス全体を視野に入れた、精度の高い施策を練ることができません。商材に横軸を通したデータ基盤が必要だと考えていました」。

 

Tableau の導入・運用環境について

クラウドストレージにデータを集約し Tableau で分析

その基盤を作り上げるために採用されているのが Tableau です。

「以前の私は富士フイルム本社でデジタルマーケティング戦略を推進する『DM 戦』という部署にいたのですが、そこで2016年から Tableau を活用していました」と藤堂氏。その理由は富士フイルム全体の DX を推進する FW(Fujifilm Way)室のマネージャーから「消費者向けサービスのマーケティングを行うのであれば、Tableau でデータ活用したらどうか」と勧められたたからだと言います。「それまでは Excel のピボットテーブルでデータ分析を行っていたのですが、十分な可視化が行えていませんでした。そこでこの提案に乗り、Tableau を使うことにしたのです」。

FUJIFILM Prints & Gifts の運営では、受注データや売上データ、会員情報、Google Analytics のデータなど、多種多様なデータが活用されています。これらはいったんクラウド上のストレージに集約され、各ユーザーが使う Tableau から Tableau Bridge 経由でアクセスできるようになっています。なおクラウドストレージは Salesforce Marketing Cloud とも連携しており、集約したデータの Marketing Cloud での活用や、MA 施策のデータのフィードバックも行われています。もちろんこのようなデータも Tableau で分析可能です。

Tableau 選定の理由について

可視化が容易で個人のスキルに依存しない点を評価

Tableau 採用の理由について、藤堂氏は次のように説明します。

「データを分析できるだけではなく、その可視化も容易に行えるからです。直感的にドラッグ&ドロップを行えば、見たいデータを見たい角度ですぐに見られます。また複数のデータをかけ合わせた可視化も簡単で間違いもありません。Excel ではどうしても手作業が入るため、複数のデータをかけ合わせた表を作成した際には本当に正しいのかを検証する必要がありますが、Tableau ならその作業も不要になります」。

これに加え「個人のスキルに依存しない点も重要です」と指摘するのは佐藤氏です。「マーケターやクリエイターは Excel を使うのが苦手な人も多く、データの見方が間違っているケースも少なくありません。しかし Tableau でダッシュボードを用意しておけば、誰でも同じ視点でデータを分析できるようになります。そのため各商材のマーケター自身が、他の商材との横串を通した形でのデータ分析を行えます」。

見たいデータがドラッグ&ドロップで、簡単に見られることです。Excel では膨大なデータの羅列からグラフを作成しなければなりませんが、Tableau ならその作業を行うことなく即座に可視化できます。

Tableau の導入効果について

施策の精度向上と意思決定のスピードアップを実現

Tableau を活用することで、以下のメリットが生まれています。

データ活用のスピードアップ

以前は多様なデータを CSV の形で抽出し、それを Excel に取り込んで集計が行われていました。そのため作業時間がかかり、集計を行う頻度も月に1回程度だったと藤堂氏は振り返ります。これが Tableau によって即座に集計することが可能になり、データ集計頻度も日次へと短縮されています。

精度の高い施策の立案

「以前は商材毎に異なるデータで意思決定を行っていたため、他の商材での経験を活かすことが難しく、施策の精度もなかなか向上しませんでした」と佐藤氏。Tableau を使うようになってからは、各マーケターが同じ目線でデータを活用できるようになったため、過去の経験を活かした施策が立案しやすくなったと言います。「またキャンペーンの効果を検証する場合でも、データの見方に一貫性があるため、半年〜 1年といった長期スパンでの評価が行いやすくなりました。データを元にした施策も数多く生まれています」。マーケターが持つデータが増え活用速度が速くなると、広告デジタルデータを扱う部署でも考察する材料が増えてスピードが速くなった等、関連部門にも効果が波及している。

スピーディな会議と意思決定

施策立案や評価のための会議のやり方も、大きく変化しています。以前は紙の資料をベースに議論が行われていましたが、現在では Tableau の画面を操作しながら、短時間で完了する会議が一般的になっています。「会議室を取らずに隣の席で Tableau を見ながらパパッと決まる話も増えています。リモートワークでも Tableau の画面を共有することで、問題なく意思決定が行なえます」(佐藤氏)。

現在は目的別に複数のダッシュボードを作成して活用していますが、将来はこれらを統合し、リアルタイムで状況を把握できるダッシュボードを実現したいと思っています。

今後の展開について

Web 広告データの活用や Marketing Cloud との連携も

「今後は Web 広告のデータも取り込み、Tableau で分析できるようにしていきます」と佐藤氏。データが増えれば打てる施策の幅も広がり、精度もさらに向上するからだと言います。「ハウスエージェンシーの富士フイルムビジネスエキスパートでは、既に Salesforce Datorama を活用していました。現在、連携の準備を進めています」。

その一方で藤堂氏は、Tableau で分析した結果を Marketing Cloud で活用することも検討していると語ります。「今は Tableau で行ったセグメント分析の結果を CSV でエクスポートして Marketing Cloud に取り込んでいますが、これを自動化したいと考えています」。