セルフサービス分析を推進するカンタベリー地区衛生局

ニュージーランド、クライストチャーチに位置するバーウッド保健キャンパス

カンタベリー地区衛生局 (DHB) は、ニュージーランド、カンタベリー地方の医療サービスの企画・出資主管機関です。データを活用し、統合された保健システムを推進することが、主な戦略のひとつです。この DHB では、データの分析と可視化の機能を強化する必要がありました。データウェアハウスには約 20 年分のデータが保存されていましたが、静的なレポートとアドホッククエリでは、データを見て理解するのは困難だったのです。意思決定サポートチームでは、さまざまなスタッフが簡単にデータを操作できると同時に、よりデータドリブンな意思決定を職場に幅広く浸透させることが可能なソリューションを探していました。3 年間で、カンタベリー DHB は職員 (国内の他の DHB 職員も含む) によるデータの閲覧や操作の仕組みを変えてきました。医療従事者がセルフサービスのデータ分析による恩恵を受けられるということが、ビジュアル分析ソフトウェアとして Tableau を優先的に導入した要因でした。Tableau は現在、カンタベリー DHB がニュージーランド国民の健康と福祉に関する重要な意思決定を推進するために活用している主要なツールのひとつとなっています。


数百万件の患者アクティビティデータをインタラクティブコンテンツに変換

カンタベリー DHB では、およそ 20 年分の患者アクティビティデータをデータウェアハウスに保存し、それぞれを独自の指標セットに関連付けています。同局が担っているのは、54 万人を超える住民に対する医療サービスの企画、提供、および資金調達です。1 年間では、入院件数は 約 12 万、外来診療件数は 100 万超、救急外来患者数は約 10 万人となっています。さらに、同局では薬剤部や放射線科、手術室、臨床検査室からのデータも収集しています。20 年近くにわたって蓄積されたデータは合計約 5 億件に達し、その管理は意思決定サポートチームが行っています。他にも、南島にある他の DHB のデータを収集しています。これらのデータすべてがエンタープライズデータウェアハウスに保管されており、チームはこのデータを使用して、局内全体からの情報要求に対応し、レポートを作成するのです。データに対する要求が増えるにつれて、もはや静的なレポートでは同局のニーズを満たせないことをチームは実感していました。カンタベリー DHB の意思決定サポート担当マネージャーを務める John Wilkinson 氏は、次のように説明しています。「当局で管理しているデータは膨大な量になります。医療処置、患者に処方される薬、診断検査、入院・通院、その他諸々のあらゆるデータを扱っているのですから。これまでずっと、このデータにアクセスする方法が非効率的なものでして、型式が決まったレポートを長年にわたって提供してきたのです」

当局で管理しているデータは膨大な量になります。医療処置、患者に処方される薬、診断検査、入院・通院、その他諸々のあらゆるデータを扱っているのですから。

情報要求者からフォローアップの質問を受けたり、あるいは別の方法でデータを見たいと言われたりした場合、意思決定サポートチームはレポートを再実行する必要があり、遅れが生じてしまいます。「わずかに視点を変えたデータを得るために、選択項目をいくつも変えてレポートを再実行しなければならないことは日常茶飯事でした」また、意思決定サポートチームには、各レポートにアクセスした人数を追跡する手段がありませんでした。カンタベリー DHB では、業務全体で情報に基づく意思決定が行われるようにしたいと考えていました。セルフサービスのインタラクティブな形式で職員が簡単にデータを操作できるようにすることも、この目標の一部でした。「各関係者にとって必要なデータを集約し、フィルタリングする機能を中心に考えていました」と、Wilkinson 氏は言います。分析ソリューションの購入という決断は、時間の節約以上の結果をもたらしました。経営陣の目標は、よりデータドリブンなカルチャーを組織全体に構築することでした。「私たちは、セルフサービス分析の導入を促進し、情報に基づく意思決定を職員全体に広く普及させることができるソリューションを見つけたいと考えていました」Wilkinson 氏は、こう述べました。

