zulily 社が Tableau と Google BigQuery でセルフサービス型のマーケティング分析プラットフォームを構築した理由
編集者注: このブログは、zulily 社でマーケティング分析マネージャーを務める Sasha Bartashnik 氏の寄稿です。zulily 社 (英語) は急成長している 16 億ドル規模の e コマース企業であり、1 日に 100 種類以上の新しいセールを展開して、新たな素晴らしいアイテムと出会うときの興奮に満ちた、驚きと喜びの体験を女性に提供しています。今回は、2 部構成のブログシリーズの前半です。
zulily 社では毎日、9,000 種類以上の製品スタイルと 100 種類以上の新しいセールを展開しており、お客様数千人のコンバージョンとユーザーアクション数百万件の処理が発生しています。当社は顧客第一主義を掲げているので、お客様に対する理解を深め、購買体験の最適化をさらに進めようと常に努めています。しかし、社内外のソースからのデータストリームが膨大にあるため、大半のビジネスユーザーにとってはマーケティング上の意思決定に必要なデータの迅速な利用が次第に難しく、手間のかかるものになってきていました。その結果アナリストは、ビジネスを推進するための実用的なインサイトの提供よりも、アドホックなデータのリクエストに応えるためのコード作成に時間がかかっていました。そのため、適切なメッセージを適切なタイミングで、適切なチャネルを通じ、より短い時間であらゆるお客様に伝える手段を見つける必要がありました。
そこで当社は、Google BigQuery を Tableau と統合した、セルフサービス型のマーケティング分析プラットフォームを構築しました。Facebook 広告や Google Ads、メールなど、マーケティングのさまざまなタッチポイントから得るデータを単一のビューで見られるようになったのは、このプラットフォームが初めてです。今では、クリックストリームや製品カタログ、注文トランザクションなどの社内ソースをデータとブレンドして、ビジネス上のより質の高い意思決定をより短時間で行えます。そしてこのプラットフォームで、BigQuery と Tableau は当社のマーケティング分析チームにとってなくてはならない存在になりました。この 2 つのテクノロジーを独自の形で導入したことによって、複雑なデータを短時間で分析し、リアルタイムの戦略的な意思決定を後押しする提案が行えるようになったためです。このブログでは、他の組織でも同じような戦略を導入する際の指針をご紹介します。
セルフサービス型データプラットフォームへの移行
zulily 社での私の職務は、データドリブンなインサイトに基づいて社のマーケティング戦略を最適化する、アナリストとデータサイエンティストのチームを率いることです。私のチームは、データとソフトウェアのエンジニアが所属する技術チームと緊密に連携しています。zulily 社のマーケティング分析チームで仕事をしていて良かったと思える事の 1 つが、このコラボレーションです。優秀でクリエイティブな技術チームと仕事ができてうれしく思っています。当社の技術チームは、多様なプラットフォームからのトランザクションを 1 日に数百万件扱い、極めてスケーラブルなコンシューマーエクスペリエンス環境を提供できる新機能の開発に取り組み続けていく必要があります。また、当社の高度なベンダープラットフォームとマーケティングプラットフォームの管理に利用する、インフラストラクチャやツールの構築も技術チームの重要な役割です。これはつまり、当社の技術チームには、従来の企業の IT 部門でよく見られるような、IT に関する業務上の日常的な依頼に忙殺される時間はないことを意味します。そのため技術チームは、私たちが技術チームの時間や優先順位を当てにすることなく自分の業務を行えるようにするためのツールを開発しています。その一例が zuFlow (英語) です。これは、クエリのワークフローとスケジュール設定を行う BigQuery 用のツールであり、zulily 全社のアナリストはポイント & クリック操作の Web インターフェイスを使って、当社独自の複雑なデータ準備ワークフローを作成することができます。
当社の技術チームもまた、組織のあらゆるレベルでデータを活用しあらゆる意思決定を推進するという、私のチームと同じビジョンを共有しています。このビジョンのおかげで、当社のデータの用途を拡張する画期的なツールやテクニックの社内普及に両チームで取り組むことができます。2014 年には技術チームが、それまでのデータプラットフォーム (構造化データ用の SQL Server と非構造化データ用の Hadoop クラスタを組み合わせたもの) にまもなく限界がやって来ると気づき、先見の明で新しいビッグデータプラットフォーム (英語) を構築しました。このプラットフォームは、高度にスケーラブルな分析サービスを提供するビジネスデータウェアハウスとして BigQuery を、また分析結果に基づいて迅速に意思決定を行えるようにする、データ利用とビジュアル分析のツールとして Tableau を用いています。
この新しいデータプラットフォームのプロセスは、次のように簡潔になっています。
- 構造化データも非構造化データも、リアルタイムでもバッチでも、全データを BigQuery に読み込みます。
- マーケティングアナリストとデータサイエンティストが、BigQuery SQL を用いて多数のデータソースを結合します。
- オンサイトと Google Cloud で、一般的な各種データサイエンスツール (Anaconda、RStudio、Google Cloud Datalab など) を利用して、BigQuery のビジネスデータマート上にモデルを構築します。
