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エキサイト、Tableauを活用し経営管理クラウドサービスKUROTENで高度なビジュアルのレポート作成を支援
財務会計のデータを一元管理し経営数値を可視化
導入の背景
経営管理クラウドサービスにおけるレポートのビジュアル表現に課題
ポータルサイトの運営やインターネット接続プロバイダーなどで広く知られるエキサイトは、法人向けサービスも提供しています。その代表が管理会計のデータを一元管理する経営管理クラウドサービス「KUROTEN」(クロテン)です。エキサイト社内のニーズや、蓄積したノウハウを基に開発しました。
エキサイト SaaS・DX事業部 コーポレートDX部 部長の木下秀爾氏は「管理会計をクラウドでDXするサービスです。管理会計では、データの集計や共有に手間がかかりますし、経営陣などに提出するレポートの作成にも工数が必要です。これらの工数を削減して効率よく管理会計を実現できるのがKUROTENです」と説明します。
2021年6月に提供を開始したKUROTENは、 予算や実績などの管理会計のデータを一元管理して、業務の効率化を支援します。ところが、「サービス提供から半年ほど経つと、カスタムレポートのニーズをいただくようになりました」(木下氏)。表形式で数値を表示するKUROTENのユーザーインターフェースは管理会計の関係者にとっては見やすいものの、それ以外に経営陣や事業責任者などがひと目でわかるレポートを作成したいという声が出てきたのです。
カスタムレポートを作りたいという要望に対して、KUROTENではこれまでもBIツールを活用して対応していました。しかし、「既存ツールには使い勝手のいい部分もあったものの、ビジュアルの表現力に乏しいためにかゆいところに手が届かないことが多く、他のソリューションの導入を検討しました」(木下氏)。そこで利用することになったのがTableauでした。
Tableau の導入・運用について
顧客のPLデータのビジュアル化に活用
KUROTENではTableauの埋め込み分析機能を活用して、サービス上のメニューからTableauを呼び出して利用できるようにしました。KUROTENの管理会計データを元に、Tableauのビジュアルの表現力を使いわかりやすくカスタムレポートとして提供する仕組みです。
レポートの作成そのものは、顧客の要望に応じてエキサイトが作成するケースが多いのですが、スキルが高い顧客の中にはTableauの機能を活用して顧客が自らレポート作成をするケースもあります。
Tableauを利用して、カスタムレポートによる可視化を実現しているのは、KUROTENに格納している管理会計(PL)のデータです。より詳細が必要な場合は、実績、見通し、予算計画のデータをベースとして、売り上げに紐づくKPIのデータや人件費に関連する人員数のデータ、その他顧客が独自に有する非財務データ(例えば店舗の坪数、労働時間など)を掛け合わせてレポートを作成します。顧客の要望にフィットした分析レポートを提供することで、顧客は事業モデルに適したレポートや、経営陣の重視する数字が表現されたレポートをいつでも確認することができます。
裏側の仕組みとしては、まずAWSにあるKUROTENのデータベースからDWHであるSnowflakeへ定期的にデータを出力します。このSnowflakeのデータにTableauから接続してデータを取得、ビジュアル化を行います。非財務データなどKUROTEN以外のデータについては、必要に応じてCSV形式でアップロードして組み合わせることなどもできます
木下氏は「KUROTENのデータをSnowflakeに出力し、Tableauでビジュアル化するまで1~2カ月程度でできました」と語ります。そうしてプロジェクトの開始から半年ほど経った2022年8月に、KUROTENの機能の一部としてTableauが稼働したのです。
Tableau 選定の理由について
世の中で一番使われているBIツールとしての価値
Tableauを選定した理由について、木下氏はこう語ります。「要件の1つは、KUROTENのサービスに埋め込めることです。さらに、データの接続先としてSnowflakeのほか、GoogleのBigQueryやSpreadsheet、AWS Athenaなどバリエーションが豊富で柔軟性があることも考慮し、Tableauが選択肢として残りました。」
その上で、Tableauを利用することになった最大の理由は「世の中で一番使われていること」だと木下氏は強調します。
Tableauを選択したことで、サービスの幅も広がりました。「KUROTENのPLデータに加えて、TableauがBigQueryやSpreadsheetのデータを参照できるため、従来は難しかったPL以外のデータを連携した分析やビジュアル化なども実現できました。」(木下氏)
部門や店舗が100や200とある顧客の場合、レポートの作成工数がかかりますが、KUROTENのTableauレポートはこれを自動化することができます。また、経営会議の際にKUROTENのTableauレポートへアクセスし、様々な分析や議論をその場で行うことも可能です。
Tableau の導入効果について
表現力の高さとネームバリューでビジネス拡大
エキサイトでは、KUROTENのサービスの一部としてTableauの機能を活用する形態を採っています。そのため、一般的な自社利用のような、Tableauの直接的な導入効果を測ることは難しいところです。
そうした中でサービス提供者側として木下氏は、「ビジュアライズの機能が充実していることは評価しています。何よりも、出来上がるビジュアルの見た目の良さや表現力の豊富さは素晴らしいと感じています。さらに、堅牢なデータ管理の機能や、参考にできる文献が多くある点も評価しています」と説明します。
カスタムレポートのサービスを提供する顧客にとって、「Excelで頑張ればビジュアル化はできます。しかし100部門あったら誰かが100部門分のデータを処理する作業をしなければなりません。KUROTENでBIレポートの機能を使えば、最新のデータで工数をかけずにビジュアル化が可能です。顧客における工数削減効果は非常に大きいと考えています。」(木下氏)
さらに、木下氏は、「KUROTENの営業時に、Tableauを使ってカスタムレポートを作成できることを説明します。一番使われているBIツールで経営数値を可視化できるという点が、顧客への訴求ポイントになっています」と、純粋な機能面にとどまらず、Tableauのブランド力がビジネス面での効果を生んでいると言います。
今後の展開について
経営の意思決定に必要なデータを可視化
エキサイトでは、TableauをBIツールとして自社サービスに埋め込み、ビジュアルでわかりやすいカスタムレポートを作成できるという新しい価値を顧客に提供してきました。今後の展開として、KUROTENでの活用の側面では、「PLや非財務データなど各種経営データを一元管理するDWH機能の継続的な開発と、経営判断に資するレポートテンプレートの拡充を進めていきます。もちろん、生成系AIによる分析の自動化や示唆の取得なども随時検討しており、SalesforceのAIである Einstein GPTには期待しています。」(木下氏)
また、木下氏が事業部長を兼務するBB.excite事業部では、顧客管理にSalesforceのService Cloudを利用しています。SaaS・DX事業部のKUROTENでのTableau活用の成果を見ながら、BB.excite事業部のTableau導入も視野に入れています。顧客への高度なサービス提供に加えて、自社でのTableauおよびSalesforceのサービスの活用もさらに幅広く検討しています。
※ 本事例は 2023 年 7 月時点の情報です