DHB 職員用にデータ分析を導入

あるチームメンバーが、評価の高い業界関係者から Tableau のことを聞き、自宅で 30 日間の Tableau Desktop トライアル版をダウンロードすることにしました。すると、良好な結果が得られたのです。「トライアル版の話と、そのメンバーが少数のデータを使って達成した成果について聞いてから興味をそそられ、組織のような規模でもうまく機能する可能性があるかどうか考え始めました」と話す Wilkinson 氏。サンプルデータセットを使って簡単なオフィスデモを実行してみたところ、確かな手ごたえを感じました。そこで Tableau Desktop ライセンスを 2 つ購入し、チーム内で、新たな興味深い方法を使ってデータ操作を開始しました。Wilkinson 氏はチームのメンバーに、Tableau を使用してどのような成果を生むことができるか確かめるように指示しました。メンバーはあっという間に Tableau を使いこなせるようになり、Wilkinson 氏はさらに 2 ライセンスをチーム用に購入することになりました。その後、意思決定サポートチームの全員、および同じ目的を持つ他部門の分析担当スタッフに、Tableau Desktop を提供してきました。Tableau 導入当初にカンタベリー DHB をサポートしたのは、2008 年に Tableau パートナーとなった Montage 社です。Montage 社では、Tableau の作業について理解を深めるための初期メンタリングセッションを実施しました。また、Tableau ワークブックも活用し、他の DHB で成果をあげてきました。Tableau Desktop を採用して数か月後、カンタベリー DHB では Tableau パッケージドワークブックを使用し、業務全体でビジュアライゼーションの共有を始めます。一方チームでは、コラボレーションを促進し、信頼できる単一の情報源を推奨したいと考えていました。インタラクティブなダッシュボードを共有するための、より効果的な戦略が必要であることにすぐに気付いたのです。「絶えずデータを取り出してワークブックを更新する作業はコストも時間もかかることになります。そこで、それまで私たちが行ってきた作業の多くを自動化できる、Tableau Server に注目することにしました」と、Wilkinson 氏は言います。

予想以上の効果

チームがデータを分析して共有できるようになると、広範囲に及ぶさまざまな効果が生まれました。現在、意思決定サポートチームは、SharePoint ポータルに埋め込まれた自動ダッシュボードを Tableau Server 経由ですぐに提供することができます。これにより、スタッフは信頼できる単一の情報源からビジネスインテリジェンスデータにアクセスし、意思決定を通知しています。意思決定サポートチームが掲げる方針のひとつは、スタッフが「エピソードではなく事実を基に対処」できるようにすることです。Wilkinson 氏のチームでは Tableau Server を利用して、ビジュアライゼーションのデータを簡単に更新できます。データが変化したときに手作業でレポートを更新する必要はありません。また、従業員は Web ブラウザーからビューにアクセスできるので、待ち時間が短縮されました。Wilkinson 氏は次のように言います。「Tableau Server による自動化のおかげで、データを定期的に短時間で更新できています。中には 15 分間隔で更新されるものもあります」Tableau Server では各ビューの利用頻度を追跡できるので、ビジネスユーザーにとって特に関連性が高いデータを把握することが可能です。意思決定サポートチームでは、カンタベリー DHB の情報ニーズへの対応に加えて、南島の西海岸地区にある DHB 支局のデータの代理管理を開始しています。カンタベリー DHB は支局のデータを管理すると同時に、データ品質も確保します。カンタベリーのチームが作成するダッシュボードは、南島の DHB と Tableau Reader で共有します。手間はまったくかかりません。「本当のメリットは、1 つのアプリケーションで複数の組織のデータセットを管理できることだとわかりました。…この機能のおかげで、南島の他の DHB を支援する主導的な役割を果たすことができます」

Tableau Server による自動化のおかげでデータを定期的に短時間で更新できています。中には 15 分間隔で更新されるものもあります」

データヒーローが集まる組織へ

Tableau をメインの分析ツールとして導入してから 3 年の間に、カンタベリー DHB では多くの職員が Tableau を利用するようになり、同時にデータの需要も高まっています。現在、カンタベリー DHB は、45 の Tableau ワークブックから成るポートフォリオと約 100 件の個別のビューを管理しており、その数はさらに増えています。同局では Tableau を使用して患者アクティビティの特定のコホートを見つけ出し、以前は十分に活用されていなかったデータを素早く理解するうえでの手がかりとしています。また、自動化とセルフサービスを通じて、企画の立案とその実施過程において、情報に基づいたデータドリブンなアプローチを促進できるようになりました。Wilkinson 氏とそのチームは、データを扱って、日常的な意思決定に影響を与えられるようにしています。チームでは患者のエクスペリエンスデータを視覚化して外れ値を特定し、DHB 利用者の保健衛生に関するニーズに対しサービスを向上できる分野を予測できるようになりました。カンタベリー DHB で Tableau を利用する職員が増えるにつれて、意思決定サポートチームも、適性が高く熱意のあるスタッフが加わり規模を拡大してきました。Wilkinson 氏はこう述べています。「満足度が高く、熱意を持った職員がいるということは、優れた応募者を惹きつけることができるということです。つまり、私の部署が担っている業務の質がさらに向上し、組織全体における認知度が上がることにもなるので、結果として管理がしやすくなることを意味します。意思決定サポートチームでは、Tableau Desktop、Tableau Server、Tableau Reader を活用してレポート作成サイクルを短縮すると同時に、業務上のニーズに対応しています。Tableau を利用する職員が増える中、カンタベリー DHB は医療サービスに対するさらにデータドリブンなアプローチを目指して今後も進み続けます。