エンドツーエンドの AI プロジェクトデザインにおける課題の克服

あまりに多くの取り組みが期待に応えられない場合や、導入にすら至らない場合に、優れたエンドツーエンドの AI プロジェクトをデザインする方法をご紹介します。

編集者注: この記事は、以前 Forbes (英語) で公開された記事の再掲載です。

S&P Global Market Intelligence 傘下の 451 Research が最近行った調査によると、「AI を導入した組織の 90% 以上が、過去 5 年以内に最初の AI プロジェクトの開発を開始した」と報告されています。まだ初期段階とはいえ、AI を活用したソリューションはあらゆる場所で増加しています。しかし、たとえ導入に至ったとしても、こうした取り組みの多くはいまだに期待に応えられていません。

AI プロジェクトを成功させるには、明確な期待、ビジネス目標との整合性、反復が推進する熟慮された戦略によって、AI プロジェクトを選別および管理する必要があります。ここでは、エンドツーエンドの AI プロジェクトを設計して成功を収めるために組織が直面する一般的な課題や、それらを克服するための方法について見ていきましょう。

AI を活用したソリューションに対する期待の管理

今日失敗に終わる AI プロジェクトの多くは、90 年代のエンタープライズソフトウェアプロジェクトを彷彿とさせます。当時は、新しいテクノロジーなら問題を解決できるだろうとチームが大きな期待を抱いていたため、開発プロジェクトがうまくいかなくなっていました。当時も今も、ソリューションが実際に解決できることに対して過大な期待を抱いてしまうことが、大きな落とし穴になっています。

十分なデータを収集すれば、あらゆることがすぐさま明らかになり、顧客の行動の予測や、顧客のニーズを先取りした完璧な提案が可能になると考えるのは危険なことです。残念ながら、世界は人々が望むよりもはるかに予測が難しいものなのです。有用なパターンが見られることも確かにありますが、すべての出来事に因果関係や相互関係があるわけではなく、単なるノイズに過ぎないことも少なくありません。

同時に、多くの組織では競合他社が AI ソリューションを実装するのを見て、後れを取ってはならないというプレッシャーを感じています。競合他社の成功の原動力は何か、そしてそれが自社に有効かどうかを理解していなければ、「後れを取らないため」ためだけに AI に投資しても逆効果になりかねません。多くの場合、AI プロジェクトで優位に立っている企業は、AI に適したデータを収集して活用するための、データ戦略やビジネスプロセスを用意しています。

最終的には、AI プロジェクトに対する期待を管理するには、まずどの問題が本当に AI で解決できるのかを明確にする必要があります。

問題に適した種類の AI プロジェクトの選択

自社の AI 戦略はビジネス目標に合致しているでしょうか? プロジェクトの選択はおそらく、組織が AI に取り組むうえで直面する唯一かつ最大の課題です。答えを見つけようとしている質問や、その質問に答えることでどのようにビジネス成果が改善されるのか (そしてそれは可能なのか)、また、手持ちのリソースで適切かつ効率的にその質問に答えられるのかどうかを、本当に理解することが重要です。

たとえば、いつ、どのような割引を顧客に提供するかを予測モデルで判断したいとします。ここでデータサイエンスチームの登場です。しかし、これは実は、予測モデルの問題としてアプローチするのはとても難しい問題です。まず、割引がなくても顧客がその製品を購入するかどうかを把握することは困難です。そして、有用なモデルを作成するために必要なデータを統計的に厳密に収集する場合、割引を受ける顧客や割引を行う営業担当者を無作為に選ぶなど、ビジネスにとって不自然に感じられるプロセスが含まれる可能性があります。これが状況を非常に複雑にしています。

