社会人基礎力として必須となったデータサイエンス
学生の意欲向上
プレゼン準備の時間短縮
導入の背景
社会人基礎力として不可欠となったデータサイエンス
伝統を紡ぐ一方で時代に沿った教育改革を目指した学内連携組織体制を整備し、教育・研究活動を継続的に発展させるための戦略を具現化してきた大正大学。2020 年度には第 3 次中期マスタープラン「INNOVATE 5」にもとづき、DAC(ダイバーシティ・エージェンシー・コミュニティ)による総合学修支援を開始しています。
これは、学内外を問わず多様な人々が共に学ぶ共同体の実現を支援するための組織であり、一般教育カリキュラムの企画・運営や、チューターの養成・運用、ラーニングコモンズの活用推進、アントレプレナーシップ教育の企画・運営などを行うことで、学生の多様な学びと自立的な成長をサポートしています。その一環として設置当初から取り組んでいるのが、学部 1 ~ 2 年生を対象にしたデータサイエンス教育です。
「本学には理系の学部はありませんが、Society 5.0 へと向かうにあたり、文系の学生にもデータを扱う能力が求められるようになっています」と語るのは、大正大学 DAC で教授を務める前田 長子 氏。データサイエンスは社会人基礎力として、不可欠なものになっているのだと言います。「私自身も文系の出身ですが、DAC 設立と同時にこの大学に入る前は、一般企業でデータ活用や分析を日常的に行ってきました。この力は社会人になってから身に付けたものですが、学生の時からこのような教育を受けられれば良かったと、常々考えていました」。
Tableau の導入・運用環境について
6 つの授業のうち 4 つの授業で Tableau を活用
全学必修であるデータサイエンス科目は、大きく 6 つの授業で構成されており、それぞれの内容は以下のようになっています。
DS Ⅰ~Ⅱ:統計、情報リテラシー、Excel
DS Ⅲ:Tableau の基礎
DS Ⅳ:Tableau の応用
DS Ⅴ~Ⅵ:産官学連携による Tableau でのデータ分析
「DSⅢから Tableau を導入することになったのは、現在は株式会社 Excellence の代表となっている山崎 由愛さんからのご提案があったからです」と前田氏。山崎氏は前田氏の前職での同僚でしたが、社内の Excel 教育などをわかりやすく行うことで定評があり、今回のカリキュラム立案で相談に乗ってもらったのだと振り返ります。「当初は Excel メインでカリキュラムを構成する予定でしたが、山崎さんが Tableau のデモを行った結果、大学執行部がその可視化機能に感銘を受け、Tableau の導入が決定しました。山崎さんにはこの決定後に特命准教授になっていただき、教材開発や Tableau 資格取得のアドバイザー、教員に対する指導などをお願いしています」。
これらの授業のうち、1 年次では DS Ⅰ~Ⅲ、2 年次では DS Ⅳ~Ⅵを実施。1 年次は主に統計の基礎や Excel によるデータ分析を学び、2 年次では産官学連携によって一般企業や自治体から提供されるデータを分析しています。
「データサイエンス授業で Tableau を習得した学生が、自身の個人研究などでも Tableauを活用する動きが広がっています」と言うのは、大正大学 DAC で准教授を務める尾白 克子氏。その中には、公共政策学科の有志学生が学外のコンテストである「学生によるミタカ・ミライ研究アワード 2021」に応募し、優秀賞である三鷹市長賞を受賞したというケースもあると語ります。「データサイエンス授業の産官学連携先からも、良い評価をいただいております。導入当初は不安もありましたが、想定したよりもうまくいっていると感じています」。
Tableau 選定の理由について
最大のポイントは可視化の早さ
データサイエンス授業で Tableau が採用された最大の理由は、可視化が圧倒的に早いことだと前田氏は説明します。また、ワークブック間のダッシュボードコピー機能やフィルター機能を使うことで、探索的なデータ分析を試行錯誤しながら行いやすいことも、大きなメリットだと指摘します。