- Tableau は、zulily 社のレポート作成とビジュアル分析のプラットフォームです。Tableau を利用してマーケティングアナリストとデータサイエンティストが、BigQuery に格納されているデータのセルフサービス分析と、上記のモデルから得たインサイトのレポート作成を行います。これによって、日々の意思決定をリアルタイムで行い、長期戦略のためのインサイトが得られます。
セルフサービス分析に基づいたマーケティング上の意思決定の実現
Tableau と BigQuery を統合した結果、次の 2 つの面でセルフサービスモデルによる大きな効率向上が見られました。
- 分析チームが日常業務で IT 部門に頼らずに、データの取得、取り込み、利用にすぐ取りかかり、レポートやモデルを作成できるようになりました。
- ビジネスユーザーが、シンプルなインサイトを得るのにアナリストの助けを借りる必要がなくなり、迅速に意思決定を行うための重要なデータをリアルタイムで利用できるようになりました。
データはすべて BigQuery 上の表に格納されているため、私のチームは、実質上どのようなサイズや粒度レベルでもデータのクエリを実行することができますし、必要に応じてデータをスライスしてモデルに追加する要素を作成することもできます。そして、そのデータをさらに探索して Tableau でレポートやビジュアライゼーションを作成し、データとモデルをエンドユーザーと共有することが可能です。また Tableau なら、ビジネスユーザーはすべての広告やプログラム、チャネルのパフォーマンスを理解するために、主要指標のドリルダウンも行えます。
マーケティング分析チームは、上の 2 つの面で効率を向上させるために、お客様を一元的に見ることができる単一のビューを作成する必要がありました。そのためにまず行うのは、Facebook 広告、Google Ads、メール送信、顧客に対するマーケティングの他のタッチポイントのコストやクリックデータなど、技術チームが BigQuery に格納するすべてのマーケティングデータを結合することです。次にそれを、BigQuery SQL を使ってクリックストリーム、注文トランザクション、お客様と広告のレベルの顧客行動に関する他のメタデータと関連付けます。BigQuery 導入前は、このように膨大な量のデータの結合にはとてつもない時間がかかっていました。それが今では、クエリによっては分や秒の単位で完了できます。このスピードを達成した結果、チームは長期にわたる顧客購入額、メールによるエンゲージメントの頻度、サイトの閲覧傾向などの要素も含め、顧客行動のあらゆる側面を基にしてデータモデルを作成できるようになりました。そしてこの総合的な顧客データモデルを、顧客行動を促す広告やマーケティングの具体的なキャンペーンにつなげることもできます。
Google BigQuery と Tableau を利用して顧客獲得に関するインサイトを引き出す
このようなセルフサービス型アプローチと顧客モデルの導入により、当社の技術チームは、広告をリアルタイムで最適化するための強力なシステムアーキテクチャ (英語) の構築など、重要度の高い作業に集中できるようになりました。そのうえマーケティング分析チームも、ビジネスを理解するための鍵になる部分を、さらに掘り下げる機会が得られるようになっています。Tableau では、ビジネスユーザーが自分の質問のほとんどに自分で答えを出すことも、自らデータを操作することもできるため、私のチームは日々繰り返すレポート更新や単純なデータ変更依頼の作業から解放されました。現在では、当社のデータプラットフォームを利用して、顧客獲得を促しカスタマーエクスペリエンスの理解を深めるのに役立つ、高度な機械学習モデルを構築しています。
zulily 社の全データが BigQuery 上にある今、さまざまな顧客行動をインプットとして使って、顧客生涯価値 (LTV) を予測するための強力な機械学習モデルを構築し、その結果を具体的なマーケティングキャンペーンに結び付けて長期的なパフォーマンスを計測することができるようになりました。
当社ではこれを達成するために、過去の顧客生涯価値を使って既存の高価値顧客を見出しています。次に、勾配ブースティングを使ってトランザクションと行動の 1,000 を超える変数を検討し、数百のモデルをテストします。そして最終的に、顧客生涯価値の予測に寄与する 30 程度の重要な要素にまで減らします。
これにより、zulily 社の新しいお客様の顧客生涯価値が高くなる可能性を、非常に高い精度で予測できるモデルが得られます。そして、その予測を BigQuery に格納されているマーケティングデータセットと結び付けて、社内でチャネル指標ダッシュボード (CMD) と呼ばれている、Tableau Server 上の極めて動的でカスタマイズ可能なダッシュボードに、結合されたマーケティングパフォーマンスデータを用意することができます。CMD では、マーケティングチャネルマネージャーとスペシャリストがサーバー上にカスタムのグラフやレポートを作成して、必要な指標や日付範囲、粒度を選択すると、過去のデータと予測されたデータを利用した独自のインサイトを簡単に引き出せます。このソリューションによって当社のマーケティングチームは、当社のエンゲージメントが最も効果的なお客様に対する広告、メール、キャンペーンを最適化するための意思決定を迅速に行うことが可能です。
この新しいデータプラットフォームに移行したとき、私たちは zulily 社の技術チームはもちろん、Google Cloud のエンジニアや Tableau のカスタマーエンジニアからも、大きな助力と支援を得ることができました。
このブログシリーズの後半では BigQuery と Tableau の統合について、その混成チームがヒントとテクニックをご紹介します。どうぞお楽しみに。
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