この問題に AI でアプローチする良い方法は、異なる割引制度の下で予想される顧客行動のシミュレーションモデルを探索することかもしれません。シミュレーションとシナリオプランニングを活用すれば、システムに過剰な負荷をかけて正確な予測を導き出さなくても、ビジネス上の意思決定を行う際にどの変数が相互に影響を受けやすいのかを明らかにすることができます。この割引に意味を持たせるためには、顧客のどのような反応が必要なのかを考えてみましょう。潜在的な成果について探るこのような作業は、複雑なデータサイエンスの実験を構成するよりもはるかに効果的で、はるかに簡単であることは間違いありません。

成功をもたらすチームの準備

データが何のために収集および整理され、過去にどのように利用され、今後どのように利用されるのかを把握することは、データに対して何らかの AI 活動を行うために非常に重要です。また、介入を行う瞬間に現実世界で利用できるものを表した完全なデータでモデルをトレーニングすることが重要です。たとえば、取引のパイプラインに複数のステージがあり、ステージ 5 で取引が成立する確率を予測したい場合、ステージ 3 や 4 の取引でモデルを実行しても有用な結果を期待することはできません。

データサイエンティストは、データが何を表しているか、またどのようにして生成したのかなど、細かい点について理解にギャップが生じることがよくあります。データの生成にはどのような人的プロセスや技術的プロセスが関わっているのか、また、そのデータがビジネスのコンテキストにおいて正確にどのような意味を持つのか、そうした事柄についての理解が不足してしまうのです。このような場合、データとそれによって解決しようとしている問題に近いアナリストやビジネスユーザーが非常に貴重な存在となります。私たちはAI をチームスポーツとして捉えることがよくありますが、これは成功には基本的なデータリテラシーやモデルリテラシーに加えて、ビジネスコンテキストが必要になるからです。

最後に、プロジェクトの成功には人間を中心とした側面があり、組織がデータやテクノロジーに囚われすぎていると、こうした側面が見落とされることがあります。多くの場合、AI で予測を行うことができても、それをどのようにして推奨されるアクションに変えるのかは人次第です。その提案は、明確なアクションを提示し、人々が喜んで従うような有用なものでしょうか? また、こうした提案が効果的に受け取られるような環境が構築されているでしょうか?

何かを予測することが役に立つ場面は限られています。製品の価格や数量を調整したり、人員の配置を調整したり、あるいは製品ラインを変更したりしようとする気持ちはありますか? また、人々が新しいソリューションを受け入れて、確立された行動やプロセスを発展させるには、どの程度の変更管理が必要になるのでしょうか? 信頼は、一貫した行動のパターンと、ビジネスを継続して育てようとする意欲から生まれます。もし人々の仕事のやり方に根本的な影響を与えようとするなら、そこには信頼が必要となります。

小さく始めて反復

最後に、私たちがお客様と共同作業する中で見えてきた、いくつかのガイダンスをご紹介します。

多くの場合、最初の AI プロジェクトとして最適なのは、最もシンプルな変更管理によって、最も簡単に運用と本稼働を実現できるプロジェクトです。たとえ非常に小さな改善であっても、価値を提供するものをできるだけ早く構築するようにしましょう。また、顧客、ビジネスユーザー、ステークホルダーができるだけ開発プロセスに近い場所にいるようにしてください。より多くのデータを収集してモデルを繰り返し改善するという意味でも、ステークホルダーからの情報を収集してプロジェクトとその成果を改善するという意味でも、良いフィードバックが得られる環境の構築を目指しましょう。

AI には、ソリューションが失敗するエッジケースがつきものです。しかし、カスタマイズされた少数の使用事例にしか使えない非常に派手な概念実証を開発するのではなく、大多数の顧客や従業員にとって有効なソリューションを見つける方が大切です。結局のところ、AI によって摩擦が軽減され、人々が仕事をしやすくなり、情報に基づく意思決定が行いやすくなることが肝心なのです。

詳細情報: LinkedIn で AI プロジェクトについての対談 (英語) をご覧いただくか、Tableau の AI 分析の詳細をご確認ください。