「学修成果の可視化など、データ可視化の重要性は文部科学省も提唱しており、大学としても積極的に取り組む必要があると考えていました。そのため可視化機能が優れている Tableau の選択は、最適な決定だったと考えています。また Tableau は市場やユーザーからの評価も高く、社会人になった時のことを考えると、世の中の先取りをした授業になるはずだという思いもありました。たとえ社会に出てから他のデータ分析ツールを使うことになった場合でも、Tableau で培った経験は間違いなく応用できると考えています」(前田氏)。
学生が使いこなせるようになることに感動しました。毎回提出課題があるのですが、みんな意欲的に取り組んでおり、その完成度も高くなっています。『学生には無理ではないか』と言っていた教員も、学生の提出課題を見て感動していました
Tableau の導入効果について
学生が興味を持ち主体的に取り組むように
データサイエンス授業に Tableau を採用したことで、次のようなメリットが得られています。
学生の意欲向上「Tableau は直感的に使えるので、まだ十分な知識がない段階でも様々なデータを可視化できます」と尾白氏。数学が苦手・嫌いといった学生でも、Tableau ならデータ分析や可視化に興味を持ち、主体的に取り組むようになると語ります。「最初は教えた操作を思い出しながら、たどたどしく Tableau に触れているといった感じですが、可視化できると『うわー』『楽しい』という学生の気持ちがこちらにも伝わってきます。よいツールがあればやる気も高まるということを、この授業で実感しています」。
また前田氏は「最初の Tableau の授業後のアンケートでも『思った以上に楽しい』という回答が寄せられていました」と言及。DS Ⅳ 以降の授業では学生も Tableau の操作に慣れてくるため、手の動きも速くなると言います。「ここまでくると学生はさらに真剣になり、自分よりも上手なプレゼンを見て悔しがったり、それを参考に自分のアウトプットをさらに洗練させていく学生も少なくありません。特に産官学連携の授業では、企業や自治体側の評価にも敏感に反応し、より上を目指す姿勢が強く感じられるようになります」。
プレゼン準備の時間短縮プレゼン準備のための作業時間の短縮も、Tableau 導入の効果の 1 つだと評価されています。
「特に効果が大きいのが、ストーリー機能の活用です。Excel でプレゼンを行う場合には、Excel で作成した表やグラフを PowerPoint に貼り付けてプレゼン資料を作成することになり、分析以外の作業時間が必要になります。これに対してTableau のストーリー機能を使えば、Tableau だけで簡単にプレゼンを行えます。また途中で問題が見つかった場合でも、すぐに元データに戻って改善ができます。Excel + PowerPoint のプレゼンでは資料作成のために授業 1 コマを割り当てる必要がありますが、Tableau ならその必要がありません」(尾白氏)。
Tableau を活用した学修によって、エビデンスにもとづいて課題を抽出し、それに対する提案を行う、という習慣が身に付いたと感じています。エビデンスのない提案では説得力に欠けるということが、学生自身の思考として定着しつつあります
今後の展開について
SA の能力開発につながる取り組みにもチャレンジ
Tableau を活用したデータサイエンス授業を開始してすでに 2 年が経過しており、最初に学んだ学生はスチューデント・アシスタント(SA)として、後輩の指導に参加しています。今後は SA 自身の能力開発につながる取り組みにもチャレンジするとともに、意欲のある学生には外部のコンテストにもどんどん参加してほしいと両氏は語ります。
その一方で、アントレプレナーシップ科目における発展学修の一環として、データサイエンスを取り込むことも計画されています。
「社会の現場で直面する課題解決には、データ分析、可視化が必要不可欠です。アントレプレナーシップ科目では、『データ分析技法』や『情報表現技術』など、データサイエンス授業で学んだTableau を、より実践的に活用する科目を設定する予定です」(前田氏)。